内閣府・内閣官房の位置づけを知る:政策提案のカギとなる 2つの重要官庁

謎の官庁、内閣府と内閣官房

内閣府と内閣官房、と聞いて何をしている省庁なのかを正確にイメージできる方は多くはないでしょう。その担当する政策は多岐にわたるので、そのすべてを把握するのはとても難しいものです。また、他の府省庁との関係もつかみにくいと思います。

内閣府の担当分野は、政策の方向性を示す最高レベルの政府決定である骨太の方針の議論や策定に始まり、地方分権、防災、子育て、原子力、クールジャパンなどまで、幅広い分野を担当しています。

一方の内閣官房も、骨太の方針とならぶ重要な政府決定である成長戦略の議論・策定を行っていますし、ギャンブル依存症対策、就職氷河期世代支援、気候変動など多様な政策を担当しています。

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よくよく考えてみると、子育て施策は厚労省の担当ですし、クールジャパンは経産省の担当です。気候変動はもちろん環境省の担当ですね。内閣府や内閣官房とそれ以外の省庁では、どうも担当する政策に重複があるように見えるのです。

他の省庁と内閣府、内閣官房の重複だけでなく、内閣府と内閣官房の間でも政策の重複は発生しているように見えます。

例えば、内閣官房にはアイヌ総合政策室がありますが、内閣府にはアイヌ施策推進室があります。

また、内閣官房には就職氷河期世代支援推進室がありますし、内閣府には地域就職氷河期世代支援加速化事業推進室があります。

政策提案の第一歩はその提案をするのに適切な担当部署を見つけることから始まります。今回の記事では、内閣府と内閣官房とそれ以外の省庁、どちらに政策提案をすればいいのか、内閣府と内閣官房のどちらに政策提案をすればいいのか、皆さんが迷わないようにその違いを整理していきます。

現在の内閣府、内閣官房の組織、権限となった経緯

現在の内閣府・内閣官房の組織や権限が整えられたのは2001年です。かつて1府22省庁あった中央省庁が1府12省庁に再編され、この時に内閣府が生まれ、内閣官房の権限が拡大しました。

この省庁再編を推進したのは橋本龍太郎元総理です。橋本総理をトップとし、省庁再編の在り方について議論していた行政改革会議の最終報告では、行政改革の必要性をこう表現していました。

…欧米先進国へのキャッチアップ…の追求が行政の大きな命題であった時期に形作られた…省庁編成と、行政事務の各省庁による分担管理原則は、…社会全体の資源が拡大し続ける局面においては、確かに効率的…であった。しかしながら、限られた資源のなかで、国家として多様な価値を追求せざるを得ない状況下においては、もはや、…「理念なき配分」や行政各部への包括的な政策委任では、内外環境に即応した政策展開は期待し得ず、旧来型行政は、…深刻な機能障害を来しているといっても過言ではない。
…いまや、国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定をなし得る行政システムが求められている。これを実現するためには、内閣が…行政各部からの情報を考慮した上での国家の総合的・戦略的方向付けを行うべき地位にあることを重く受け止め、内閣機能の強化を図る必要がある。
(出典:行政改革会議最終報告1997年12月3日)

この報告書の内容を理解するためには、各省庁は対等の関係であり、その担当分野の政策については、その省庁が原則として決定権を持つという分担管理原則という考え方があることを知らなければいけません。この原則のもとでは、ほかの省庁と政策がぶつかった場合、なかなか折り合いがつかず、また省庁を横断型の政策を実現しにくいという弊害がありました。

それでも昔は戦後復興需要や、人口増などで経済成長し、税収が増えていたので増え続ける予算を各省庁に配分することでその弊害をカバーできていました。しかしながら、経済発展が鈍化する中、今までのやり方を踏襲するのではなく、内閣が主導権を発揮し、各省庁の意見を聞いたうえで、大所高所の判断を行う必要性が出てきたことをこの報告書では述べているわけです。

このような議論を踏まえ、内閣府が新設され、内閣官房の権限が拡大されたのです。

現在も官邸が進めたい政策があるときには、内閣府・内閣官房に新しい組織が作られ、その組織が各省庁を指示する形で政策立案が進められていきます。官邸主導を強化するための組織としての役割を果たしているのがこの2つの組織です。

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。