米4月小売売上高は前月比0%と、市場予想の0.4%増を下回った。前月の0.6%増(0.7%増から下方修正)を含め2カ月連続で増加していたが、横ばいにとどまった。
自動車とガソリンを除いた場合は同0.1%減と、こちらも前月の0.7%増(1.0%増から下方修正)から減少に反転。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)も同0.3%減と、前月の1.0%増(1.1%増から下方修正)から落ち込み、修正もあって過去4カ月間で3回目のマイナスとなった。
チャート:米4月小売売上高、横ばいに転じる
内訳をみると、主要13カテゴリー中で6つが増加し、前月の速報値ベースの8つを下回った。ガソリンが値上がりを背景に大幅増加したほか、服飾や電気製品などが増加した。逆に、前月に増加をけん引した無店舗が落ち込んだほか、スポーツ用品・趣味・書籍、自動車・部品、ヘルスケアなど7品目が減少した。品目別の詳細は、以下の通り。
(プラス品目)
・ガソリン・スタンド→3.1%増と3カ月連続で増加、前月は2.1%増
・服飾→1.6%増と4カ月ぶりに増加、前月は2.0%減
・電気製品→1.5%増、過去4カ月間で3回目の増加
・食品/飲料→0.8%増と3カ月連続で増加、前月は0.5%増
・建築材/園芸→0.5%増と3カ月連続で増加、前月は0.4%増
・外食→0.2%増、前月は0.1%減
(横ばい品目)
なし
(マイナス品目)
・一般小売→0.3%増と5カ月ぶりに減少、前月は0.6%増
(百貨店は1.1%減と2カ月連続で減少、前月は0.4%減)
・雑貨→0.4%減と3カ月ぶりに減少、前月は1.0%増
・家具→0.5%減と3カ月連続で減少、前月は2.3%減
・ヘルスケア→0.6%減、過去6カ月間で5回目の減少
・自動車/部品→0.8%減と2カ月連続で減少、前月は0.3%減
・スポーツ用品/書籍/趣味→0.9%減と2カ月連続で減少、前月は1.3%減
・無店舗(主にオンライン)→1.2%減と過去4カ月間で3回目の減少、前月は2.5%増
チャート:米4月小売売上高、13品目中、6つで増加
小売売上高の前年同月比は3.0%増と、前月の3.8%増を下回った。
チャート:米4月小売売上高、前年比は6カ月ぶりの強い伸び
――小売売上高は税還付が押し上げたとされた3月が下方修正されただけでなく、リテール・コントロールが減少に転じるなど、さえない結果となりました。ガソリン高が響いたほか、クレジットカードの延滞率上昇や貯蓄の取り崩しが痛手となったと考えられます。実際、NY連銀の家計調査では、1~3月(Q1)期に90日以上の深刻な延滞の割合はクレジットカードで10.7%と2012年Q2以来で最悪でした。自動車ローンも4.41%と2021年Q1以来の水準へ上昇していたものです。
その他、米4月消費者物価指数は前月比で市場予想以下となったほか、米5月NY連銀製造業景況指数がマイナス15.6と市場予想の-9.9を下回り、前月の-14.3に続き2桁のマイナス幅を記録。米利下げ期待が高弱い数字が続いたものです。
結果、FF先物市場で97月利下げ観測が高まり、NY時間午後12時時点で9月利下げ織り込み度は52.7%と1週間前の48.9%から上昇。また、年内の利下げも38.8%と、2回がやや優勢となりました。
チャート:FF先物市場、9月利下げ開始予想が高まる
パウエルFRB議長は5月14日、インフレ率が2%へ回帰する確信が持てるまで金利を据え置く姿勢をあらためて表明するなか、米4月CPIの子サービス(住宅除く)も自動車保険が押し上げ再加速するだけに、他のFed高官も慎重姿勢を保ちます。米4月PCE価格指数の鈍化と米5月雇用統計の弱含みが確認されれば、6月FOMCでも利下げバイアスを維持することでしょう。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2024年5月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。