日本経済新聞によると、総務省が発表した2020年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京からの転出者数は年間で40万1805人となり、2019年より4.7%増えました。年後半からは転入よりも転出が多くなり、年間の転入超過数は82,982人から31,125人と半分以下に急減しています。
2021年もこの人口動態の変化は続くのでしょうか?
これには新型ウイルス感染拡大が今後どのようになっていくかが大きく関係するので、予想をするのは簡単ではありません。私なりに、3つのシナリオを考えてみました。
シナリオ1. 在宅ワークが本格化して、オフィス需要が全体的に減少する
シナリオ2. 本社機能を東京から地方に移すような企業の脱東京の動きが加速する
シナリオ3. オフィス分散化、リモートワークはある程度は進むが、根本的な変化にはつながらない
まず、最初のシナリオであるオフィス自体が全国で縮小して、在宅勤務が当たり前になるという可能性は、少なくとも短期的には低いと思います。
家族がいる人にとっては、在宅ワークの恒常化はライフスタイルの大転換になります。居住空間が変わらないままで、自宅で仕事をするのは、日中の生活には大きなストレスです。
また、企業もパソコンの支給やセキュリティ管理、人事管理制度の修正など、在宅ワークのインフラ整備や手当の支給などのコストアップ要因が出てきます。
2つ目のシナリオの、オフィスが東京から離れていくという展開も、限定的だと思っています。パソナグループが淡路島に本社を移転することが話題になりましたが、問題は従業員がそのような地方転居を受け入れるかです。
確かに生活費が安く、環境も良く、東京よりのんびりとしたライフスタイルが実現するでしょうが、都会から地方に変わることへの不満は、特に単身者の若手に強くあるのではないでしょうか。
地方企業が東京にある本社機能を地元に戻すといった動きはあるかもしれません。しかし、優秀な人材はやはり東京に集まっており、人材確保の観点から地方へのシフトにも限界があると思います。
となると、シナリオ3の可能性が最終的には一番高いと思います。特に日本の労働形態は、仕事の範囲が曖昧で、細かく調整をしながら暗黙の「貸し借り」をして進めることが多くなります。また、いわゆる上司の顔色を伺いながら仕事を進めることも珍しくありません。管理する側も、リモートよりも今までの近くに集まって仕事をする方法を好む傾向があります。
いずれリモートワークの弊害が指摘されるようになり、脱東京の巻き戻しが起こるのではないかと思っています。
とは言え、今までとはビジネス慣習も少しずつ変わり、世の中の価値観も変化します。東京の人口流出が今後どのようになっていくかは、重要なテーマとしてフォローしていくつもりです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。