声が大きい者による日本支配
新型コロナ第三波が襲う中、マスメディア・野党・尾張守で構成されるモンスタークレーマーが【集団ヒステリー mass hysteria】を起こして浮足立った日本社会の意思決定を支配しています。まさに原発事案や豊洲市場事案のケースのように、ヒステリックな【ゼロリスク zero-risk】信奉者が、合理的なリスク管理に基づく社会の意思決定を妨害し、非科学的な感情が科学的な論理を駆逐する問答無用の【全体主義 totalitarianism】社会が日本に再び形成されたと言えます。なお、このようなヒステリックなゼロリスク信奉者が発生する背景につきましては[前回記事]で詳しく議論しています。
11月25日に開始されたいわゆる「勝負の三週間」においては、可視の新型コロナ感染者と不可視の経済困窮者の両者の命に寄り添うことで「経済を回しながらベストの感染対策を行う」という責任ある政府の方針が、可視の新型コロナ感染者の命だけを重視する「経済を止めてゼロリスクの感染対策を行う」というゼロリスク信奉者が叫ぶ無責任な要求に次々と屈していきました。
スケープゴート化されたGoToトラベル
ヒステリックなゼロリスク信奉者が主として攻撃のターゲットとしたのはGoToトラベルキャンペーンです。「人が移動したらウイルスも移動する」なるゼロリスクを求める言説を根拠にマスメディアは大反対キャンペーンを展開し、合理的な科学的根拠なしに徹底的にGoToトラベルを悪魔化しました。また、ゼロリスク信奉者は、一般国民を味方につけるため政権の悪魔化にも余念がありませんでした。国民から嫌われている二階幹事長をGoToトラベルに【転嫁 transfer】して悪者扱いし、首相の他愛もない「ガースーです」発言を徹底的に罵り、民間人に対する45分間の意見聴取を「多人数による高級ステーキ忘年会」として徹底的に問題視しました。これらは、いずれも国民のコロナ対策とは全く関係のない【人格攻撃 ad hominem】に過ぎません。多くの日本国民はモンスタークレーマーの強力な【同調圧力 peer pressure】による雰囲気に流され、政権支持率が急落しました。
支持率を落とした菅政権は、11/27に札幌市・大阪市のGoToトラベル一時停止と10都道府県でプレミアム付き食事券販売一時停止、12/3に東京都で高齢者などにGoToトラベル自粛要請、12/14に東京都・名古屋市のGoToトラベル停止、12/28-1/11における全国のGoToトラベル一斉停止するなど、科学的根拠に基づくことなく、科学的根拠のないヒステリックなゼロリスク信奉者に屈服したのです。
菅政権がGoToトラベル停止に踏み切ったのは、集団ヒステリーに感染した日本社会の暴走を止めるためと考えられます。この構図はコロナ第一波で安倍政権が緊急事態宣言を発令した時と全く同じです。当時はゼロリスク思考のワイドショーや出羽守に洗脳された尾張守が集団ヒステリーを起こし、「アベノマスク」と「うちで踊ろう」をネタに人格攻撃することで安倍政権の政権支持率を急落させました。政府は、実際には既に減少していた新規陽性者の推移を見守る時間を与えられずに、消極的だった緊急事態宣言を発令する意思決定を行うことになったのです。
国民的な集団ヒステリーの拡大を抑制する政府の意思決定は必ずしも間違っているとは言えませんが、これが常態化していることは大きな問題です。この状況は特定勢力のプロパガンダが国民を同調圧力によって支配するある意味の全体主義であり、民主主義の危機に他なりません。また、モリカケもそうですが、モンスタークレーマーは、政府が屈する姿勢に味を占めて、今後も際限なく集団ヒステリーを起こし続けるものと考えられます。この状況は、弱腰の日本政府に対して韓国が長期間にわたり理不尽な要求を続けてきたことと同様の【オペラント条件付け operant conditioning】を行っているに他なりません。
大都市と地方の感染状況
ここで、実際の第三波の感染状況について、都市と地方という観点で分析してみたいと思います。図-1は、直近の新規陽性者数の推移(中央7日移動平均:前後3日の値を含めた7日の平均)、図-2は新規陽性者数(中央7日移動平均)を人口で割った1日当たりの陽性率の推移です。
これらの図では、全国の感染者数を首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)、中京圏(愛知県・岐阜県)、近畿圏(大阪府・兵庫県・京都府)、西日本圏(広島県・福岡県)、それ以外の地方に分けて示しています。全国は白、地方は緑、それ以外についてはわかりやすいように各地の代表的プロ野球チームのチームカラーで示しています。
