半年程前、『テンミニッツTV』というメディアに『仕事で「この人は伸びる」と思われる人の特徴は?』と題された記事がありました。その特徴10点とは、①素直な心を態度で示せる人、②ポジティブ感情を生かしている人、③感謝の心を言動で表せている人、④目的に見合った情熱を持ち続けている人、⑤好奇心と向学心がある人、⑥数字に敏感で数学的思考ができる人、⑦「やると良いこと」の習慣化ができている人、⑧待機できる人、⑨仕事に関わる人と好情をはぐくめる人、⑩健康管理とメンタルヘルスケアができている人、とのことです。
私が仕事で「この人は伸びる」と思えるか否かは、パンツのゴム紐と一緒で伸びたり縮んだりする弾力性を有しているか否か、だと考えています。因みに国語辞書を見ますと、弾力性とは「思考や行動などの状況に応じて変化できる性質。柔軟性や融通性」と書かれています。
伸びる人は、余裕があります。例えば、ある大学の入試に同能力の2人が臨む時、一生懸命努力に努力を重ねてやっとの思いできた人と大して努力している様子もなく余裕綽々できた人がいたとします。結果として共に入学できたとしても、合格擦れ擦れで何とか選ばれた前者は、将来的に余り伸びないかもしれません。それは受験勉強の成功だけである種の達成感を得て、大学での勉強に対する意欲も無く、サークル活動やアルバイトに明け暮れてしまいがちなのではないでしょうか。
言うまでもなく仕事で伸びる人と思えるかどうかは、その人をどこまで長い目で見るかに拠るものです。初めの2、3年位で見れば余裕綽々できている方が早く伸びますが、之を10年のスパンで見ると分からない部分が出てきます。ずっと余裕綽々でくる人は要領が良いだけで本当の意味での努力をしませんから、結局次なる境地へ到達できないことがあるのもまた事実でしょう。
昨年7月、『一に人物、二に能力』と題したブログで私は次のように述べておきました――世の中には、全く勉強しなくてもIQがとても高く、大変な潜在力を持つ人がいます。彼等彼女等に様々な動機づけを行って、仕事に対する意欲を持たせると物凄く伸びるわけです。そういう意味で私は、此のポテンシャルが非常に大事だと思っています。更には、決まった仕事を熟(こな)すことに秀ずる人がいる一方で、決まった所からどんどんはみ出て行くような世界の中で力を発揮できる人もいます。色々ありますが、之も言ってみればポテンシャルということでしょう。
人の上に立つに、その人がどれ程の伸び代を有しているかを見極めねばなりません。ポテンシャル無き人に次を期待するは、中々難しいことです。之は、ある意味人の指導者になって行く役員にも当て嵌まりましょう。彼等彼女等が部下の時、出来が大変良かったかと言うと、必ずしもそうでもありません。例えば我々の生きた時代を考えてみても、小学校の秀才が大学時代も秀才であったという例は少ないような気がします。之は実に小器夙成(しゅくせい)のケースです。
小学校時代に親に尻を叩かれ猛勉強し天童とまで言われていたような人は途中で力尽きてしまって、上に行くに従い大した人物にはならず蓋を開けてみれば何か小さくまとまってしまうといったケースが多々あるように思います。それは要するにパンツのゴム紐と一緒で伸び切ってしまったら役に立たないのです。終局、「この人どこまで伸びるや分からんなぁ」という弾力性を常に持っていることが非常に大事になるのです。大器晩成型の人は弾力性があり、此の伸び代が大きいのでしょう。
編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。