資産800億円を稼ぎ、サラリーマンで唯一長者番付日本一位になったことで知られる清原達郎さんが書いた「わが投資術 市場は誰に微笑むか」を読みました。
ヘッジファンドの運用責任者として、25年間で93倍という驚異的なリターンを実現できた手法について赤裸々に語っています。
その投資手法を一言で言えば、アナリストのようなプロの投資家が見向きもしない時価総額の小さい中小型株に集中投資して、情報の歪みから収益を狙う方法です。
中小型株マーケットは効率性が低く、流動性にも劣ることから、割安に放置されている株が砂の中の砂金のように紛れ込んでいます。
それらを見つけ出して、可能性のあるものに分散投資する。特に人気のない不動産のような業界は狙い目だということです。
これは、個人投資家の投資アイディアとして、極めて有益です。
問題は果たして清原さんのこの投資手法に再現性があるかどうかです。
銘柄をスクリーニングして選び出すことはデータを使えば、不可能ではありません。しかし、その作業は地道で根気が必要です。
実際、清原さんご自身が引退を決意したのも、若い頃のように会社四季報を数日間で全て読みこなすような気力が無くなったからだと書いています。
また、結果が出るまでには時間がかかり、全ての投資先が値上がりする訳ではありません。中には経営不振や不祥事などで破綻する銘柄も出てきます。
実際、リーマンショックの時のファンドの資金繰りの苦闘を読むと、凡人には絶対に真似できない狂気すら感じます。
根気とストレス耐性が求められるこのような投資手法は多くの個人投資家には真似できない。これが、私の結論です。
清原さんは日経225銘柄のような大型株のアクティブ運用は薦めていません。自分にしか見えない情報の歪みが少なく、運用コストが高く割に合わない投資だと考えています。
つまり、
- 中小型株のアクティブ運用には価値があるが、手間とストレスに耐えられる強いメンタルが必要。
- 大型株にはそもそもアクティブ運用する価値はない。
そこから導き出されるのは「個人投資家は株式投資は低コストのインデックス運用をすべき」というシンプルな結論です。
なお、本書には清原さんの日本人離れした皮肉とユーモアがあちこちに散りばめられていて、飽きない魅力があります。
勤務先だった野村證券での話や、ゼンショーやニトリなどの創業者とのやり取り、更には金融庁検査での検査官への対応など、トラブルの中でトラブルを楽しむような達観を感じます。
やはり、これくらい肝が座っていないとアクティブ運用で成功は出来ないのです。
全ての個人投資家に一読を強くおススメします。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。