アゴラに掲載されている論稿は、皆、それぞれに面白い。
私たちが、それぞれに頭の体操を始めるための切っ掛けとなるようないい材料をタップリ提供してくれる。
しかし、中には、これはちょっとどうかなあ、と思うような論稿もある。
まあ、読んでいる人に多少の違和感を与えるくらいでいいのだろうが、アゴラに掲載されるとそれだけでその議論に市民権が与えられ、人口に膾炙することにもなりかねないから、やはりどこか変だよ、というくらいのことは指摘しておいた方がよさそうだ。
立憲主義がどういうものであるか、ということについては、ウィキペディアの記述が参考になる。
アゴラに掲載されている高山貴男さんの「「立憲主義を守る」とどんな社会になるのか?」という論稿は、立憲民主党の枝野氏外の「立憲主義を守れ!」という政治的主張に引き摺られた政治的な主張でしかなく、講学上の立憲主義とはどうも関係がないようである。
高山さんは、次のように書いている。
立憲民主党が目指す『立憲主義が守られた社会』とは言論も限られた範囲内でしか行われず、政治家も常に『立憲主義違反』を意識して活動しなくてはならないし国政選挙があるときは候補者同士が『あの候補者の主張は立憲主義に反している』と罵り合う光景が普通になる社会である。
とても健全な社会とは言えない。
立憲民主党が唱える『立憲主義』はもはや大日本帝国の『国体』と同次元になっており、同党が政権与党になった場合、そこに自由などない。『立憲主義を守る』ことで息苦しく殺伐とした社会が成立するならば立憲主義など守らなくて良い。
へー、立憲主義を戦前の「国体」と同格に位置付けられるの?
さらに、高山さんは、次のようにも書いている。
立憲主義を破壊したのは誰か
立憲民主党に期待されていることは「日本の立憲民主主義は大変な危機にある」(産経新聞)と煽ることではなく「立憲主義のインフレ」を鎮静化することである。現在の「立憲主義」は本来の意味と価値を失い「国体」化していると言わざるを得ず、日本の平和と自由をあらぬ方向に導きかねない。
こう考えると安保法制可決以降幅を効かしている『立憲主義は破壊された』という表現は誤りではない。ただ破壊したのは安倍政権ではない。立憲主義を破壊したのは護憲派であり、そして何よりも法律家共同体の長たる憲法学者である。
え、憲法学者が立憲主義を破壊した?
高山さんの指摘は独特で、それなりに興味を引くが、立憲民主党の政治的主張に引き摺られて講学上の立憲主義を徒に貶めてしまっているように思われてならない。
なんか変だなあ、くらいのことは言っておいた方がいいだろう。
ちなみに、私は、立憲主義を、憲法の最高法規範性を認め、国のあらゆる機関は憲法の定める法規範に服さなければならないものとし、かつ、憲法の定める具体的条項が憲法の最高法規範性に抵触すると認められる時は、憲法に定める手続きに基づいて、適時適切に修正されるべきとする主義、と自分なりに解釈しているところだ。
ご参考までに。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。