獅子は覚醒するか?中国経済の行方

獅子は覚醒するか?この1年ほどニュートラルに中国を見てきたのですが、落ち着きを取り戻している、というのが私の見立てです。中国の話をすると感情論が先走るケースもあるのですが、ここは中立的に考えてみたいと思います。

中国の成長率が北京万博、上海五輪をピークに長期下落傾向にあることは周知であり、特に地方政府における不動産がらみの融資平台の仕組みに落とし穴があったこと、インフラの整備の急拡大、多くの不動産事業者が尋常ではないレベルの住宅投資を行ったことから「大きくて潰せない」状況に陥りました。このあたりが中国の経済評価においてボトムだったと思います。

習近平国家主席 中国共産党新聞HPより

習近平3.0になって取り巻きが共産党のYESMANばかりとなりその当時は先行きを見通すのが困難だったと思います。その上、コロナ対応もまずく、ウクライナ戦争初期にはロシアとのディールを積極的に進めたことも裏目に出ました。平たく言えば何をやってもダメだったということでしょう。イデオロギー先行、経済音痴でどうするつもりかと思っていたのですが、習近平氏がようやく気がつき始めたのがこの1年ぐらいではないかと思います。

不動産の下落を止める、大規模経済対策を行う、雇用対策を行うなどその効果は十分ではないにせよ、断続的にそのような施策が出始め、重い腰を上げたというのがこの1年弱の動きだったと思います。ここに来てDeepSeekが話題になりましたが、その実力の判断は専門の領域の方に任せるとして心理的に中国が覚醒したのは事実です。「できるんじゃないか!」です。

中国の国会にあたる全人代が始まり、ようやく貫禄が出てきた李強首相は25年経済成長率を24年と並ぶ5.0%程度とし、国債の財政赤字比率を4%に緩めたうえで5000億元を発行、更に特別国債を1兆3000億元発行し、金融システムや不動産関係の下支えをする方針を打ち出しました。中国の統計はあてにならないのですが、経済成長率が下落傾向にある中、中国のような巨大国家で経済制裁で成長エンジンが制約を受けている中での5%維持はかなり踏ん張らないとできない数字です。ただやる気を見せていることは事実です。

獅子は覚醒するか、といえば覚醒はしたもののどうしたらよいのかこの1年ぐらいさまよい、ようやく国内経済のテコ入れを本格化するという方針が決まったという風に考えています。まぁ評価できると思います。

もう一つ、中国の外交が以前に比べおとなしい気がするのです。もちろん王毅氏は精力的に世界を飛び回り、中国の外交の顔役として動いていますが、私にはトランプ政権の躓きのタイミングを待っているのように見えるのです。つまりトランプ氏は就任から43日間で100近くの大統領令に署名したと自慢しています。サインすればすべてが自動的に流れ作業のように運転されるわけではなく、様々な調整が必要ですが、とにかくおもちゃ箱をひっくり返した状態なのでいずれそれに足を取られるだろうとみているように感じます。仮にそうであれば相当賢明でしょう。トランプ氏と今は勝負しないのです。

ではお前は中国の経済成長のエンジンはどこにあるとみるのか、と聞かれたら競馬でいう大穴ですが、欧州ではないかと思うのです。あのマーケットが再度中国に帰ってくる、その期待をしているように見えるのです。アメリカは欧州と今後もやりあうでしょう。特にトランプ氏はスターマー氏とマクロン氏とはウマが合わないのです。欧州はウクライナの問題も含め何らかの形で安定的で平和を維持しなくてはいけない、これをユーラシア大陸全体の一致団結した使命と訴えるなら中国が再度欧州と良好な関係を築く可能性はあるとみています。

日本も石破氏が首相である限りにおいて中国とは当面悪くない状況が続くと思います。ある意味、トランプ氏のアメリカが猛威を振るうほど世界は冷静になり、新たなスキームを考えるということではないでしょうか?

近年の外交と政治は目まぐるしく情勢が変わります。少なくともアメリカには気をつけよ、これが外交の一致した立ち位置だとすれば多国間関係を維持成長させるためには逆にもってこいの環境が整っているとも言えないでしょうか?

中国の経済はゆっくりとながらも安定に向かっていくとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。