ドイツの選挙で「慣行農業の支持」を公約に掲げたAfD(ドイツのための選択肢)が大躍進した。
急進的な有機農業移行策に反対する農家・農村部からの支持に加え、食料価格高騰と「脱炭素・グリーンディール」に辟易とした都市部からも票を獲得。
具体的にどんな農業・環境政策がドイツ人の心を掴んだのか。
AfDが慣行農業を支持する理由と政策
- 慣行農業の優先:慣行農業をドイツ産農産物・食料の経済的・実践的な基盤として、支持。
- 大規模な有機農業への強制移行と無駄な環境規制はその基盤を壊すとして、反対。
- 特に、EUの有機農業政策と環境保護は両立できておらず、それを強いる政策は慣行農家の現実的なニーズ(生産性、収益性、競争力)を犠牲にするとして、批判。
- 有機農業への移行により収穫量が減少し、食料価格が上昇するリスクがある。AfDはこれを「食料安全保障の軽視」と見なし、反対。
- 農家の独立性とマーケット原理の重視:AfDは慣行農業が競争力を維持すべきと考える。EUの規制や補助金に頼らず、農家が自主性を高め、より自由な経営判断を下せる環境を約束。
農地を守る政策
- 農地の用途変更:環境保護のために農地の一部を非生産的な用途(自然保護区やエネルギー生産)に変える政策が、農業の基盤を弱めるとAfDは主張。
- 再生可能エネルギーへの反対:農地での太陽光発電を「土地の食い潰し」と呼び拒否。
- 農地の保護:農地は食料生産に優先的に使うべきで、風力や太陽光発電などへの転用廃止を目指す。
「農業の過剰規制を止める!」政策
- EU規制への反発:EUの共通農業政策を「規制狂」と呼び、農薬使用制限や気候目標に基づく生産制限、煩雑な書類手続きなどを「過剰規制」の例として挙げ、これらを削減すると公約。
- 農家の自由と競争力の回復:官僚的な規制を段階的に減らし、農家に経営者として決定の自由を取り戻す。これにより中小農家の経営負担も軽減し、競争力を強化。
「我々は農家の側に立つ」AfDの農業緊急プログラム
- 燃料・エネルギーへの多重課税(特にCO2税)を廃止
- 農業用ディーゼル燃料の払い戻しを2倍にする
- 農家への補償なしでの車両税導入を禁止
- 連立政権(アンペル)とEUの「狂気的なエネルギー政策」を終了し、エネルギー価格を半減
- 地域産品(野菜、果物、肉、魚)を輸入品より優先
- 「脱炭素化」のイデオロギー的政策を撤回
- 健康で高品質・残留物の少ない食品の持続的生産と市場価格の適正化
- 地域に根ざした近代的な農場経営を推進
- 農業関連の雇用維持(耕作、畜産、ワイン醸造、林業、園芸)
- 農業を重視する政権樹立の必要性
AfDが「グリーンディール」に反対する理由と国民への訴求ポイント
- 食料安全保障の優先:農地の生産用途が制限され、自給率が下がると警告。農地は食料生産に使うべきとの立場。食料価格高騰を懸念する国民に訴求。
- 気候変動への懐疑:気候変動対策の必要性を疑問視し、CO2削減目標をイデオロギー的と否定。現実的な経済優先策を提示。
- 産業空洞化を促進:グリーンディールは環境団体等への「数十億ユーロ相当の再分配マシン」に過ぎず、ドイツから産業をなくす、と警笛。
- 真逆の効果:産業がなくなれば、環境保護に割ける経済力もなくなり、自然破壊に直結すると警告。
- 国家主権の強調:EU主導の政策がドイツ農家の自主性や国家の自立性を損なうと批判し、EUからの離脱を主張。反EU感情を持つ有権者に訴求。
農家・国民がAfDの政策に共鳴したポイント
- 慣行農業の擁護:有機農業への強制移行反対が農家の生産性・収益性への不安を解消。
- 農地保護の明確な姿勢:再生可能エネルギーへの農地転用拒否が、農村部の生活基盤を守るメッセージとして機能。
- 規制緩和の約束:EUの過剰規制批判が中小農家の負担軽減を求める声に応え。
- 農家のコスト削減:燃料価格や炭素税の削減など、農場収益に直結する具体的なコスト低減策が農家に訴求。
- グリーンディール反対の訴求:食料価格高騰や経済優先を求める国民感情に合致し、反EU感情とも共鳴。
(編集部より)この記事は、浅川芳裕氏のX(@yoshiasakawa)のポストを、許可を得た上で転載いたしました。