「金融のプロ」が不動産投資を食わず嫌いする理由

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マネックス時代から15年以上のお付き合いのある朝倉智也さんの新刊「私が50歳ならこう増やす!」を献本してもらい、早速読んでみました。

朝倉さんは、金融業界での資産運用に関わる業務経験が30年を超える「金融のプロ」です。

そんな朝倉さんの金融商品を使った投資に関する考え方は、私と極めてよく似ています。

低コストのインデックスファンドを使い、積み立てによるドルコスト平均法で長期を資産形成をするという極めて真っ当な方法です。

この本には、金融商品名を含めた投資方法の具体例が豊富に紹介されており、実用書としての価値が非常に高いと思います。

しかし、1つだけ気になることが書いてありました。

それは不動産投資に関する考え方です。

第1章では「元手をかけずにマンション投資」にひそむワナ、という見出しで不動産投資に関する否定的な見解が述べられています。

金融商品に詳しい朝倉さんの周辺の人たちの中に「マンション投資で儲かった」という人がいない、とまで言い切っています(やったことが無い人であれば、儲かる訳無いので当たり前のことですが・・・)。

なぜ金融のプロなのに、不動産投資になると否定的になってしまうのでしょうか?

実は、私も50歳になるまでは、国内不動産投資をやったことがありませんでした。

お金を借りることにネガティブなイメージを持っており、不動産投資は胡散臭いと思っていたからです。だから、朝倉さんの気持ちはよく理解できます。

もしかしたら、これは金融の世界の人間に共通するのかもしれません。

しかし、消費のための借金はすべきではありませんが、投資のためにお金を借りる事は積極的に活用すべきである。そのことを、この10年で痛感しました。

不動産投資は、買って良い物件と、買ってはいけない物件を見分けることができれば、失敗するリスクを低下させることができます。

実際、私の周辺の人たちの中に「マンション投資で失敗した」という人は聞いたことがありません。

私自身、もし50歳の時、不動産投資をはじめることなく、金融商品だけで資産運用をしていたらと思うとゾッとします。今もお金の不安を抱えながら毎日を過ごしていたに違いありません。

金融商品は、原則として自己資金の範囲で投資をするものです。

金融業界にいて、その世界に慣れてしまうと、お金を借りるメリットを想像することができず、食わず嫌いになってしまうのです。

朝倉さんのような大手企業で長期間勤務を続け、高収入で極めて高い信用力がある人こそ、「お金を借りる力」を使い、信用力をお金に換える(マネタイズ)べきです。

朝倉さんは、金融資産だけで既に充分な富を手に入れて、不動産投資をやる必要はないのかもしれません。

でも、個人投資家を啓蒙する立場として、読者の人たちにはバランスの取れた説明をしてほしいと思いました。

62ページから65ページ以外は極めてまっとうな内容なので、資産運用をこれから始めようという方に、一読をお勧めします。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。