メキシコのモンテレイからヌエボ・ラレドへの国道で今年に入って行方不明者が既に73人となっている。
メキシコの大統領に2018年12月に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏(アムロ)の治政下で殺害された人の数は2019年が3万4682人、2020年は3万4554人となっている。メキシコ電子紙「シネムバルゴ」6月26日付で言及されている。
この殺害事件に関連して一つ注目を集める事件がある。メキシコ北部のヌエボ・レオン州の州都モンテレイからタマウリパス州の米国と国境を接する都市ヌエボ・ラレドとの220キロ間で、今年6月までに73人が行方不明になっているという事件である。
米国西部劇映画でラレードという都市名が出てそこを流れるリオ・ブラボという川の名前がよく出て来る。このヌエボ・ラレドという都市はその延長線でメキシコ側にできた新しい都市である。
例えば、ホセ・デ・ヘスス・ゴメスさん(45)の場合はヌエボ・ラレドのあるホテルから彼の母親と電話したのが1月3日のことだ。それを最後に彼が行方不明となっている。彼はITエンジニアでテキサスの都市アービングに在住していた。メキシコの郷里ハリスコ州の州都グアダラハラまで途中モンテレイを通過して行く予定だった。翌日の4日に家族の方から彼に電話を入れて残り到着までの距離を尋ねようとして電話を入れたが電話は切られていたそうだ。それ以後彼の消息は全く途絶えている。
フアン・ペレス・エルナンデスさん(66)は左官屋で16歳と29歳の甥っ子二人を同伴してモンテレイからヌエボ・ラレドに向かった5月24日以後全く消息を絶っている。彼の夫人アマリアさんは「私の娘がタマウリパスの警察に捜査願いを出した。神様を信頼している。神様に彼らを戻してくれるようにお願いしている」と取材に答えたそうだ。家には4人の息子と7人の孫が待っているという。
更にマリアさんは「我々は大統領に我々家族の苦しみを少しでもよいから感じてほしい。彼らは犯罪者ではない。働きに行ったのだ。彼らは家に戻るように探すのに手助けしてほしい。それを大統領にお願いするだけだ」と述べた。
グラディーズ・ペレス・サンチェスさんはテキサスのラレドに住んでいるが16歳の息子と9歳の娘を同伴してモンテレイに向かったが、6月13日以降消息を絶った。
トラックの運転手だった5人の子供の父親ハビエル・トト・ガガルさん(36)は3人の従業員を連れてヌエボ・ラレドに向かっていた。それが6月3日のことであった。彼が勤務していた会社側でも何も情報が掴めていないという。
(以上事例は「エル・パイス」、「フォーブス」、「シンエムバルゴ」「エル・フィナンシエロ」から引用)。
モンテレイとヌエボ・ラレドとの間の問題は特に後者の方で麻薬組織カルテル同士の熾烈な戦いが影響している。それにモンテレイから米国に向かおうとしている住民やあるいは逆に米国からヌエボ・ラレドを経由してモンテレイに向かおうとしている住民が巻き添えをくっているのだ。
もともと、ヌエボ・ラレドはタマウリパス州にあり同州に最も狂暴なカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンが進出して勢力拡大に動いていた。それを阻止しようとして、基盤をもっていたカルテル・デ・ノレステがベルトゥラン・レイバと手を結んでハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンに対抗しているのである。と同時にこの二つのカルテルにカルテル・デ・ゴルフォから別れたロス・メトロスが加わっている。一方のハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンは進出するにあたってカルテル・デ・ゴルフォと手を組んだのである。
消息を絶った人の家族がそれを警察に捜査願いを出しても管轄の州が違うと言って取り合ってくれない。モンテレイ出身の人が消息を絶って、家族が警察に伝えても、ヌエボ・ラレドは同じ州ではないといって捜査を拒否する場合が多々あるという。
逆に消息を絶っていた人が姿を現す場合もある。彼らの記憶で共通しているのは、武装した男たちによって車を止めらされて、下車後に強打を浴びせられ、車を持って行かれたということなのだ。
モンテレイが位置するヌエボ・レオン州のハイメ・ロドリゴ・カルデロン州知事は6月23日の記者会見の席で「ご存じのようにカルテル同士の戦いが繰り広げられている」と述べて、この二つの都市を結ぶ国道を利用することは緊急の事情がある以外は避けるように要望した。(電子紙「インフォバエ」6月26日付から引用)。