また、図-2には10月16日~11月17日におけるGoToトラベル参加者と全国における平均感染率(人/日)を示しています。政府によれば、GoToトラベル開始の10月16日から11月15日までの31日間においてGoToトラベル参加者の感染者数は2482万人・泊で71人、日本国民全体の感染者数は1億2500万人×86泊で27139人です。これより1泊当たり(つまり1日当たり)の感染率を求めると次のようになります。
GoTo参加者の感染率:71人/2482万人泊=0.00029%/泊
国民全体の感染率:27139人/(1億2500万人×31泊)=0.00070%/泊
GoTo参加者の感染率は一般国民の感染率の約0.4倍です。宿泊中に公共スペースでのマスク着用と手洗い・手指消毒が求められるGoTo参加者は、基本的に健常者であり、発熱がないことが宿泊条件になっているため、一般国民よりも感染率が低くなるのは自明と言えます。
図からわかることは次の通りです。
(1) 都市部・地方部に関係なく、カーヴの明瞭な変曲点が11月20日に認められ、感染が鈍化している。
(2) 感染鈍化後に顕著な増加が認められるのは、東京圏、および流行が後れて発生した西日本圏のみである。中京圏は微増している。
(3) 地方も近畿圏も11月20日以降は増加が概ね止まっている。
(4) 地方の感染率は都市部に比べて低いが、それよりもGoTo参加者の感染率の方が低い。
11月20日に一斉に感染鈍化したのは、ウイルスの内発的な要因か、日本全体に影響を与えた外発的な要因が考えられます。前者については、現在のところ不明ですが、後者については11月9日に行われたコロナ分科会の緊急提言による注意喚起の影響が考えられます。
また、現在のところ感染拡大が危惧されるのは、東京圏と西日本圏の大都市です。大事なことは、医療崩壊が発生しないレベルまで国民が感染をコントロールできるかです。GDPに占める国家予算の大きさを考えれば、経済活動に対する給付金の支出には自ずと限界があります。政府は、国民に行動変容を助言することで感染を軽減することはできますが、ワクチン以外の方法で感染を抑止することはできないのです。政府の経済支援に対する過剰な幻想は問題解決にとってはむしろ有害です。結局、感染を主体的に止めることができるのは私達国民だけなのです。
図-3は、各都道府県の人口密度と感染率の関係です。
札幌市という大都会に感染が一極集中している北海道、そして沖縄県を除けば、基本的に人口密度が高いほど感染率が高いといえます。つまり、もしも人間の移動が高感染率地域の感染増加に寄与しているのであれば、それは国民の移動の約2%に過ぎない観光関連の移動(GoToトラベル)ではなく、国民の移動の約98%を占める観光以外の移動、特に域内の移動が主要因であると考えられます。また、GoToトラベルが地方における感染を拡大している可能性も低いと考えられます。GoToトラベル参加者の感染率は地方の平均感染率よりも低いからです。
以上のことから、まるでGoToトラベルがすべての悪であるかのように悪魔化し、GoToトラベルを停止すれば感染を抑制できるかのような言説は不合理な幻想であることがわかります。むしろ、GoToトラベルは、国民から消費を引き出して地方経済と自粛に苦しめられた産業を低リスクで即効的に救う合理的な緊急対策なのです。
問答無用のトリアージ
ゼロリスク信奉者は、これまでGoToトラベルだけを悪者にして、本質的な感染予防対策の議論や、医療崩壊を止めるための医療システムの柔軟化についての議論から社会の関心をそらしてきました。そしてその間にも、失業者と自殺者は顕著な増加傾向にあります。
図-4は日本の失業者数の推移、図-5は日本の自殺者の推移を示したものです。
現役世代の失業者と自殺者が顕著に増えている日本において、モンスタークレーマーと化したゼロリスク信奉者は、目に見える新型コロナ感染者の命だけを重視して、経済による生活困窮者の命を無視する世論を形成しています。さらに、ワイドショーや立憲民主党をはじめとする多くの尾張守は、全体主義的に国民の経済活動を停止する緊急事態宣言の再発動を科学的根拠もなく問答無用に求めています。この一連の行動は、国民の命をトリアージする行為に他なりません。最も危険なシナリオは、国民が思考停止のままに彼らのプロパガンダに安易に同調して、この無謀なトリアージを実行させてしまうことです。
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