青春に生きる

北尾 吉孝

チェコ出身の作家フランツ・カフカ(1883年-1924年)は、「青春が幸福なのは、美しいものを見る能力を備えているためです。美しいものを見る能力を保っていれば、人は決して老いぬものです」という言葉を残したとされています。あるいはジャン=ポール・サルトル(1905年-1980年)などは、「青春とは、奇妙なものだ。外部は赤く輝いているが、内部ではなにも感じられないのだ」との指摘を行っていたようです。

青春ということでは、このように様々な人が色々な言い方をしています。国語辞書を見ますと、青春とは「夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を、人生の春にたとえたもの。青年時代」と書かれています。当該テーマで私が思うところを簡潔に述べるならば、青春とは先々月21日、小生71歳の誕生日に此のフェイスブックで行った、次の投稿が全てではないかと感じられます。

――昔から70歳と言えば古希で古代より稀(まれ)なりとされていたのですが、今は70代と言うと未だ若造の内かなぁと思っています。少なくとも何歳になっても精神的には純な若者の気持ち、「烈士暮年、壮心已まず」(曹操)といった境地でありたいと思うものです。

「雄壮な志を抱いた立派な男児は晩年になっても〝やらんかな〞という気概をずっと持ち続けるものだ」(曹操)というわけで、年を重ねても尚青春に生きるべくは、好奇心とチャレンジングスピリットの2つが最も必要だと私は思っています。例えば岡本太郎さん(1911年-1996年)は、「若さというのは、その人の青春に対する決意で決まる」と言っていたようですが、正にその通りだと思います。

好奇心や情熱というのは、「気」によって維持されるものです。「病は気から」と言いますが、年を取ると一段と気力が大事になります。肉体的な若さも勿論大事ですが、何よりも精神的な若さを如何に保って行くかが大切です。チャレンジングスピリットや好奇心が薄れてきたと感じる時、「烈士暮年、壮心已まず」と思い出し、自らを奮い立たせるのです。

「青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ … Youth is not a time of life; it is a state of mind」という言葉で始まるサミュエル・ウルマン(1840年-1924年)の詩、「青春」も基本同じことを言わんとしているように感じられます。ダグラス・マッカーサーも愛したとされる此の詩につき、松下幸之助さんによる次の要約版を御紹介し、本投稿の締めと致します――青春とは、心の若さである。信念と希望にあふれ、勇気にみちて、日に新たな活動を続ける限り、青春は永遠にその人のものである。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。