2024年米連邦議会選挙は、変わらず共和党が有利な状況

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11月5日の投票日まで1か月をきった。

今年4月から上下院は共和党が勝つだろうと発言してきて、もう少し民主党が下院選で接戦に持ち込むかなと思ったがどうも厳しそうだ。これが2024年連邦議会選挙の動向としては、最後の更新になるだろう。

上院選挙は、共和党の勝利予測

上院議会は、共和党が勝利で終わるだろう。ここは4月に書いた時から変更なしだ(2024.4.1 選挙区割りを巡る法廷闘争は一区切り)。

選挙予測のCook Political Reportは、10月に入ってから上院選においていくつかのレーティングを変更した。特に話題になったのは、TX州のクルーズ議員が勝利する予測を一段引き下げ“likely Republican”から“lean Republican”にしたことだろう。

とはいえ、これはあくまで “lean Republican” になっただけで、クルーズ議員が勝つ予測なことには変わりない。TX州の人口動態が変化してきていることや、クルーズ議員の人気が徐々に落ちていることもふまえると今回の投票差はみておきたい。投票差によっては、2030年再選は難しいかもしれないだろう。

また、すでにMT州は接戦とされていたが、9月に“lean Republican”に変更された。現職のMT州選出民主党のテスター上院議員はおそらく逆転は難しく、負けることになるだろう。バイデン大統領と距離を置き、中道派の立場で戦ってきたが厳しい戦いとなってしまった。

この時点で、共和党は51議席確保が決まったも同然だ。

最後まで接戦として残ったのが、MI州とOH州の上院選だ。選挙予測のInside Electionsでは、MI州は現職MI州選出下院議員のElissa Slotkin議員の勝利に傾いている。各世論調査からみても、Slotkin氏がリードしている※1)

MI州上院議員に立候補した共和党のマイク・ロジャース氏は、2011年~2015年までMI州8区の下院議員を務めた。ロジャース氏もトランプ氏を批判してきたが、2024年にはトランプ氏を支持し、ロジャース氏も共和党大統領候補者のトランプ氏から支持された※2)

2024年上院選は、OH州上院選が最も接戦となっている。

現職ブラウン議員の対抗して、実業家のモレノ氏が挑戦しているが、世論調査では一度もリードしていない※3)

クロス集計を公表しているBGSU Poll(9/18~27)※4)を確認すると、無党派からの好感度に関しての設問では、「unfavorable 」はモレノ氏のほうが上回る。favorableもブラウン議員のほうが高い。

Independent Voter 民主党現職
Sherrod Brown
共和党新人
Bernie Moreno
Strongly favorable 9% 5%
Somewhat favorable 30% 16%
Neither favorable or unfavorable 21% 32%
Somewhat unfavorable 14% 16%
Strongly unfavorable 26% 32%

OH州は副大統領候補者にも選ばれたヴァンス上院議員の選出州なので、追い風にもなってよさそうだが、副大統領候補者のヴァンス上院議員の好感度も無党派からは高くない。いや、高くないというよりunfavorable が5割を超えているのでなかなか厳しい。

ヴァンス上院議員は副大統領に就任できれば、大統領への道が開けるだろう。しかし、共和党が勝てなかった時、無党派からの好感度がこのような状況では次の上院選は厳しい結果になることが予測される。

– JD Vance Republican Independent
Strongly favorable 43% 9%
Somewhat favorable 37% 14%
Neither favorable or unfavorable 13% 24%
Somewhat unfavorable 4% 15%
Strongly unfavorable 3% 38%

上院議会は政府高官の承認など大きな権限をもつ

上院議会には政府高官の承認、連邦判事の承認だけでなく、各国との条約を批准する権限ももつ。共和党が51議席を確保できれば、多数党となり、承認を進めるスケジュールでさえ共和党の上院院内総務は決めることができる。

ハリス副大統領が当選したとしても、共和党が上院で多数党なら思うような政権をつくれない可能性が高い。というのも、民主党が全員賛同したとしても、少なくとも1名の共和党議員が承認しないとハリス副大統領が指名した政府高官は承認されない。そのため、共和党から数名が賛同するような政府高官を選ぶ必要があるので、極端な左派が選ばれることは難しいだろう。なので、ハリス副大統領が当選しても極端な左派政権になることは実現できないだろう。

これは、トランプ氏が当選した時も同様だ。トランプ氏に強く賛同している共和党議員は決して多くない。共和党議員の3分の2くらいは強い支持があるが、残り3分の1はそうとはいえない。

さらに、少なくとも共和党上院議員7名はトランプ氏を支持すると発言していない※5)。はっきりとトランプ氏に投票しないと宣言したマカウスキ上院議員などもいれば、回答を避けている上院議員もいる。

たとえトランプ氏が当選したとしても、トランプ氏の思い通りに政権幹部が就任できるとは思いがたいのだ。

なお、共和党の上院院内総務を長く務めてきたマコネル上院院内総務は年内でトップから退く。候補者の中で、最もトランプ寄りのバラッソ上院議員(WY州選出)が上院議員の党内選挙で選ばれるか、マコネル上院院内総務の側近を長く務めているスーン議員が選ばれるかで状況も変わってくるだろう。この党内選挙は総選挙後に非公開で行われる。

