財務省の緊縮・増税プロパガンダによって、正当性を与えられてきた緊縮・増税政治家の時代が終わろうとしている。「消費減税は盛り込まず」とした立憲民主党の衰退は火を見るよりも明らかだが、防衛増税を検討し減税を牽制する議員がいる自民党も次期参院選で国民の厳しい審判を受けることになるだろう。この財務省のプロパガンダに関わったマスコミや政治家の関係、一石を投じた国民民主党について考えたい。
はじめに
先の衆院選がもたらしたものは自民党の敗北だけではなかった。むしろ本質は、現役世代にアピールする経済政策を掲げた国民民主党の発言力拡大にあった。
NHKによれば12月の各党の支持率は「自民党」が28.7%、「立憲民主党」が8.7%、「日本維新の会」が3.4%、「公明党」が2.5%、「国民民主党」が7.9%、「共産党」が2.7%、「れいわ新選組」が1.6%、「参政党」が0.5%、「日本保守党」が0.7%、「社民党」が0.9%、「特に支持している政党はない」が35.6%だった。
なお国民民主党支持は、18歳から30歳で18.5%、40代で17.5%、50代で7.8%と、それぞれの年齢層で立憲民主党支持の割合を上回っていた。
10月の政党支持率は「自民党」が31.3%、「立憲民主党」が9.2%、「国民民主党」が2.3%だったので、国民民主党が政局のキャスティングボートを握り、基礎控除と給与所得控除を合わせた103万円の壁撤廃実現へ動いた結果が、12月の政党支持率調査にはっきり現れたと言える。
これまでとは世論の潮流が変わったと言ってよいだろう。
人々が負担増を嫌うのは当然だが、財務省が掲げるプライマリーバランス黒字化(PB黒字化)のための増税については「しかたない」とあきらめムードがあった。2019年に日本経済新聞とテレビ東京が合同で行った世論調査では、「社会保障費の対策が必要」とする回答が85%に達し、このように答えた人は消費増税に賛成と回答した層で90%に上っていた。
緊縮と増税やむなしの意識は、国債の発行をめぐって「国民1人あたり1085万円の借金」などという説明が正しい表現であるかのように浸透した結果で、緊縮を語る政治家に正当性があるとされ、財政出動を語れば「バラマキ」などと批判されるのが常だった。
だが今や有権者は国民の税負担を軽くし、手取りを増やす政策を掲げる政治家が正しいと判断するようになり、財務省の言いなりになる政治家と、こうした増税政治家に正当性を与えてきた財務省のプロパガンダが不当なものだったと気付きはじめている。
増税政治家に正当性を与えてきた財務省
「国の借金」説で思い浮かぶのは池上彰だ。池上はニュースや世情を解説する番組のみならず新聞やWEB媒体でもPB黒字化の必要性と、国民の負担増を絶対的な真実かつ正義であるかのように伝えてきたが、彼に限らず緊縮・増税派に発言の機会を与え、対立する主張を排除してきたのがマスコミだった。財務省による緊縮・増税プロパガンダは、報道を通じて国民に流布されてきたのだ。
財務省、報道、これらに追随する国民の関係は「扇動の循環構造」に当てはまる。
扇動の循環構造下では、発端となるオピニオンリーダーや政治家の主張や活動が、報道によって取り上げられて虚像を生み出し、虚像の影響を受けてオピニオンリーダーや政治家を支持する人々が登場し、支持されたことでオピニオンリーダーや政治家が主張や活動を拡大させた。
虚像は追随する人々の不安や不満を刺激し、オピニオンリーダーや政治家は人々の負の感情に対して攻撃すべき相手を示唆する。原発事故の例では、放射線と被曝の影響を恐れる人は国や東電を攻撃すべきであると示唆されたのだった。
緊縮・増税プロパガンダは財務省が発端だ。財務省を発端とした緊縮・増税プロパガンダの循環構造では、緊縮・増税の主張を報道が取り上げて「財政破綻」の恐怖を虚像として生み出したのだった。
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以降、続きはnoteにて。
編集部より:この記事は加藤文宏氏のnote 2024年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は加藤文宏氏のnoteをご覧ください。