「最強官庁」財務省の方針宣言「建議(とりまとめ)」とは
この5月21日(火)に、財務省の財政制度審議会(財政審)より建議「我が国の財政運営の進むべき方向」が出されました。これは、これまで財政審で行われてきた議論のとりまとめであり、6月に閣議決定される政府方針「骨太の方針」に対して、財務省としての立場を示す意義があります。
リンクから、とりまとめの全文および参考資料を見ることが出来ます。一見してわかる通り、内容は膨大です。本文だけで81ページ。参考資料はもう、読むのが嫌になってくるほどの量があります。
ただ、さらっとでもご覧になってみてください。非常に多角的に、この国の行く末や課題が多角的に論じられていることがわかります。
今回の記事では、特に医療業界における政策の今後(特に再来年の診療報酬改定の方向性について)について、この資料から見えてくることをかいつまんでご紹介しますが、お時間がある方は、ぜひじっくりと資料全体を読み込んでみてください。
と、ここまで書いて、なぜこの資料がそんなに重要なの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。まず、そもそもなぜ財務省が「最強官庁」と呼ばれるのか。そしてその財務省における「財政審」のとりまとめを理解することがなぜ重要なのか、について解説します。
「最強官庁」財務省は、予算を「削る」圧力をかける唯一の無二の力を持つ
省庁にはそれぞれミッションがあります。厚生労働省であれば、国民の安心を下支えするために質の良い医療や介護、年金などのサービスを提供することが仕事です。
そのミッションを達成するためには、多くの場合お金がかかります。例えば医療について考えると、厚労省としては、国民により良いサービスを提供するために、新薬や新たな医療サービスを取り入れたい!と思い予算化(診療報酬の対象とする)したいと考えます。
でも考えてみると、それまでになかった支出が増えるわけですから、当然、予算全体としては増額になってしまいます。役所が自分たちのミッションを成功させようとすると、どうしても予算は膨らんでしまうのです。
「だったらその分、あまり効果のなさそうな薬にかかっている予算を削ればいいじゃない?」と思われるかもしれませんが、話はそんなに簡単ではありません。
政策が100あれば、同じ数だけのステークホルダーが存在します。その予算や制度が必要であると主張する人は多いですが、削減を主張する人は多くはありません。求める人が少ない政策は動きにくい。簡単に言えば、いちど増えた予算は、減らしにくいのです。
この、「いらない予算を削って、新しい必要なものに投資するために予算をねん出する」という、基本的には嫌われる方向性の圧力をかける。その役割を日本では主に「財務省」が担っています。
財務省は、国家財政を健全に運営することが至上命題です。ほぼ唯一予算を削減する方向性で各省庁にものを申せる省庁というのが、「最強官庁」と呼ばれる所以の一つです。他の省庁が新しい予算を通そうとするならば、財務省の「で、それ、本当にいるの?いるとして、どこを削るの?」というツッコミに十分な説得力を持って説明しなければならないのです。
そして、そんな財務省が各省庁に対して、「過去に設定されたり、現在検討されたりしている予算や制度が、時代に合っているかどうか」について議論する場の一つが財政制度審議会であり、その議論を取りまとめたものが「建議」です。つまり、建議で槍玉にあがった政策や予算は、その後、削減や何らかの変更といった響を受ける可能性があります。医療業界で言えば、例えば次の診療報酬改定において、主要な論点となりそうなことが示されているということになります。
(この続きはこちらのnoteから)
(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2024年5月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。