高齢化がなければ日本の成長率は世界最高?(アーカイブ記事)

また「日本は高齢化したが労働生産性は高い」という記事が話題になっているので、2024年のブログ記事を再掲。これは生産年齢人口(15~64歳)と実際に働いている労働人口を取り違えた単純な誤解である。

日本の現役世代の生産性は世界最高?

日本経済が停滞している一つの原因が高齢化であることに疑問の余地はない。1990年を100とした実質GDP(購買力平価)でみると、G7の中で日本の成長率はイタリアと並んで最下位である(図1)。

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図1 G7諸国の実質GDP成長率

しかしFernandez-Villaverde, Ventura & Yaoは、GDPを生産年齢人口で割ると、日本の成長率はG7の平均以上であることを発見して話題になった(図2)。日本は高齢化しているため、GDPを全人口で割ると低くなるが、生産年齢人口あたり成長率は2010年代ではG7で最高だった。

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図2 生産年齢人口あたりGDP成長率

つまり日本は生産性が低下して衰退したのではなく、労働生産性は高い。先進国の成長にとって最大の脅威は高齢化であり、それが最初に日本で起こっただけだというのだが、これは本当だろうか?

日本の「労働人口あたり成長率」は2010年代に下がった

この論文はG7を同じ条件で比較しているが、日本人が読むとすぐ気づくのは、生産年齢人口と労働人口は違うということだ。15~64歳の中でも就業率は男女で違い、さらに65歳以上でも働く人はいる。

これについてMITの大学院生がデータを補正している。生産年齢人口は1990年代から毎年1%減っており、企業はそれに対応して主婦などのパートを採用し、退職した高齢者を再雇用した結果、日本の就業率はG7で最高になった(図3)。

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図3 生産年齢人口の就業率

労働人口=生産年齢人口×就業率と考え、労働人口あたり成長率をみると、図4のようになる。

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図4 労働人口あたり成長率

労働人口で割っても日本の成長率はG7で最低で、特に2010年代に大きくがった。これは非正規労働者が増えて平均労働時間が減った影響も大きいが、労働時間あたりGDPでも同じくG7最下位である。

図5 労働時間あたりGDP

残念ながら日本の労働生産性は1970年代から低く、今も高齢化で低下している。この最大の原因は終身雇用・年功序列の古い雇用慣行と、国内の非製造業のゾンビ企業が補助金で延命されたことだ。

世界金融危機で企業が淘汰され、グローバリゼーションが進んだ2010年代に、日本企業の新陳代謝は進まず、日銀が大量に供給した資金で大企業の海外直接投資が進んだ。アベノミクスの温情主義は生産性の低下と産業空洞化をまねき、大きな負の遺産を残したのだ。