米1月CPIは前年比の鈍化ペースゆるむ、ウエイト変更後も

米1月消費者物価指数(CPI)は前月比0.5%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.1%上昇(0.1%の低下から上方修正)にを含め6カ月連続で上昇し、4ヵ月ぶりの力強い伸びとなった。エネルギーがガソリンによる押し上げで3カ月ぶりに上昇に転じたほか、中古車や航空運賃が前月に続き押し下げた。

ただし、食品もシリアル・パン類が支え堅調な伸びを維持。帰属家賃や家賃が高止まりしたほか記録的な暖冬を受け宿泊も好調だった上に、自動車修繕や自動車保険も上昇基調を維持し、コアCPIの伸びを支えた。

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CPIコアは前月比0.4%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.4%(0.3%から上方修正)を含め、2020年6月以降続く上昇トレンドを保つ。エネルギーと食品以外でのインフレが高止まりしている様子を示した。なお、21年6月は同0.9%と1982年6月以来の伸びへ加速していた。

米雇用統計などと同様に今回、発表元の米労働統計局はウエイトの変更を発表した。2021年からの消費者支出データを用いて、1年毎(暦年ベース)のデータに基づき消費者物価指数のウェイトを毎年更新するという。2年分の消費者支出データを用いて2年ごとにウエイトを更新していた従来からの変更するものだ。

FF先物市場は、翌日発表の米1月小売売上高や16日発表の米1月生産者物価指数などを受け、3月と5月に続き6月の0.25%利上げを織り込むように、ターミナル・レートの見通しが上方修正された。3月の0.5%利上げの見方も再浮上しつつある。

CPIの内訳を前月比でみると、原油価格が80ドル前後で推移するなか、エネルギー(全体の6.9%を占める、従来は7.3%)が2.0%上昇し、3カ月ぶりに上昇した。ガソリンも2.4%上昇し、3カ月ぶりにプラスに反転

その他のエネルギーは、北東部や中西部を中心に気温が平年を上回りつつ、公益が前月の1.9%→2.1%上昇。電力が前月の1.3%→0.5%と2カ月連続で上昇しながら伸びを縮めた半面、ガスが6.7%と前月の3.5%を大幅に上回った。

エネルギー以外では食品(全体の13.5%を占める、従来は13.4%)が前月比0.5%上昇し前月の0.4%を上回った。なお、コロナ禍で経済活動が停止した20年4月は1.4%上昇していた。

詳細をみると、肉類・卵・魚は鳥インフルエンザ蔓延の影響で卵が同13.5%も急騰するなか、同0.7%と2カ月連続で上昇。シリアル・パンも同1.0%上昇しばいと、19カ月連続で上向いた。結果、食費は同0.4%と前月の0.5%を下回ったとはいえ、堅調な伸びを保った。一方で、外食は同0.6%上昇し、賃金高止まりを一因に1981年3月以来の伸びとなった22年10月の0.9%を下回ったとはいえ力強い伸びを保った。

CPIコアは前月比0.4%上昇し、市場予想と一致。エネルギー以外が堅調だったが、主に住宅関連が指数を支えた。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比は引き続きガソリンなどエネルギーが押し下げたものの食品とその他が上昇を主導

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、暖冬の影響で季節調整による押し上げが効いたとみられ宿泊が高い伸びを記録したほか、引き続き自動車メンテナンス/修繕や自動車保険が力強い上昇ペースを保った。帰属家賃や家賃など住宅関連も高止まりを維持、家賃は新規契約分でマイナスが続くものの、引き続き通常1~2年契約という事情もあってサンプルに足元の動向は反映されづらいもようだ。一方で、中古車が7カ月連続で低下したほか、経済正常化の恩恵を受け上振れしていた航空運賃や4カ月連続で弱かった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・自動車保険 1.4%上昇、13カ月連続で上昇>前月は0.7%上昇
・自動車メンテナンス/修繕 1.3%上昇、10カ月連続で上昇>前月は1.0%上昇、22年6月は2.0%と1974年9月以来の高い伸び
・宿泊 1.2%の上昇、2カ月連続でプラス>前月は1.1%の上昇
・服飾 0.8%上昇、3カ月連続で上昇し2021年12月以来の高い伸び>前月は0.2%上昇

・家賃 0.7%上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.8%上昇し1986年4月以来の高い伸びに並ぶ
・帰属家賃 0.7%上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.8%上昇し1990年6月以来の高い伸びに並ぶ
・住宅 0.7%上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.8%上昇し1976年7月以来の高い伸びに並ぶ

・教育サービス 0.5%上昇、上昇トレンドを維持>前月は0.3%の上昇
・娯楽サービス 0.5%上昇、13カ月連続で上昇>前月は0.2%の上昇
・新車 0.2%の上昇、2021年1月以来のマイナス<前月は横ばい

(横ばい、下落項目)

・航空運賃 2.1%低下、4カ月連続<前月は2.1%の低下
・中古車 1.9%の低下、7ヵ月連続でマイナス>前月は2.0%の低下
・医療サービス 0.7%低下、上昇トレンドに終止符<前月は0.3%の上昇

CPIは前年同月比6.4%と、市場予想の6.2%を上回った。前月の6.5%には届かず、2021年10月以来の低い伸びとなった。CPIコアも同5.6%と市場予想の5.5%を超えつつ、前月の5.7%を下回り2021年10月以来の低水準だった。ただし、そろって減速ペースがゆるんだ格好だ。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与もその他が大きい

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(作成:My Big Apple NY)

――経済正常化を受け、特に上昇した食品関連を除く費目は自動車保険(前月:14.3%→14.7%)と季節調整の段階で弾頭を受け押し上げられたとみられる宿泊(前月:2.9.1%上昇→7.7%上昇)は加速した。一方で、航空運賃(前月:29.8%上昇→25.6%上昇)。新車(前月:5.9%上昇→5.8%)などは、そろって前月の伸びを下回った。中古車に至っては同11.6%低下、3カ月連続でマイナスとなっただけでなく、下落率は金融危機発生直後の2009年3月以来の大きさとなった。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、新車と中古車は鈍化も他は高止まり

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの13.5%を占める食品の前年同月比は、鳥インフルエンザによって急騰した卵の影響で上振れした肉類・魚・卵が(前月:7.6%→8.0%)以外で鈍化した。シリアル・パン類(前月:16.1%→15.6%)や食費(前月:11・8%→11.3%)だけでなく、外食も(前月:8.3%→8.2%)も前月を下回った。ただし外食は、1981年4月以来の高い伸びを記録した22年10月(8.6%)に近い伸びを保った。

チャート:食費の費目全て、前年比で鈍化が優勢に

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(作成:My Big Apple NY)

6.9%を占めるエネルギーは前年同月比で8.4%と、2021年2月以降の上昇トレンドで2番目に低い伸びだった前月の7.1%を上回った。ガソリンも2021年1月以来のマイナスとなった前月の1.2%の低下から1.5%の上昇へ反転。公益(電力・ガス)は大寒波の影響で需要が高まり、前月の15.6%で変わらなかった。

チャート:生活必需品関連、家賃以外は鈍化傾向

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(作成:My Big Apple NY)

物価が高止まりするなか、実質賃金の伸びを押し下げ続けた。1月の実質平均時給は前年同月比1.8%下落、前月の1.6%から下げ幅を広げ22ヵ月連続でマイナスとなった。生産労働者・非管理職は前月に続き0.9%下落、21年4月からマイナス圏をたどるなかで最も小幅な下げにとどまった。

チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は小幅ながら再拡大

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(作成:My Big Apple NY)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年2月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。