「またかっ!」
数年前国会にて、同じくALS患者の岡部さんの答弁に対して「時間がかかる」という声があり、物議を醸しましたが、今回のニュースで障害者を見る目は全く変わってないことか判明しました。
同じALS患者として、全国の皆様に伝えたいことがあります。
まず、ALS患者がコミュニケーションに時間がかかるのは事実です。そして、相手の貴重な時間を長時間頂くことにも大変心苦しく思っています。しかし、ALSは思考には悪影響のない病気です。自分で考えられる以上、自分の言葉で伝えたいのが人の性ではないでしょうか。
また我々は、コミュニケーションスピードを上げるために、日々思考錯誤を重ねています。岡部さんの口文字のスピードは、パソコンの素人のタイプスピードより圧倒的に速いです。こうした患者の努力と工夫も、汲んで頂けたら幸いです。
次はALS患者にとっての見守りの重要性についてです。
我々患者は、不意に痰が上がってきて気道を塞げば、痰を吸引してもらわない限り、呼吸困難で5分で死にます。役所の人は「家族で見れるでしょ」といとも簡単に仰います。
だけど想像してみてください。
5分放置したら死んでいるかもしれない人を見守りながら、家事や育児が出来ますか?夜は落ち着いて寝られると思いますか?
私もニュースの方と同じ訪問調査を受けたことがありますが、もしあの時調査員が同じセリフを吐いたとしたら、私の妻は半狂乱になり殺す勢いで調査員に飛び掛かったかもしれません。
患者の家族は、肉体的にも精神的にも極限まで追い詰められています。だからこそ役所に救いを求めているのです。どうかそんな状況を把握する努力をお願い致します。
最後に、私は酒もタバコもやらないし、健康診断は常にA判定でした。そんな私がある日突然ALSになり、医師からは「あなたは何も悪くない。ただ運が悪かっただけです」と言われました。
『運が悪いから死ぬしかない人』と『運が悪くても生きられる人』の境目は、役所の判断が握っていると言っても過言ではありません。
現在、ALS患者の8割が人工呼吸器をつけず死ぬことを選んでいます。役所が適正な判断を下し、『運が悪くても生きられる人』が1人でも増えることを切に願います。
ちなみに、このブログを書くのに5時間かかりました。ALS患者は、いつだってコミュニケーションに必死です!
恩田 聖敬
この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ前社長)のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2019年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。