企業の倒産が増えています。4-9月の倒産件数は4990件で10年ぶりの水準となり、負債総額も1兆3300億円と膨らんでいます。倒産が増えた理由ですが、今回の事態は複数のエレメントが絡まったものでリーマンショックの時のような明白な理由が不在だと考えています。それ故にむしろ、その背景をしっかり理解すると同時に何をすればよいのか、抜本的な見直しが必要になりそうです。
私が複合要因と考える要素を羅列します。
- 事業競争力の低下 技術革新や時代の変化に対応出来ず、需要が縮小、ないし消滅しつつあるもの
- 事業者の高齢化と事業継承の困難さ 儲かっておらず、特徴がない事業は誰も引き取らない
- ポストコロナでゼロゼロ融資が返済できない コロナ時のバラマキの副作用
- 人材不足 客がいてもスタッフがおらず。
- 物価の上昇 建設業などで計画時と工事着手時と工事完了時で価格変動幅を吸収できず
- 輸出事業は新興国などとのガチンコ競争で勝てず ジャパン クオリティが必ずしも世を制しない
まだあると思いますが、ざっくり言うと我々を取り巻く外部環境が大きく変わってきているのに企業や働く人々のマインドが昔のままでギャップが生じているとみています。そのギャップが大きくなり、埋められなくなったところで倒産が起きると考えています。
倒産をさせない方法は資金を供与すればよいのですが、出資金にしろ、借入金にしろいずれ返さねばならないものです。ところが返す当てもないのに借りるだけ借りるというケースが散見されるのもまた事実であります。
特にコロナの際、業種によっては存亡の危機に立たされ、異業種参入を試みた企業は多くあります。ただそれが成功しているかは微妙なのです。私がバブルの全盛期に経験したのは異業種参入でした。特に多かったのがホテルやゴルフ場事業への参入。当時言われたのが「儲かる!」。その結果がどうなったかは皆様ご存じの通りです。
コロナが生み出した異業種参入も基本的にはだめだと思います。理由は事業をするのではなく、雇用を確保することに主眼があったからです。もちろん、経営者の気持ちとして雇用確保は大事でしょう。しかし、やったこともない事業に借金して手を出すことが正しいのかは別問題です。憚れるので名は出しませんが、事実それで苦しんでいる大手上場企業もあるのです。
ブルームバーグに冷淡な記事があります。「『ゾンビ企業』の淘汰加速か、日銀利上げで耐えきれなくなる公算大」と題しており、記事のポイントは「東京商工リサーチによると、ゾンビ企業は日本の上場企業の14%を占めている」とされる中、「倒産件数の増加は避けられないが、だからといってこれらの企業全てを倒産に追い込むべきではなく、どの企業をどのように支援できるかを決めることが課題」だという点に集約されます。つまりできの悪い企業をフィルターにかけるのです。
日本は護送船団方式などを通じて企業に等しく支援することで雇用を守ることを第一義としています。このやり方はかつては意味があることだったのですが、多少、変えていかねばならない時代にあるとみています。それは従業員の能力発掘であり、時代の変化に対応しうるフレキビリティを持たせることです。いくら社内のルールに明るくても一歩外に出ればまるで使い物にならない従業員の話はごまんとあります。そうではなく、従業員に真の能力をつけさせ、労働力をある程度流動化させることで被雇用者は転職による待遇改善や才能発掘になり、企業はより従業員に魅力的な業務とオファーを提示することでウィンウィンの関係になれるのです。
つまり大企業がよくやる「出向」で全く未経験の分野に突然出すような無謀な人事ではなく、適材適所とエキスパートの育成によるプロ集団を作ることだと考えています。
一方、中小企業では「その存在価値とは何か」に集約されます。私は企業経営において付加価値を生むものが私企業の使命だと考えています。ところが一部の企業は赤字覚悟とか従業員の給与が出ればよしというところもあります。それではNPOと何ら変わらないのです。企業経営は価値の創造だという根本思想が抜けているのです。もしその事業がとても先進的で誰もやったことがない事業なら私はもちろん背中を押します。が、レッドオーシャンの中、ガチンコ価格勝負で利益ゼロしか見込めないなら止めた方がいいのです。
個人的に思うのは経営者の資質が落ちたと思うのです。経営者が汗をかかず、メッセージを従業員に伝えらていないケースは多いと思います。企業で一番働くべきは社長なのです。24時間働き、勉強し、チャレンジしなさいと申し上げます。社長は最も高い生産性と出来高、そして会社のストーリーを示さねばならないのです。社長は従業員の5倍努力しないといけないのです。努力とは労働時間の長さや同じことの繰り返しではなく、常に考え、改善、改良し、ベストソリューションを見つけ出すことです。脳みそに汗をかくのです。社長になりたい方はたくさんいますが、社長業ほど残酷なものはないということも肝に銘じるべきでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月29日の記事より転載させていただきました。