SPDの運命決める東部州議会選

今月22日にドイツ東部3州議会選の最後、ブランデンブルク州議会選が実施される。今月1日に行われたザクセン州、テューリンゲン州議会選とは違い、ブランデンブルク州議会ではショルツ首相の社会民主党(SPD)が第一党で与党だ。その意味で、与党SPDが政権を堅持できるか否かが焦点となるが、複数の世論調査では同州でも野党の極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が第一党に躍進すると見られている。

ブランデンブルク州議会風景(同州議会公式サイトから)

ドイツ民間ニュース専門局ntvが5日公表した世論調査によると、第1党はAfDで27%とトップ、それを追ってSPD23%、キリスト教民主同盟(CDU)18%、左翼党から離脱して新党を結成した「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟」(BSW)が15%、緑の党は辛うじて5%を維持、左翼党は4.0%で5%のハードルをクリアできない。

この予測によれば、AfDが州議会でテュ―リンゲン州に次いで第1党となる一方、SPDが前回州議会選(2019年9月実施)で3ポイント余り支持率を落とすが、第2党の地位を維持できることになる。

問題はテューリンゲン州議会選と同様、AfDは第1党となったとしても、他の政党はAfDと連立を拒んでいるから、パートナーがいない寂しい第1党ということになる。一方、第2党となったSPDは選挙後、CDUと緑の党との3党連立を模索するだろうが、3党で過半数を獲得できるか否かは現時点で不明だ。投票後、新政権が誕生するまで難航が予想されるわけだ。

例えば、AfDとBSWがどれだけの得票率を獲得するかで状況は変わるが、両党ともウクライナへの武器支援には反対している。それ故、SPDもCDUもAfDやBSWと連立を組むことが出来ない。連邦レベルとは違い、州レベルだからAfDやBSWと連立を組むことも十分考えられるという声もあるが、党内の反対の声を説得するのは容易ではないだろう。いずれにしても、ブランデンブルク州議会選の場合、与党のSPDが前回州議会選比でどれだけ得票率を落とすかで、その後の連邦政治にも影響が出てくるだろう。

ショルツ連立政権の社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党は1日の2州の議会選で惨敗したばかりだ。緑の党はテューリンゲン州で議席獲得に必要な得票率5%の壁をクリアできず得票率3.2%で惨敗、SPDはテューリンゲン州6.1%、ザクセン州7.3%と一桁台の得票率に留まった。国政連立3与党の得票率はテューリンゲン州で9.3%、ザクセン州で12.4%に過ぎない。東独地域ではショルツ政権は完全にその政治的影響力を失っている。

ブランデンブルク州議会選でSPDが第一党の地位から落ちてしまった場合、ショルツ連立政権への退陣要求がこれまで以上に高まることが予想される。SPD内で「ショルツ首相では選挙に勝てない」という声が当然でてくるだろう。

ちなみに、リベラル派のFDPはショルツ連立政権に入って以来、選挙のたびに得票率を減らしてきた。東部3州議会選では議席獲得できる得票率5%の壁をクリアできずに敗退した。東部3州の議会で議席がない、という状況だ。党内では「政治信条が全く異なるSPD、緑の党との連立政権に入ったことが間違いだった」と指摘する声が久しく聞こえきた。ただし、政権で財務省を担当するリントナー党首はショルツ政権からの離脱を目下、考えていない。

当方は「”SPDのバイデン”に誰が退陣を求めるか」でも書いたが、選挙で勝てない筆頭候補者に対しては、辞任すべきだという当然の政治的圧力が高まってくる。SPD内でショルツ氏落としが始まるだろう。そうなれば、連立与党の緑の党やFDPとの政策論争とは違い、ショルツ氏は応戦できないだろう。

ショルツ政権の任期はあと1年余りを残すだけとなった。だから、SPDにとって、①任期満了まで、とにかくショルツ政権を継続する、②ショルツ首相の辞任を受け、早期総選挙に打って出る、の2通りのシナリオしかない。ブランデンブルク州議会選はSPDがどちらのシナリオを選ぶかを決定する選挙となるだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。