経済学者の竹中平蔵氏(慶応大学名誉教授、パソナ会長)が読売テレビで放送された「そこまで言って委員会NP」に出演した(6月6日)。
同氏は、東京五輪・パラリンピックについて「なんでやるか、やらないか、あんな議論するか、私は分からない。だって、オリンピックってのは、世界のイベントなんですよ。世界のイベントをたまたま日本でやることになっているわけで、日本の国内事情で、世界にイベント(五輪)やめますというのは、あってはいけないと思いますよ。世界に対して、やると言った限りはやる責任があって」と、開催か中止かの議論事態がおかしいとの意見を述べた。
また、番組のなかでの「世論の6、7割が(五輪は)中止だって言ってる、世論が間違ってるってこと?」との質問に対しては「世論は間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違ってますから」と竹中氏は回答した。
これらの発言に私は異議を申したい。確かに平時ならば、勝手な国内都合で止めますというのは、おかしな話であろう。しかし、今は世界においてコロナが猛威を振るう有事ではないか。そうした時に「五輪を止める」という判断をすることはいけない事なのだろうか。
また、中止した方が良いとの見解は何も国内だけで見られるものではない。国外でも声はあがっているのだ。元来、新型コロナの問題は、日本の国内だけの問題ではない。世界を巻き込んだものである。そういう諸事情を考えて「止める」という決断をするのがそれ程、おかしなことなのだろうか。
「世論は間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違ってますから」と竹中氏は言うが、それは世界の世論も間違っているということだろうか?話は逸れるが、世論よりも近年は政治(家)が間違うことの方が多いと私は感じる。例えば、増税に次ぐ増税、これは間違いではないですか?不条理なコロナ対策、これも間違いではないですか?
さて、五輪開催派の人々は、国内のことだけを見て「開催すべし」と言いがちのように思う。しかし、五輪は数万人規模の人々が各国から日本に来て、そしてまた世界中に帰っていく。それは、私が何度も主張しているように、国内でコロナの感染拡大がある可能性だけではなく、世界にもコロナを広めてしまう契機になるのではないか。五輪開催したばかりに、例えば発展途上国にコロナを広げてしまい、多くの人が重症化したり、亡くなっていくことにもなりかねないのだ。
日本国内だけではなく、世界でも「中止したほうが良いのでは」との声が上がっているのに、それを無視した挙句、五輪を強行開催する。それは危険ではないかと思うのだ。強硬論を主張するばかりでなく、中止の決断をすることが、世界に対して貢献することもあるということは、せめて心の片隅にあっても良いだろう。
もちろん、感染拡大せずに、五輪は成功するかもしれないし、感染拡大して大変な事態に陥るかもしれない。 現時点では、どうなるかは誰も分からない。 しかし、優先して考えるべきなのは、開催責任云々ではなく、世界の人々の命を守ることではないか。そして、その責任を果たす最大限の方法が五輪中止ではなかろうか。