アメリカが日本への渡航警戒レベルを引き上げ、米国民に渡航中止を勧告した。アメリカの今回の決定を受けて、夏の東京五輪開催が可能なのかを疑問視する声が高まっている。しかし、そのようななかでも、五輪開催を主張する識者も多い。
開催を主張する理由の1つが、中止した場合、巨額の賠償金(最低1630億円)を支払わなければいけないこと。2つは経済的メリット(日本の医療・衛生器具が世界で売れる)があること。3つは、コロナに負けた日本というイメージを持たれること。4つは約2兆もの費用を使い準備してきたのにそれを台無しにして良いのかという主張である。
これらの理由のなかには「確かに」と思うものもあるが、それでもやはり私は五輪は中止すべきだと思う。五輪開催を主張する識者にほぼ共通しているのが、諸外国からの入国規制を強化せよとの見解だ。入国規制を強化せよと日本政府に強硬意見をぶつけているのに、なぜか、約7万人が来日するという五輪の話になると「開催すべし」と主張しているのだ。
五輪の時だけ、コロナが大人しく収まってくれるはずはない。入国規制を強化せよと主張している識者こそ、率先して、五輪中止を唱えるべきではないのか。
「コロナ感染が怖ければ黙って家で五輪のテレビ中継を見ていれば良い」との声もある。しかし、私は数万人が来日するということ自体が脅威だと思うのである。余り効かないと噂される中国製ワクチンを打って来る人もいるだろうし、そもそもワクチンを打たずに来る人もいるだろう。
文化・習慣が違う人々が一堂に会するのだ。「距離をとってください」と言っても聞かずに騒ぎまくる感染者もいるかもしれない。クラスターが発生する可能性もある。
何より怖いのは、五輪を開催したことにより、コロナ感染し、コロナを自国に持ち込み、そこで感染拡大し、死亡者が続出することである。日本では、コロナの死亡者数は欧米などと比べたら少ないが、世界中を見渡せばそうではない。
百歩譲って、まだ、日本政府の対応がしっかりしていたら安心なのだが、新型コロナウイルスの水際対策は五輪前から不十分である。入国者は14日間の自宅待機などが求められているが、待機中に連絡がとれない人が相次いでいるのだ。
こんなことで、数万人が来日する五輪を正常・安全に出来るのか。出来ないと考えるのが当然ではないか。最悪の場合、世界の国々に迷惑をかけることになるのだ。
以上のことを考えたら、世界平和と安全のために東京五輪は中止するべきというのが私の見解である。太平洋戦争開戦前、東條英機陸相(後に首相)は「戦争はやってみなければ勝利はどっちに転ぶかわからない」と言ったという。確かに五輪も「やってみなければ分からない」面もあるにせよ、危険な賭けであることは確かだろう。