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近年、日本の大学では、女性の入学者を増やす目的で「女子枠」を導入しようとする動きが目立つようになっている。
理工系学部などで女子学生の比率が著しく低い現状を改善するための取り組みとして導入される一方、先行研究では、こうした女子枠が国際的には「違法な性差別」とみなされる可能性が高いとの指摘が諸外国の通説として紹介されている※1)※2)。
先日、欧州の先進国であるオランダにて、興味深い事例があった。
オランダを代表する名門理工系大学、デルフト工科大学(Delft University of Technology)は2024年、女性比率が特に低い航空宇宙工学科に女子枠を設置する方針を明らかにした。導入を推進する教授は、「過去30年から40年にわたって(女子比率向上のために)あらゆる対策を試みてきたものの、結果が出ずに限界を感じている。女子枠は最後の手段だ」と、導入の正当性を強調した。
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しかし、大学の女子枠設置表明後、オランダ教育検査局(文部科学省の管轄下にある機関)から、「女子枠は法的に許可されない」との通知が届いたという。
検査局のスポークスマンはタイムズハイヤーエデュケーションの取材に対し、女子枠は個別法でも許容されておらず、オランダ憲法も性別による差別を厳しく禁じているとコメントした。さらに、この通知は「デルフト工科大学に限らず、すべての大学や高等教育機関にも適用される」と述べ、オランダ全体で女子枠は認められないと強調した。
一方、日本では、理工系の女性比率が低いという問題意識から、女子枠の導入が依然として実施されている状況にある。しかし、米国だけでなく、オランダ(そしてEU)の事例を踏まえると、性別を基準にした学生選抜そのものが国際的には違法な性差別であることがますます明らかとなった。
女性の理工系進出を促すこと自体は社会的にも重要な課題ではあるものの、その手段として本当に女子枠が適切なのか、改めて検証が求められるのではないだろうか。
女性が理工系に進みやすい環境を整えるには、女子枠よりも、キャリア教育やロールモデルの育成、小中高校段階での理数系教育の充実など、より根本的で包括的な取り組みが必要だという研究成果もある。
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欧州有数の先進国であるオランダが違法性を明確に指摘し導入を撤回した以上、日本でも同様の施策が国際的な視点から妥当性を問われるのは時間の問題と言えるだろう。
今後の大学改革において、女子枠をはじめとする選抜制度のあり方を、もう一度慎重に検討する必要があるのではないだろうか。
【参考文献】
※1)STEM分野における性別を限定した教育プログラムの国際動向:米国事例の予備的調査
※2)Affirmative Action in Japan’s Higher Education: Who is the Target of ‘Diversity’