直接投資の効率とは?:投資収益率の国際比較

CreativaImages/iStock

直接投資の効率は、直接投資収益の残高に対する割合として表現できます。統計データを基に直接投資効率を計算し、国際比較してみました。

1. 対外直接投資の効率

前回は、人口1人あたりの直接投資収益についてご紹介しました。

日本は徐々に上昇傾向が続いていて、近年では主要先進国の中でも直接投資による収益が多い方になるようです。

直接投資は、海外に工場などを作り、事業活動を通じて、本国の本社に配当金などの形で所得を還流するような活動となりますね。

投資の水準となる残高に対してどれだけの所得が得られたかという比率を計算すると、直接投資の効率を見る事ができます。

今回は、対外直接投資、対内直接投資の投資効率について計算した結果をご紹介します。

まずは、主要先進国の対外直接投資についてです。

図1 対外直接投資残高に対する所得の比率
OECD統計データより

図1が主要先進国の対外直接投資残高に対する所得(受取)の比率です。

各国とも横ばい傾向が続いていますが、概ね3~10%程度で推移しているようです。

日本は2013年以降やや高めの水準が続いていて、2022年では11%と最も高い比率となっています。

それだけ投資残高に対してのリターンが多いという事になりますね。

2. 対内直接投資の効率

続いて、海外から自国への対内直接投資についての効率です。

海外からの投資規模(残高)に対して、海外に支払う所得となります。

図2 対内直接投資残高に対する所得の比率
OECD統計データより

図2が対内直接投資残高に対する所得(支払)の比率です。

2012年ころから日本の水準が相対的に高くなり、2014年以降は断トツで高い水準で推移しています。

2022年では16%で、OECD平均値の2倍以上です。

直接投資の活発なスイスで9%、オランダで6%です。

一方、他の主要先進国はアメリカ3%、イギリス3%、カナダ4%、ドイツ4%、フランス5%と日本と比べてかなり低いですね。

対外直接投資の効率については、これらの国々は7~9%ですので、自国への投資にはリターンを少なくしていて、他国への投資にはリターンをより多くしている関係と言えそうです。

直接投資による交易条件と捉えれば、アメリカなど他の主要先進国は交易条件が高く、自国に有利な環境と言えそうです。

一方、投資する側(海外)からすると、日本への直接投資は効率が良いという事になりそうです。

日本からすれば、直接投資の交易条件が低下している事になります。

日本は対内直接投資が極端に少ないという特徴がありますね。

リターンをより多くすることで投資しやすくしているという事なのか、とても興味深い傾向です。

3. 直接投資の効率バランス

最後に、2022年の対外直接投資と対内直接投資の効率を1つのグラフに散布図としてまとめてみましょう。

図3 直接投資残高に対する所得の比率
OECD統計データより

図3がOECD各国の直接投資残高に対する所得の比率をまとめたグラフです。

横軸が対内直接投資残高に対する投資所得の比率、縦軸が対外直接投資残高に対する投資所得の比率です。

斜めの線が対外直接投資の効率と対内直接投資の効率が1:1となる線です。

この線よりも上に位置すれば、対外直接投資からの所得の比率が対内直接投資からの所得の比率を上回る事になります。

自国に有利な直接投資の環境とも言えます。

イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスはどちらの比率も低めですが、対外直接投資からの所得比率の方が上回っています。

他には、イスラエルやトルコ、フィンランド、ギリシャなどが位置しています。

ポーランドは極端に高い水準で興味深いですね。

一方で、オランダ、スイス、韓国は1:1のラインを下回り、やや不利な状況となっています。

日本は先進国の中で最も対内直接投資に対する所得比率が高く、投資に対して最も多くのリターンを支払っている国となります。

一方で、対外直接投資に対する受取は多い方ではあるものの、フィンランドやギリシャを下回ります。

4. 直接投資の効率の特徴

今回は、直接投資に対する所得について、残高との比率(投資効率)の計算結果をご紹介しました。

日本は対外直接投資も対内直接投資も、リターンの割合が高い方ですが、特に対内直接投資は断トツの水準です。投資してくれる海外企業に、より多くの支払をしている事になります。

このように海外から見れば投資効率が良い割には、日本への対外直接投資はかなり少ない水準というのは大変興味深いですね。

日本は対外直接投資が多い割に、対内直接投資が極端に少なく、産業の空洞化が進んでいると言われます。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。