コメは今後、長期的にはどんどん値上がりする

どうして米の価格があがっているのか

SNSにはこういうヒステリックな主婦の投稿が目立ちますが・・・・

実はいまの米の価格は30年前に戻っただけです。


今年は60kg25000円くらいになるので確かに過去最高額ですが1990年代は20000円くらいですからたいして変わりません。世帯収入は30年前の方が少し多いくらいです。しかし数年前は12000円前後ですから空前の安さでした。これを前提に高いと騒がれても困ります。いまはインフレでしょ。

パン食が進んで米の消費が減ったのが悪い、政府が悪いという人はいますが、政府は米を食べようと散々宣伝もしていた。

しかし考えてみたら分かる。家族の人数が減って単身世帯率が激増しているし共働きが当たり前になった。炊かないと食べられない米より手軽なパン食に移行して当たり前なんですよ。

家族構成の変化が最も大きい要素でしょ。

どうしてお米の価格が上がっているのか。お馬鹿な陰謀論者は「誰かが買い占めている」「海外に輸出している」とわめきますが、米を価格が上がるほど買い占めたら物凄い保管料がかかりますし、農協くらいしか専用倉庫は持っていません。海外の輸出は全体の0.5%とわずかで価格に影響なんてありません。

米が高値安定というより、安い価格帯のが無くなったのは普通に考えると2024年は2ヶ月分前倒しで新米を放出したわけで、今年は10ヶ月分の米で回さないといけない。大手の飲食チェーンは普通の年とは違い、1年分を先に確保したんだと思います。日本の米の生産量は680万トンくらいですが、吉野家グループだけで年間約3万トンのお米を使用します。米をたくさん使う丼物やカレー、外食産業の大手で100万トンくらいは確保してるんじゃないでしょうか。

米の消費のうち、業務用が約4割(農水省)で、安価な米はそちらに回ります。

つまり今年は10ヶ月分しか無いわけだが、先に業務用に相当量が確保されていると考えられ、安価な米は絶対量が少なく、安めの米が買いたい家庭用の米は需要と供給のバランスが崩れて高騰しているのだと思います。2ヶ月分を先食いしているので今年も米は足りなくなります。需要と供給のバランスが崩れると価格は上がったり下がったりするのは経済の基本で、それを止めることはできませんよ。

kanzilyou/iStock

そもそも国産米はこれから絶対上がって贅沢品になる

簡単な理屈です。まず生産人口が激減しています。

くわえて農業の労働人口の年代別属性は5年前の2020年でこう。


5年前に70〜75歳ということは団塊の世代です。今年はみんな後期高齢者です。80過ぎてなかなか農業はキツいので、この70〜74歳より右がどんどん離農しますよね。ざっくりあと5年で農業人口は4割くらい減る可能性があります。

いままで米が余って安価だったので畑にしたり果樹を植えたりしていた農家もあると思いますが、栗や柿なら手もかかりませんがいまから田んぼに戻すのはキツいです。多少は戻ることはあっても辛いと思いますよ。つまり長期的には

国産米の生産量はどんどん減って高級品になる

のは間違いないと思います。

それじゃどうするのって話

農業施策についてはこちらをお読みください。

泣くな小泉進次郎!農業改革の分厚い岩盤-農業村の抵抗に挑む青年代議士の闘い<前編>
農業改革:小泉進次郎の挑戦は続く

進次郎と言えばセクシーとレジ袋しか思い浮かばない人が大半ですが、農業の既得権に立ち向かい、まあひとことで言うと散ってしまっていました・・・・・。

国会の農林水産委員会に集まる議員は自民党から共産党に至るまで、ほとんど同じ意見を持つ農業界の代弁者である。彼らは次のように主張する。農家の所得を上げるべきである。そのためには農産物価格が低下してはならない。特に、たくさんの農家が作っているコメの価格は高く維持すべきだ。そのために供給を削減する減反政策は必要である。国内の高い農産物価格維持のためには高い関税が必要だ。

