トランプ現象とは何か?

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アイデンティティ政治と階級政治

ノア・スミスのコラムを読むと、前回のヒラリー・クリントンとトランプの戦いと、今回のカマラ・ハリスとトランプの戦いの違いについての解説が興味深い。

America doesn’t really have a working class

America doesn't really have a working class
Why class politics is unlikely to succeed where identity politics failed.

特にカマラ・ハリスの敗因について、バニー・サンダースの分析が興味深く、それはつまり第二次トランプ政権が誕生したことの意味や背景の解説にも通じるとしている。バーニー・サンダースは筋金入りの共産主義者ではあるが、一方、現代のアメリカ政治の中の問題点も指摘していて、なるほど、この人が民主党の中で一定の支持を集める理由も分かる。

Sen. Bernie Sanders…said Democrats lost the 2024 presidential election because they relied too much on talking about race, gender and sexual orientation…Sanders…said Vice President Harris didn’t spend enough time talking about how to help working-class Americans by raising the minimum wage and lowering the cost of health care…

“What were they going to do to address the fact that so many people in America are struggling? Does it have anything to do with the greed of corporate America? The fact that you have a billionaire class that wants it all, they want to own the political system? Does anybody really talk about the degree to which the people on top own this country and want more and more and couldn’t give a damn about ordinary Americans?” he asked.

バーニー・サンダースは、民主党がアイデンティティ重視の政治手法に固執したことが、カマラ・ハリスの敗因だと語る。そして、民主党のリベラル政治家が着目すべきは共産主義経済、マルクス主義経済の根幹となる階級的な政治課題にシフトすべきだと語る。

今の時代にマルクス経済学を持ち出したところで、それがアメリカにおける格差社会の是正につながるか?との問いはあるが、しかし、アイデンティティ重視の政治体制は明らかな間違いだったというのは、正鵠を得ているだろう。

アイデンティティ重視の政治とは、人種や性的マイノリティ、出生地主義を重視する政治だ。これが、社会的マイノリティの過度な保護政策に繋がった。そしてこの過度な保護主義が、今のアメリカ社会の分断に通じるのはこれまでも幾度か取り上げてきた。

特に西海岸を中心にしたリベラルな政治家と支持者が集まる地域において、人種差別とはよくないことだと言う「観念論」と、アメリカとは人種差別をしない国で「なければならない」と言うイデオロギーが結びついた結果、過度なマイノリティ擁護の社会に堕して行った。それは過度なLGBT保護主義にも通じる。

民主党とは元来、大きな政府を標榜しているが、これがつまりバーニー・サンダースの言う階級政治のあり方でもある。金持ちから税金を取り、低所得階級、マイノリティに再配分せよと言う考え方だ。

これを悪いとは言わないが、行き過ぎた政策を推進するから、社会が分断するのだ。多様性とは保守的なイデオロギーも革新的なイデオロギーも、両方包含するからこその多様性を認めることになる。これは、今の日本のリベラル政党とその支持者にも通じる。

以後、

・アメリカは安定期に入っている

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。