着々と準備は進んでいます。準備期間は約1か月、相手はU2。僕らは音楽関係者ではないので、U2のコンサートを聴きに行く事はあっても、世界最高のロックバンドを現場でサポートする事になるとは想像もつかなかったことです。閃きのように「次はU2だ」と呪文のように唱えていた事が、今、目の前にあります。社会が大きく変わっていく何かが、始まっているような…。
復興の象徴でもある福島県産の再エネ水素でフル充填されたFCVが1台、さいたまスーパーアリーナに来ることになりました。田中和徳復興大臣のお陰です。東日本大震災では世界各国、そして世界中の人々が支援をしてくれました。その思いを復興と言う形で見せていくことが日本の役割でもあります。
東北地方の中でも、原発事故が起きた福島県は世界が注目していて、「福島新エネ社会構想」の下、世界最大のCO2フリー水素の製造が浪江町を中心に行われる予定です。東京オリンピックでは、この水素が使われます。福島の来るべき将来への一歩をU2のコンサートで示すことが出来れば、正に大きな一歩になるのです。
福島ハイドロサプライから1台のFCVがさいたまスーパーアリーナに届くというのは、単なる1台ではないのです。しかし残念ながら、今回はあくまで1台分なので、これだけではコンサートを乗り切ることは出来ません。
ということで、長野県産水素が入っているFCVと福島県産水素が入っているFCVとのコラボということになりました。長野県から運ばれるFCVはトヨタが用意した2台、僕のダークブルーMIRAI、そしてなんとLUNASEA SUGIZOのブラックSUGIZOモデルMIRAIの4台です。さらにSUGIZOは自身が所有する可搬型外部給電器も持ち込むことになったのです。
そうなると福島からの1台を含めて全部で5台、コンサートでは3台を使用し、2台は予備車となります。FCVつまり、動く発電機は、これで段取りが全て整えられたのです。
可搬型外部給電器はHONDAが用意することになっていますが、以前から水素エネルギー社会の推進に興味を持ち、再エネ電力小売事業者に管理システムを提供しているユニファイドサービスから可搬型外部給電器(HONDA製 Power Exporter 9000)を提供したいと申し入れがありました。
これは大変にありがたい申し入れで、U2コンサートはHONDAとユニファイドサービスで可搬型外部給電器を準備することになったのです。LUNASEAのコンサートはトヨタ、HONDAの協力で行われましたが、燃料電池コンサートをサポートしてくれる人が増えていかないことには、今後の広がりも、発展もありません。
その意味でも今回は、多摩大学ルール形成戦略研究所、EYジャパン、トヨタ、HONDA、ユニファイド・サービス、長州産業、長野県、福島ハイドロサプライとサポーターの数と幅が広がったことは大きな意味があります。
それぞれが、自らの担当する分野の準備を進め、コンサート当日までのカウントダウンが進む中で、衝撃的なニュースが飛び込んできました。U2に並ぶ発信力を持つ英国ロックバンド「コールドプレイ」が、新アルバムでの世界ツアーを環境への配慮を考えて中止するというものです。570億円ともいわれる収入を捨てるということでもあります。思いと行動を一致させ、今後のロックバンドとしての在り方を考えるきっかけをつくったのです。
時代が動いている。U2のコンサートもコールドプレイの影響を必ず受けると…。
あっという間の1か月、気が付くと12月3日、つまりコンサート前日になっていました。さいたまスーパーアリーナに器材の持ち込みと準備が進む中で、たった1つの、そして最大の課題だけが残りました。それはU2自身、ボノ自身、LUNA SEAのSUGIZOから話は聞いているとは言え、水素燃料電池で生み出された電気を使って演奏したことが無いので、実際リハーサルで演奏してみて、使うかどうかを決めるというものです。
つまり、音色が気に入らなければ、使わないことがあり得る、ということです。これまでの準備も何もかもが、全て無くなるリスクがあるということです。考えてみれば、それは当然のこととも言えます。SUGIZOも先ずスタジオで、トヨタMIRAI、HONDAクラリティ、東芝H2ONE、東電の電気、それぞれ演奏して、比較して、使う事を決めたのです。いかに環境に良いとは言え、ミュージシャンとしてクオリティを下げるわけにはいかないからです。
コンサート自体も1回目は、LUNA SEA全体ではなく、まず武道館でSUGIZOのギターだけに使い、そしてさいたまスーパーアリーナでLUNA SEA全体で使うというプロセスを経ているのです。僕らはLUNASEA全員で使って、クオリティの高い音楽を提供していることを知っているので、間違いないと思うけれど、U2にとっては初めてなのです。慎重になるのは、分かるのですが…、これで使わないということになると・・・、大丈夫とは思うけれど、一抹の不安があるのは事実です。
12月4日コンサート初日の最終リハーサル終了後、使うかどうかを決めると言われているのです。U2の耳にはどう聴こえるのだろうか?どうなってしまうのだろうか…。
ダメ元で伝えてみるも『U2水素燃料電池コンサート』実現④に続く…。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年12月9日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。