東京のことを想う つづき。
なにしろ、海がある。
海を持つ首都だ。
ワシントン、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、オタワ。
他のG7は首都に海はない。
防衛上、当然であろう。
北京にもモスクワにもない。
常任理事国の常識であろう。
(ポリニャーノ・ア・マーレ)
ニューデリー、マドリード、ブラジリアにもない。
大国はみなそうだ。
なのに東京は海を持つ。
海を持って輝く首都はシンガポールと北欧などわずかだ。
(オストゥーニ)
日本は海洋国家だった。
陸路より海路を活かすため、江戸を首都にした。
水に集い、水が中心だった。
物流や漁業の仕事の拠点だった。
そこに商売があり、賑わいがあり、文化があり、生活がある都市だった。
(レッチェ劇場)今、東京は海を活かしていない。
埋め立てて埋め立てて、亡き者にしてきた。
川もそうだ。
蓋をして、首都高を通して、亡き者にしてきた。
江戸の水運インフラ日本橋川の上に、昭和の陸路インフラ首都高をかけた。
平成が済んで次の五輪を経て、首都高を埋めてまた川を開けようという議論となっている。
東京湾の、埠頭がある竹芝はどうする。
東京の陸から見れば、西から東に行き着いた端っこだが、海から見れば入口。
外への玄関だ。
羽田から品川を通り、竹芝から湾をまたいで晴海、豊洲、台場という輪をなす。
このあたり、オリパラで賑わうが、その後に何をどう残す。
海ならではの賑わいがあろう。
湾の上をドローンもエアカーも飛び交おう。
いまは倉庫ばかりが目立つホワイトスペース。
だからこそ絵が描けるはずだ。
(バーリの元祖サンタの聖ニコラの墓があるところ)
世界には、海の都市がある。
これまであちこち巡った。
首都なら北欧、コペンハーゲン、ストックホルム、オスロ、ヘルシンキ、タリン。
いずれも海。
でも寒すぎる。
ギリシャ・アテネ、スリランカ・コロンボ。いい。
でも暑すぎる。
(チョキしてソフトクリームみたいなものもってる元祖サンタ)
アイルランド・ダブリン、マルタ・ヴァレッタ、アルゼンチン・ブエノスアイレスの海辺が印象深い。
重要なモデルはシンガポール。
海を活かし、賑わいを作る。
(未納税者を縛っていた棒のヨコにドラえもんが寝ている)
フランス地中海、マルセイユ、ニース、モナコ。
物流、漁業、観光が海を頼る。
フランス北部はノルマンディのオンフルール、ル・アーブル、ドーヴィルの港がいい。
イギリスはリバプール。
海沿いの再開発に目を見張る。
スペインは地中海バルセロナと北部バスクのビルバオが海のコンパクトシティ。
イタリアはジェノバもナポリも港町だが海辺に集うイメージは薄い。
むしろアマルフィやポジターノ、あるいはカプリ島の海を資源とした観光スポットが参考に
なる。
(つづく)
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年5月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。