12人の国会議員、ジェンダーを語る③

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引き続き、12人の国会議員へのジェンダーに関するインタビューの抜粋である。12人のプロフィールは8月4日の投稿を参照していただきたい(念の為以下に再掲する)。

12人の国会議員プロフィール

今回焦点を当てるのは、女性の政界進出をめぐる男性諸氏の見解である。

(前回:12人の国会議員、ジェンダーを語る②

女性議員を増やすべき理由

なぜ女性議員を増やす必要があるのか。Mr. Hの理由は、身近な経験に基づくものだ。同氏の妻Ms. Wは2019年参議院選に氏の地元Z県より初出馬した。Mr. Hも彼女の応援のためZ県内を回ったが、行く先々でこれまで20年近いキャリアを持つ自分の選挙では聞くことのなかった女性有権者の率直な声を耳にした。

Mr. Hは、女性問題を疎かにしたつもりはなかったが、妻の選挙を支えるなかで、彼女の言葉が「女性有権者の心の扉をどんどん開いていくの」を目の当たりにした。彼自身にはできなかったことだ。

妻の出馬により「初めて応援したい人が出てきた」、家長である夫が一家の投票先を決めるという保守的な風習のなかで「今回は誰の言うことも聞かず、自分の考えでMs. Wを応援したい」など、女性有権者を惹きつける妻の「強い吸引力」に驚かされた。女性なら誰でも良いわけではないが、女性の切実な声を掬い上げられるのはやはり女性議員ではないかと、Mr. Hは感じている。

一方、Mr. Fの意見は、「女性が政治に参画してもらわないと世の中は変わらない」、「お願いですから参加してくださいとか、女性の側が私たちを参画させろとか、そういう議論は違うんじゃないか。女性が参画して世の中を変えることは、この国にとって絶対に必要なこと」と、明快である。

しかも、Mr. Fは、以前ある女性局長から聞いた話から、1割、2割では逆効果になることを知り、女性議員比率にも踏み込む。女性局長によると、「女性が1割しかいないと、彼女たちは男性に気に入られ、受け入れられるような意見を言いがちになる。にもかかわらず、それが女性全体の考えだ、女性の声を反映したと思われるのは大迷惑で、そんなことならいないほうがいい」のである。したがって、Mr. Fは、「法律によって、女性が世の中に占める数に見合った議席を得られるようにすべきではないか」と考える。

女性の政界進出の障害

女性議員増加が遅々として進まない要因はどこにあるのか。ここでは、この問題に身近に接している立場ならではの意見に注目してみよう。

Mr. Aは2点を挙げる。一つは、「女性自身が手を上げないこと。手を挙げようという教育は進んできているので、あとは手を挙げていいよ、チャレンジしなさいよという社会環境」づくりの必要性である。

次に「ロールモデルが少なすぎる」点だ。「女性議員のロールモデルがいないため、女性が自ら(政界に)チェレンジしようという機運が生まれにくい。女性候補者にしても、こちらから出馬を要請しても皆躊躇する。それはロールモデルがないので、自分が政治家になった時の姿が想像できないからではないか」と同氏は続ける。

Mr. Dは、女性の活躍を抑制する日本社会の仕組みを問題視する。政界が「女性が出にくい、あるいは女性が参画しづらい業界だということは間違いのない」現実であり、女性の参入を阻むのは、「お金の問題よりも働き方の問題」だと指摘する。

たとえば、政界では「24時間365日政治活動、選挙活動をしろと言われ、夜に『会合してるから来い』と呼び出されることも」珍しくない。だが、「子育てや親の介護をしていたら、夜の10時に家族を放っておいて出て行って飲み会に行くなんて、出来ない」相談なのである。

Mr. Dによれば、こうした働き方は、政治に限らず、日本社会に浸透する「戦後のモデル」である。「誰かをケアするという仕事を全部女性とか主婦に押し付けて、これは政治家だけじゃなくてサラリーマンも同様で、男性はフリーハンドにして、そのエネルギーを会社とか職場に全て投入出来るように環境整備してきたのが戦後の日本社会」であり、「ケアすることを一身に負わされてきた」のが女性だ。つまり、女性の出馬は「構造的に難しい」のである。

女性の政界進出を促す提案

Mr. Jは、「今の日本の権力構造は、年を重ねたベテランの男性に全部権力が集中していて、若い男性も女性と同様に権力に与っていない」一方、権力が「一足飛びに女性には落ちてきそうにはない」ので、「ベテランから若手へ、若手から女性へと、『二段階右折方式』で進める」のが現実的だと考える。Mr. Jの提案は、女性と若手男性連合による権力奪取といったところであろうか。

以上の男性議員諸氏の見解、実に興味深く、示唆に富む。もっとも、そう思うのは面談をした私の贔屓目かもしれないが。

(続く)

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