下院も共和党が勝利する可能性が高い

基本的に下院選挙区は、選挙区割りでどちらの党が勝つか決まる。選挙区割りについては、詳しくは過去に書いたブログ(2024.4.1 選挙区割りを巡る法廷闘争は一区切り)をご覧ください。

共和党は選挙区割りによってほぼ勝利が確定している”Solid Republican”で182議席を獲得できる見込みであり、Likely, Lean, or Tilt Republicanまでいれると206議席の確保できているといっていい。一方で、民主党は203議席しか確保がみえておらず、この時点で共和党が有利だ。

さらに、 Cook Political Reporが Toss-Up(接戦)に指定した26の選挙区は、共和党現職議員の議席15議席、民主党現職議員の議席11議席だ。仮に現職議員が議席を死守できたとしても、共和党221議席、民主党214議席となる。

民主党は Toss-Upの11議席を死守した上で、さらに共和党の議席を4議席奪還する必要がある。この時点で既に苦しい戦いであることは間違いないし、たった4議席ではあるが、されど4議席もある。

激選区 現職の下院議員 同エリアで2020年大統領選の勝利
AK州 D Mary Peltola Trump
AZ州1区 R David Schweikert Biden
AZ州6区 R Juan Ciscomani Biden
CA州13区 R John Duarte Biden
CA州22区 R David Valadao Biden
CA州27区 R Mike Garcia Biden
CA州41区 R Ken Calvert Trump
CA州45区 R Michelle Steel Biden
CO州8区 D Yadira Caraveo Biden
IA州1区 R Mariannette Miller-Meeks Trump
IA州3区 R Zach Nunn Trump
ME州2区 D Jared Golden Trump
MI州7区 D Open Biden
MI州8区 D Dan Kildee Biden
NC州1区 R Don Davis Trump
NE州2 区 D Don Baco Biden
NM州2区 D Gabe Vasquez Biden
NJ州7区 R Tom Kean Biden
NY州4 区 D Anthony D’Esposito Biden
NY州17区 R Michael Lawler Biden
NY州19区 R Marc Molinaro Biden
OH州13区 D Emilia Sykes Biden
OR州5 区 D Lori Chavez-DeRemer Biden
PA州7区 D Susan Wild Biden
PA州8区 D Matt Cartwright Trump
WA州3 区 D Marie Perez Trump

民主党は、2020年に確保していたCA州13・27区・45区と、NY州19区を狙ってくるだろう。ただ、CA州は3月の予備選結果を見る限り現職議員のほうが得票数は多いので、状況は厳しい。また、先週にNYタイムズで報道されたNY州17区、Mike Lawler下院議員の学生時代のブラックフェイス写真流出も民主党にとって追い風になるかもしれない※6)

とはいえ、Toss-Upの選挙区で議席を確保できるのは容易ではない。民主党は下院選を楽観視しているようだが※7)、勝たなくてはいけない選挙区を考えると明らかに共和党より厳しい状況にあるといえる。

共和党にとっては、過半数の218議席を確保できれば勝利ではあるものの、共和党内で一致団結できる部分が決して多くない。

ジョンソン下院議長、というよりも下院共和党指導部も、党内がまとまらないので非常に苦労している。ジョンソン下院議長は、民主党に票を頼む結果となった投票がたびたびあったので、次の会期で下院議長に就任できない可能性もある。

大統領・上下院で共和党とオールレッドが実現したとしても、下院の議席差と、上院共和党の党首選挙結果によってはトランプ政権も思ったように政策を実現できないだろう。

そもそも、共和党下院が多数党になった時に最初の100日で進める優先課題をジョンソン下院議長が9月に公開した※8)が、具体性に欠けていることはおさえておきたい。下院共和党内でコンセンサスがとれていないので、書けないということもあるだろう。

オールレッドで確実に実現できるのは、トランプ減税の延長、企業への税制優遇(Tax Relief for American Families and Workers Act of 2024)、化石燃料の復活でエネルギー自給国を再度実現するというくらいだ。あとは、オールレッドになってから交渉していくことになるだろう。

※1)2024 Michigan Senate – Rogers vs. Slotkin
※2)Republican field in Michigan Senate race thins as party coalesces around former Rep. Mike Rogers
※3)2024 Ohio Senate – Brown vs. Moreno
※4)The Democracy and Public Policy Research Network has released the results of its web-based poll of 1,000 likely Ohio voters conducted from Sept. 18 to Sept. 27.
※5)Why these 7 Republican senators still aren’t endorsing Trump
※6)Photos Show New York Congressman in Blackface as Michael Jackson
※7)One month out, Democrats say they are expanding House field
※8)Speaker Johnson Outlines Ambitious Economic Vision for America


編集部より:この記事は長谷川麗香氏のブログ「指数を動かす米議会」2024年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「指数を動かす米議会」をご覧ください。