ダメ元で伝えてみるも「US水素燃料電池コンサート」実現②

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U2にさいたまスーパーアリーナでのコンサートを水素燃料電池でやってみないか?ボノに伝えることが可能となった今、「Yes」が出た時に実現する為の準備を進める必要があります。全体の仕切りは多摩大学ルール形成戦略研究所(CRS)。僕が所属していて、近々、水素エネルギー利活用推進研究会(仮称)を立ち上げる準備をしています。

そして協力企業の取りまとめをEYジャパン。FCV、可搬型外部給電器の提供をLUNASEAコンサートと同様にトヨタ、HONDAに協力要請をしたのです。

待てど暮らせど、U2からの返事は来ません。1か月、2か月、3か月、いつまでたっても返事は来ません。ダメ元なので、ダメなら「ダメ」と返事が欲しいのです。SUGIZOにも「まだ返事こない?良くても、悪くても、早く返事が欲しい、とU2サイドに伝えて欲しい」と…。でも、まだ来ない。

半年がたち、流石に12月初旬のコンサートなので、もう無理だ、諦めよう。協力を要請した企業にいつまでも待たす訳にはいかないので「無理だ」と伝えよう、としていた矢先に「水素、やっても良い」と返事が。そそそ…そうなんだ。カレンダーを見ると11月に入っていた。あと1か月後…。

協力要請をしていた企業に「GO」を出し、具体的な準備入ることになったのです。あのU2の世界ツアー「U2 THE JOSHUA TREE TOUR 2019」、それも13年ぶりの来日公演。チケットはあっという間にSoldOut。FCVを電源にしたことによって、コンサートが成り立たなくなった、ということになれば、大騒ぎになってしまう。それもあと1か月の準備期間しかない。企業サイドも協力すると言ったは良いものの、こうなると…。と考えてしまうのが当たり前と思うのです。

それでも、チームは走ってくれたのです。FCVや可搬型外部給電器の手配、当日のスタッフの手配、水素の確保。水素燃料電池コンサートであること、あったことを社会に伝える宣伝。権利関係が複雑に絡む業界故に線引きを明確にする必要があるのです。

LUNASEAの時にはFCVをトヨタ、HONDAが、可搬型外部給電器をHONDAが提供していました。今回は役割を分けて、FCV(MIRAI)をトヨタが、可搬型外部給電器(Power Exporter9000)をHONDAが提供することになりました。宣伝に関する権利関係、コンサートに関しての要望事項等を詰めるためにU2がコンサートをしているオーストラリアに、急遽トヨタのFさんが飛び立ったのです。トヨタも本気、そしてFCV(MIRAI)が新たな価値で地球環境に貢献できると。

FCVに水素を充填しないことには電気をつくることが出来ません。日本国内には、約160か所の水素ステーションがありますが、それらは化石燃料由来の水素なのです。水素社会実現のロードマップは、ファーストステージ、セカンドステージ、サードステージがあります。今は、正にファーストステージであり、化石燃料由来水素のステージなのです。

もちろん、化石燃料を直接燃焼するよりも水素に変えて使用する方が二酸化炭素の排出量は下がります。今回は地球環境を考えるきっかけをU2のコンサートと言う形で世界に伝える事が目的なので、CO2フリー水素でなくては、カッコがつきません。でも、再エネ由来の水素は…。福島復興の象徴でもある福島県産の水素を提供してもらうことが出来ないか、自民党水素社会推進議員連盟副会長でもある田中和徳復興大臣に相談しに行ったのです。水素社会推進議員連盟は、僕が衆議院議員時代につくり、事務局長を務めていた「FCVを中心とした水素社会を実現する研究会」の名称を変更した議員連盟です。

田中大臣「U2か、すごいロックバンドが良く理解してくれたな」
福田「僕も正直、ダメ元だったので驚いています。大きな一歩を踏み出すので福島県産の水素を提供してもらうことは出来ませんか?」
田中大臣「浪江の太陽光発電によるCO2フリー水素は来年にならないと出来ないしな…」
福田「どこかにないですかね?」
田中大臣「ちょっと時間をくれ、探してみるから」

福島県産のCO2フリー水素が手に入らないことも想定すると別の場所から…、何処かになかったか…、そうだ長野県庁に長州産業のSHiPSがある。長野県からCO2フリー水素をもってこれれば…。長野県企業局は水力発電でつくった電気で、水の電気分解を行い水素を製造しているのです。

その水素製造、供給装置が長州産業が製造している「SHiPS」と呼ばれているものです。長州産業のIさんに早速連絡し「長野からCO2フリー水素をさいたまスーパーアリーナに持ってきてもらう事が出来ないか?」

「U2…、それは面白いし、メッセージが強く伝わるはず。検討するので時間を欲しい」とIさん。翌日、Iさんから「協力できる。具体的に話をつめよう」と返事があったのです。

「長野県企業局が水素の持ち主なので県庁に一度、挨拶兼ねてお願いに行こう。長野県庁は協力する用意があると言っている」。僕は「来週の火曜日午前中なら行けるので、アポ取りお願いできないか?」と。限られた時間で、皆が動いているので、何でも直ぐに動くことが必需となっていたのです。

自宅を午前5時に出て、東京駅から新幹線、長野駅に着いたのは7時38分。8時からパンを食べながら、長州産業のIさんと最初で、最後のフェイス・ツー・フェイスでの打ち合わせ。そして9時に長野県庁へ。企業局の方々に協力依頼をすると「もちろん、協力します。長野県産の水素が世界のU2に使われ、地球環境問題を考えるきっかけになれば、長野県民も誇りに思えるはず」と、大変ありがたいメッセージを授かったのです。

水力発電所でつくられた電気でSHiPSが動き、水の電気分解で水素を製造し、ステーションとしてFCVに充填する。正に再エネ100%の水力発電由来水素が確保できたということです。これならU2も納得してもらえると…。

そして感謝の気持ちを伝え、県庁をあとにしたのです。新幹線で、長野駅から東京駅に。長野県の滞在時間は実に2時間30分。CO2フリー水素確保の目途が立ち、FCV自体に乗ってきたら、埼玉に来る頃には水素が無くなってしまうので、長州産業がキャリアカーでFCVを運んでくれることになったのです。帰りの新幹線の中では、高揚感とホッとした気持ち、そしてU2を聴きながらリラックスの1時間30分でした。

「Beautiful Day」、「One」最高の曲だと思う。

ダメ元で伝えてみるも『U2水素燃料電池コンサート』実現③に続く…。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年12月8日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。