ラテンアメリカで中国からの影響力奪回に動くトランプ大統領

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

中国に奪われていた米国の裏庭ラテンアメリカのトランプの奪回

1980年代までラテンアメリカは米国の裏庭とされていた。その当時まで日本もラテンアメリカではアジアの投資国ナンバーワンであった。ところが、アフリカで投資によって影響力の拡大に成功した中国は、1990年代から米国が一時的に関心を薄くしていたラテンアメリカの市場に侵入を開始した。

ラテンアメリカは資源と食糧の豊かな地域である。そこから中国は資源と食糧を輸入し、その為のインフラの開発に投資を盛んに行った。当初、中国のラテンアメリカへの玄関はブラジルであった。その後も中国はラテンアメリカとの関係を強化し続けた。

それに米国が気付いた時には中国は既にブラジルを始め主要国への影響力を拡大していた。

トランプ氏が最初に大統領になった時にラテンアメリカでの米国の影響力の奪回に動いたが、中東の紛争などに追われ充分な力を発揮できなかった。トランプ氏が唯一具体的に動いたのは、不法移民の取り締まりであった。

その後、バイデン前大統領の政権になったが、寛大な政策も影響してラテンアメリカでの米国の影響力の奪回は見られなかった。特に、ラテンアメリカを担当していたハリス副大統領の影響力は殆ど皆無であった。

トランプ大統領がキューバ移民2世上院議員を国務長官に任命

そして、今回トランプ氏が2度目の大統領に復帰した。そこで彼が動いたのは、ラテンアメリカから中国の影響力を奪回することであった。と同時に、ロシアの影響力も削ぐための動きも開始した。要するに、ラテンアメリカを嘗てのように米国の完全な影響下に置くことに狙いを定めたのである。

その為にトランプ大統領が先ず最初に取り掛かったのは国務長官にキューバ2世でフロリダ出身の上院議員マルコ・ルビオ氏(53)を任命したことである。

ルビオ氏は大統領選挙に2度出馬した経験を持ち、トランプ大統領と同様に右派で、中国への対抗意識は非常に強い。またラテンアメリカの3悪国、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアのそれぞれ独裁政権を倒壊させることを常に願っている政治家でもある。

特にキューバは彼の両親がカストロ兄弟によって米国に移民せねばならなったという事情もあって、ルビオ氏はキューバのカストロ政権には常に厳しい姿勢を示して来た。また、ルビオ氏はキューバ訛りのスペイン語を話すバイリンガルの人物で、ラテンアメリカでの人脈は広く、彼個人の影響力は強いものをもっている。

だから、トランプ氏が最初に大統領になった時、ルビオ氏は彼にラテンアメリカの政治情勢などを頻繁に助言していた。そのこともあって、今回のトランプ大統領のラテンアメリカでの影響力の奪回にルビオ氏が最適任者であるとトランプ氏は判断したのである。

バイデン大統領の政権時のブリンケン国務長官とは違い、ルビオ氏のトランプ政権における影響力は前者とは比べものにならない。日本政府はトランプ大統領との関係づくりは非常に大事であるが、と同時にルビオ氏を味方につけることは日本外交にとって大事な要素である。例えば、彼は尖閣諸島は日本の領土だということを明確に表明している人物でもある。

 ルビオ国務長官が中国からの奪回を開始

ルビオ氏が国務長官として最初に外遊を開始したのは、パナマ、エルサルバドル、グアテマラ、ドミニカ共和国、コスタリカの5ヶ国で、グアテマラ以外は台湾との国交を断絶して中国と国交を結んだ国である。この5カ国での訪問の成果は実りあるものになっている。その内容については次回に説明することにしたい。