ChatGPTで格差はさらに広がる

黒坂 岳央

黒坂岳央です。

ChatGPTが世間を賑わせるようになってまだ数ヶ月だが、グローバルでの利用者はあっという間に一億人を超え、先日は大幅アップデートも入った。筆者はこのところ、ほぼ毎日仕事で活用しておりもはやGPTなしの生活に戻れないくらい使い倒しているが、「GPTは格差を広げる」という感覚がある。

筆者はコンピューターサイエンスの門外漢ではあるが、肌感覚でGPTを使っていて思うところを論考したい。

Unya-MT/iStock

GPTはデジタルデバイドの再来

その昔、IT革命があった。「より多くの人々がデジタルデバイスを持ってインターネットにつながることで、情報格差や所得格差は是正される」という期待感があったことを覚えている。

しかし、結論的に多くの予想を裏切り、IT革命は様々な格差を縮めるどころか逆の結果になった。ネットにつながり、使いこなせるだけの能力の持ち主はそれまで以上に力を得ると同時に、ITインフラを持たない人は相対的に大きな差が開いてしまったのである。

また、ネットに接続できる環境に置かれた人たちの中でも、自力で考えたり使いこなせなければSNSなどを筆頭に、詐欺や炎上リスクの入り口が身近になり、かえって身を滅ぼす人も出てしまった。

GPTもこのデジタルデバイドの再来を感じる。これだけ話題になって使い方を指南する記事や動画がたくさん出ていても、使わない人はこれからもずっと使わないだろう。その一方で早めに手を出しビジネスに活用する人もいる。両者の格差はこれから大きく広がる。

これまでは記事を1つ書くのでも、ゼロベースで企画を考え、情報をリサーチし、信頼の置けるエビデンスやバックデータを収集しながら書く人と、ザッとGPTに原稿の核を作らせた後に細かく編集や手入れをしてささっと完成させる人とでは、質も速度も大きな差がつくだろう。実際、GPTを活用して電子書籍出版、ブログ記事、YouTube動画が多数作成されている。筆者もGPTの力を借りて制作をしている。

GPT利用に必要なスキル

だがまだまだAIチャットボットは改善点もゼロではない。

たとえば、GPTを使っていて感じることは、しれっと間違った情報が紛れていたり、存在自体疑わしい情報リソースを参照するなど、完全に人間の代わりになることはまだまだ難しい点は多く残る。

つまり今求められるGPT利用に必要なスキルとは、AIの結果を鵜呑みにせずどこが間違っているかを正確に読み取り、適宜修正を入れていく「編集力」ではないかと思う。よしんば間違っていない部分でも、「このまま出したらミスリードを招く」とか「もっとこの記述を膨らせよう」といったものはある。

一番やってはいけないことは、GPTの結果を完全に鵜呑みにして、パブリックの場へそのまま公開してしまうことだ。GPTの餌はデータであり、世にあるデータには必ず間違いが残る。これまではGoogle検索を中心に情報の真偽を見分けて、正しい情報へと編集していたわけだが、この本質は今後も変わることはない。AIが間違ってもってきた情報は真偽を見極める作業は依然として残るだろう。

GPTは勉強の必要性を排除しない

「AIに聞けば答えが出るのだから、もう勉強しなくてもいいのでは?」という意見も見られるが、これは明らかに誤りだ。上述した通り、GPTとて、エサとなるデータが間違っていれば結果も間違えてしまう。

コンピューターサイエンスに詳しい専門家の主張によると、意図的に大量のデマデータを生成し、それをAIに学習させることで政治や外交利用に使われるリスクもあるとされる。人間が見れば誰でもすぐわかるような間違いでも、AIはデータの数の力に従ってミスリードを招く結果を出す可能性は否定できない。やはり、真偽は人間で判断するべきだろう。それには知識が必要だ。

それに「Google検索が優秀すぎるから勉強は必要ない」という声が依然あったが、程なくして下火になった。GPTもチャットボットへの問いが必要という点において、これと本質的に同じ答えだ。つまり、知識や情報を脳内に蓄えておく重要性は不要になるどころか、今後ますます重要性が高まるだろう。そうでなければ、AIの結果を過信してAIを操るどころか、その逆に人生の操縦桿をAIに握られることになる。

GPTは革命的な技術だ。日々、仕事で活用してそれを実感している。だがそれを活かすも殺すも最後は人間次第だろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。