大規模生産のカリフォルニア米はいまでとドローンでもみをまきます。品質はもう日本米と変わりません。しかしいまだに米には200%以上の関税が掛けられている。ウルグアイラウンド(1986年 – 1994年)でアメリカは米の自由化を強く日本に迫りましたが、必死に飼料用の米で逃げてきた過去があります。しかしここまで減産になると豊かでない家庭には米が買えないという現実が目の前です。

現実的に
「米の輸入の関税を下げて輸入米をいれて安い価格帯の米を販売するが、安い米を作っている農家は大量に離農する」

「米は今まで通り関税を高いままにして国内の米の価格が上がってもしかたないとする」
の二択しかないのです。

消費者はどちらを選ぶのか、XとThreadsでアンケートを採りました。

まずはX

拮抗しています。わずかに米の価格は上がっても仕方ないのほうが多い。

次はThreads。主婦が多くてしかも米の値上がりに怨嗟の声が渦巻いているので輸入しろという声が大きいかと思ったら・・・


逆でした・・・・。

考えて見たら「米が上がったら生きていけない」といってる主婦も、30年前は普通に今の価格で生きていた。上がったと言っても一膳が35円から60円になるくらい。家族3人でもたいした金額じゃ無いわけです。携帯をキャリアをやめて格安SIMにしなさいよといいたい。

農業参入に高い壁は変わらず

日本はいままで農家を守るために農業への新規参入をずっと制限してきました。
いまだに農地の購入は一般人はほぼできない。

農地法第3条は、農地の権利移動を実際に農業を営む者に限定することを規定しています。この法律は、農地が農業以外の目的で使用されることを防ぎ、農地の適正な利用を確保するために設けられています。つまり、農地を売買または賃貸する際には、各市町村の農業委員会からの許可が必要です。この許可を得ることで、農地の所有権や賃借権を移転させることができます。ただし、許可は農業従事者やその計画が適正であると認められた場合に限られます。その際には農地購入が可能となります。
しかし、この許可を得ることは簡単ではありません。農業委員会は、農地の適切な利用と農業の振興を目的としており、農業経験が乏しい者や、農業に対する本格的な取り組みや計画が不十分な場合、許可が下りにくい傾向があります。農地を守り、農業を維持発展させようとする地域では、農業経験や農地を活用した具体的な計画の有無が許可の鍵を握ります。ただし、この場合は、農地を農地のままで購入するということを前提としていますので、もし農地を宅地や他の用途に転用する場合は、別途、農地転用許可を取得する必要があり、その手続きは異なります。

つまり家庭菜園のために土地を買ってのんびり米や野菜を作って余ったら出荷しようなんてことはできないのですよ・・・・

企業参入は緩和されたとはいえこんなに厳しい。

たとえば建設会社が裏の田んぼのおばあちゃんが農業をもうやめるというので、田んぼを買い取って、パワーシャベルもあるし社員が交代で米を作ってみようか、なんていうのはほぼ無理です。

・主たる事業を農業にする
・農業関係者が議決権の過半数
・役員が1人以上農業に従事

なんていう厳しすぎる条件。ワタミが子会社作ってそこに農業経験者を雇って大規模に始めるならともかく、中小零細が副業みたいな形では土地も買えないし、借りてやるにしても専任がいるというだけでリスクが高すぎ。さらに地域集落の役割を負担しろというオマケまで付きます。寝たきりのおばあちゃんの世話とかするんですかね。

農家を守る

守りすぎて競争力が無くなった。新規参入もできなくなった

規模が小さくて儲からないからどんどん離農
イマココ

っていう感じです。この危機を打開するには既得権益の見直しが絶対必要なんですが、自民と野党の票田である農家は絶対に反対する。結局、もはや自給率とか言っていられなくなるりのは間近に来ています。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2025年1月30日の記事より転載させていただきました。