コロナ禍のロイヤルホスト、生き残り策はあるのか?

関谷 信之

近隣のロイヤルホストを月1回程度利用しています。よく食べるのはパンケーキ。絶品です。生クリームたっぷりの豪華なものではなく、パンケーキ生地で勝負するシンプルなもの。付いてくるのはメープルシロップとバターだけ。こういったパンケーキを食べさせてくれるお店はあまりありません。しかも安価です。

Wikipedia

そんなロイヤルホストが、 下記記事によると危機に陥っているようです。

「優等生のロイヤルホストを大量閉店に追い込んだコロナリスクの厄介さ」(プレジデントオンライン)

記事を簡単にまとめると

  • ロイヤルホールディングスは4つの事業を持っていた
  • したがって、リスクは分散されていた
  • コロナはリスク分散という「盾」をたやすく破壊してしまった

といった内容です。

この「リスク分散」について考察してみたいと思います。本当にリスク分散できていたのでしょうか?

事業内容

上記記事によるとロイヤルホールディングスは4つの事業を展開していました。

  1. ロイヤルホストや、てんやなど外食事業
  2. 空港などのレストラン受託事業
  3. 機内食事業
  4. ホテル事業

です。

これを、少し大雑把に区分し、ロイヤルホスト・てんや・レストラン受託・機内食を「外食事業」とすると、「外食事業」と「ホテル事業」の2つになります。

どちらの事業も「外へ出る人」向けの事業と言えます。対して「家にいる人」向けの事業はどうだったのか、つまり、一歩引いた「外」と「内」という視点で見てみると、お持ち帰りなど「内」向けの事業が弱かったのではないか、と想像できます。

今回のコロナ禍がもたらしたのは「外出」の極端な減少です。「外」向けの事業に注力しているロイヤルホールディングスにとってコロナは天敵のような災害でした。

投資をされる方ならご存じかと思いますが、複数の株式を買うとき「相関性」という指標を用いてリスク分散することがあります。
「好景気時に収益向上する企業の株式」と
「不景気時に収益向上する企業の株式」
など、正反対の動きをする(相関性の低い)株を所有して、どっちに転んでも資産価値が下がらないようにする(リスクを分散する)手法です。

ロイヤルホールディングスは、「外出が減ると収益が減る」という同じ動きをする(相関性の高い)事業群で構成されていたため、リスクが分散されなかった、と言えます。

とはいえ、これほどの外出減を誰が想定できたでしょうか? これはリスクを超えたパラダイムシフトです。対策できていた企業は少ないでしょう。

今後の飲食業

では今後、ロイヤルホストなど飲食業はどうあるべきなのでしょうか。

あたりまえの結論ではありますが、事業として「外」と「内」両方持つ、ということです。具体的には、お持ち帰り(テイクアウト)商品の充実です。

ロイヤルホストにも、従来より「お持ち帰りメニュー」が存在していました。ですが、テーブル上に小さなチラシを置く程度の告知で、弱いものでした。知っている人は少なかったのではないでしょうか。

味の面でも課題があるように見受けました。ロイヤルホストが店内の食事を自粛しはじめた頃、私はこの「お持ち帰りメニュー」のひとつ「アンガスサーロインステーキ重」を持ち帰りました。

お肉は美味しかったものの、率直に申し上げて、タレがご飯にしみこんでしまうとか、ご飯が柔らかすぎるなど、満足できるものではありませんでした。

これはあくまでも客としての私の味覚の話ではありますが、ビジネスの観点でみると、お弁当にはお弁当のノウハウがあるのです。翌日食べたオリジン弁当の方が、完成度が高く美味しく感じました。

つまり、ロイヤルホストのお持ち帰りメニューは、告知と品質、両面に問題があったわけです。ここを「本気」で対策する必要があります。

施策として

  • 告知面では、レジ横のレトルト商品・おもちゃを縮小し、お持ち帰りの見本を陳列することや、試食品を配布すること
  • 品質面では、「てんや」のノウハウを活用・共有してお弁当の品質を高めることや、お持ち帰り専用メニューを作り店内と差別化すること

などが考えられます。

4月下旬、近所で「インド定食 ターリー屋」がオープンしました。このコロナ禍での開店はさぞ大変だろう、と思っていたのですが、連日昼前には行列ができています。 今のところ大半が持ち帰り客のようです。

看板も、店内メニューより持ち帰りメニューの方が目立ち、全く「脇役」感がありません。今後の飲食店はこういった形がスタンダードになるのではないでしょうか。