エステ店の契約を解除したい:クレジット契約を利用しているときの注意点 (及川 修平)

bernie_photo/iStock

脱毛サロン「KIREIMO(キレイモ)」が、解約をした顧客の返金要求に対して対応が滞りトラブルになっていると報道された。

キレイモでは従業員への給与の支払いが遅れているとも報じられており、金銭トラブルが続いている。

契約プランをみると支払総額が20万円を超える契約で、利用者のなかにはクレジット会社の利用者もいるだろう。クレジット会社を利用してトラブルになった場合は、クレジット契約の解約処理にも注意が必要だ。

エステに限らず「高額でサービスを全て受けるまで一定の時間がかかるもの」と考えれば、語学教室や家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室も契約途中での解約が法的に認められているが、これらのサービスでも事情は同じで、クレジットの解約処理に注意しなければならない。

消費者トラブルの専門家としてこの問題を考えてみたい。

クレジット会社との契約とは?

高額なエステを契約する際にクレジット会社を利用する場合、エステ契約とセットで契約をするので、契約は1つであるように誤解してしまうが、実のところ契約は2つある。エステ店との契約とクレジット会社との契約の2つで、それぞれ別契約となる。

契約を解除する場合、エステ店との契約を解除すればクレジット契約も自動的に解除されると考えがちだが、あくまで別契約なので、自動解約されるわけではない。クレジット会社が利用者に代わってエステ店に立替払いをした利用料金の清算を行い、エステ店とクレジット会社との間で契約の解約処理をしてもらって、初めて解除となる。

通常は速やかに解約処理がなされるはずだが、何らかの事情で処理が進まないと、利用者とクレジット会社との契約は継続したままとなってしまい、利用者への請求が続いてしまうこともあるのだ。

クレジット会社に支払いの停止を求める必要がある

利用者は支払いを逃れる方法がある。

利用者からクレジット会社に対して、エステ店の契約を解除したので請求を止めてほしいと申し出るという方法で、支払い停止の抗弁といわれるものだ。2つの契約は別物なのでエステサービスの契約を解除したからといってクレジット会社との契約には影響はないはずなのだが、これでは利用者にあまりに酷であるとして、法が認めた特別な権利だ。

支払いの停止を求めることができるのは、エステ店との契約に問題がある場合、例えば契約の解除をした場合のほか、契約どおりのサービスの提供がされないといった場合にも可能だ。

支払いの停止を通知する方法は口頭でも構わないが、記録が残るように書面で行った方がよい。

この申し出をしないまま、クレジット会社への支払いを無断で止めてしまうと、延滞扱いとなってしまうので注意が必要だ。

先に紹介したキレイモのケースでは支払った代金の返金が遅れているとのことだが、クレジット会社を利用している場合、解約処理が遅れ、利用者に対する請求が続いている可能性もある。そのような場合は、速やかにクレジット会社と対応を協議するべきだろう。

現金一括払いとクレジット会社を利用する場合で何が違う?

クレジット会社を利用せずにエステ店に対して一括で料金を前払いしていると、契約は利用者とエステ店との関係の1つだけなので、料金の清算はエステ店との関係だけとなる。エステサービスなど長期間利用する契約となっている場合、途中でエステ店が倒産してしまうケースもしばしば起こるが、そうなると事実上返金を求めることができなくなってしまう。

この点、クレジットを利用して代金を分割払いにしていると、問題が発生した場合は支払いの停止をすることで、既払分の返金を求めることはできないものの、それ以降の支払いを逃れることができる。

いうなれば、エステ店が倒産した際に返金不可能になるリスクをクレジット会社に委ねることができるとも言えるのだが、その分、利用者としてはクレジット手数料を負担することになるので、メリット・デメリットを考慮する必要があるだろう。

支払いの停止とはどのような状態?

ところで「支払いを停止する」とはどのような状態かもう少し掘り下げてみたい。

これは「理由があってクレジット会社の支払いを停止している」というだけで、クレジット会社の負債がゼロになったわけではない。言い換えれば、延滞扱いにならないというだけで、負債の残高は残り続けることになる。負債はエステ店とクレジット会社との処理が終了して初めてゼロになる。

信用情報の登録状況は?

信用情報とは、クレジット会社に情報機関へ登録を義務付けている情報のことで、ローンを組むときの与信審査に使われる情報だ。

クレジット会社を利用する場合、クレジット会社は希望者の負債の総額や月額の支払額などを情報機関で確認し、審査をする。クレジット会社は契約が成立すると新たに結んだクレジット契約の内容を情報機関に登録する。そのようにして利用希望者の負債状況は随時更新されていき、過大なクレジット契約を負担することがないよう注意をすることとなっているのだ。

車のクレジット契約の審査が通らない…といった事情をきっかけに情報機関に問い合わせたところ、過去の携帯電話の分割金を支払い忘れていて延滞扱いとなっていたということもある。自分の信用情報については、契約の可否が決まることもある重要な情報となる。

支払いの停止を申し出ると、信用情報の登録としては、支払いを停止している旨の情報が記載されるが、これは法的な権利に基づいて支払いを止めているものなので、延滞扱いとして記載されるものではない。

ただし、エステ店とクレジット会社との処理が終了するまで、負債が残った状態となってしまう。別の契約でクレジット契約を申し込んだ場合、クレジット会社が与信をするかどうかは、法律上の基準があるものの、最終的にクレジット会社次第であるので「支払い停止をしてはいるものの負債が残っている」という状態をどのように判断するかは各社の判断だが、速やかに処理をしてもらうに越したことはない。

クレジット契約とは身近なものでトラブルにならない限りどのような契約をしているか意識することはないが、一度トラブルとなると、利用者・サービス提供者・クレジット会社と登場人物が多い契約であるので、解約処理をする際にも複雑になるケースもある。なかには知らないうちに自分の信用情報に解約の状況が反映されないといったことも起こりえる。

今回は、エステ契約を取り上げたが、語学教室や家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室でも処理に遅れが出ている場合は、契約の解除の対応も後手に回る可能性もあるので注意が必要だ。

及川 修平(司法書士)
福岡市内に事務所を構える司法書士。住宅に関するトラブル相談を中心にこれまで専門家の支援を受けにくかった少額の事件に取り組む。そのほか地域で暮らす高齢者の支援も積極的に行っている。

【関連記事】


編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年6月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。