「中年」こそ自己投資をするべき理由

黒坂岳央です。

昨今、物価高と円安のダブルパンチで資産運用が注目されている。フリーペーパーでも、新NISAや資産運用セミナー開催の広告を見かけ、学校の保護者同士の会話でも「スーパーの値段が高くなったねー」という話題が多いと感じる。

誰もが資産運用に熱心な世の中になりつつあるが、その一方で自分への投資「自己投資」については株式などの投資ほどは一生懸命な人を見ることが少ない。特に40代以降になると「もう人生の天井が見え、出世も収入アップもできず、あとは消化試合だけ」みたいな感覚の人も増えてくる。

だが筆者は「中年だからこそ」自己投資を頑張るべきと考えており、自分自身もずっと自己投資を続けているし、これまで以上に頑張りたいと思っている。その理由を取り上げたい。

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収入はスキルで決まる

「日本では年収が上がらない」とあちこちで言われており、確かにアメリカの都市部などと比べるとかなり安いのは事実だ。平均年収もOECD諸国と比べて1割程度低く、今から20年前は日本はアメリカよりも高かったが、現在は大きく差がついている。

しかし、国際比較をして嘆いているだけでは人生は何も変わらないし、国が法律で給与を決めているわけでもない。市場ニーズの高いスキルを身に着けたり、営業力を伸ばせば誰でも収入は増やすことができるのだ。

一例としてエンジニア職などが挙げられるだろう。筆者の親族に二人いるのだが、彼らは20代で1000万円以上を稼ぎ出し、スキルアップと転職によって30代前半の今は1500万円以上である。起業して独立するリスクを取らなくても、収入はスキルアップで増やすことができる。

40代以降になってもこの本質は変わらない。収入を増やしたければ、スキルアップをすればいい。もちろん、若い時のように可能性にベットしてもらうのは難しいのは事実だが、市場ニーズが高く、供給が少ない分野に手を付ければ、年齢に関係なく収入は確実に増える。

間違った頑張りをしていないか?

「頑張っても全く報われない」と愚痴る人の多くは「自分なりの頑張り」で独りよがりになっている事が少なくない。

これは自分自身も経験があるのだが、少ない人員の部署を連日残業をすることで乗り切るなどである。確かに残業代は出るかもしれないが、やっていることの本質は時間に切り売りであり、将来的な発展性へとつながる努力とは言えない。

これは残業そのものがダメと言っているわけではなく、本来目指すべき頑張りとは、付加価値を高めるための努力であるべきという話だ。時間単価を高める効果の期待できるスキルアップは、まさにこれに合致する。

報われる場所で頑張る重要性

「日本は年齢差別が厳しくてなかなか就職が決まらない」といっている人もいるが、その多くは極端な人余りが起きている事務職に応募し続けるなど、マーケットニーズを無視した努力をしているケースも少なくない。この件については過去記事、事務職がオワコンになった理由で解説済みだ。

また、別の記事でも書いたが、収入アップとは、昇給を期待するのではなく、基本的に転職を伴うのが普通だ。そしてこれは米国など、他国でも事情は似たようなものである。つまりどこかで「勤務先を変えるリスクテイク」が必要になり、それには転職先にPRできる実績が必要で、つまりは自己投資が必須ということになる。

ちなみにここでいう自己投資といっても、まったく新しいスキルを身につける、ということに限定しない。キャリアのPRになる仕事に積極的に手を上げて経験を積むなども含まれる。

諦めて生きるには人生は長すぎる

もう人生の先が見えている年齢ならまだしも、40代というのはまだまだこの先の人生はあまりにも長い。

統計上でも日本人のほとんどは65歳以降も働き続けることが明らかになっており、仮に70歳まで働くならあと30年、これまで働いてきた以上の長さがある。まだ、マラソンは折り返し地点ですらない。

それなのに新卒の時に始めた仕事経験だけで、これから先の30年を戦うにはあまりにも心もとない。時代の変化は早く、他国ではスキルアップに生成AIが活況だが、日本は主要国の中でも使用経験は最下位に近い。これだけでも新しいスキルを自主的に学ぶ人は世の中に圧倒的少数とわかる。

「会社は安月給で使い倒そうとするだけ。誰も助けてくれない」などと腐って何もしなければ、年を取るほどさらに事態は悪化する。

そもそも、会社になんとかしてもらおうという「受身の姿勢」ではなく、できるだけ強者になるべく、自ら労働市場の率先して力をつける気概が本来必要と考える。

先進諸国における強者とは総じて主体的であり、自分自身でキャリアデザインを考え、マーケットの変化に応じて強くあり続ける努力を求められるものである。「自分の人生は自分で舵取りをするもの」というのが然るべき思考ではないだろうか?

自分は20代の時からこのように考えており、そこから20年の時が流れたが今も通用する考え方だと思っている。

今の40代は昔と違う。一昔前はもうキャリアの終わりも見えてきて、真面目に勤め上げれば余生も困ることはなかった。だが、寿命も労働期間も伸びに伸びて、変化も早い時代では今こそ自己投資で自分の価値を高めるべきだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。