石破総理の「退職金課税」提言は正しい?:退職金が労働市場を停滞させる

石破茂首相は参議院予算委員会で、退職金課税の見直しについて「拙速にはしないが、慎重なうえに適切な見直しをすべきだ」と述べました。現在の制度では、同じ会社に長く勤めるほど退職金課税の控除額が大きくなり、有利になる仕組みとなっています。

参照:石破茂首相、退職金課税「適切な見直しを」 日経新聞 

政府・与党は2025年度の税制改正では退職金課税の改正を見送り、2026年度の税制改正で議論を行う方針です。

転職すると不利になる退職金制度

現在の制度は長期勤続者を優遇する仕組みですが、人材の流動性を高め、多様な働き方を可能にするためには見直しが必要との意見がある一方で、退職金が簡単に標的にされることへの反発もあります。

しかし、現行の優遇税制は、サラリーマンが会社に長く留まることを促し、労働市場の流動性を阻害する要因となっています。そのため、企業が積み立てる退職給与引当金についても課税対象とすべきです。

会社側から見ると課税されているという指摘もありますが、そこまでして労働者を囲い込む必要はあるのでしょうか。

退職金は本来、在職中の給与の後払いであるにもかかわらず、退職の仕方によって半額になったり、支給されなかったりするなど、企業の裁量によって大きく左右される不透明な制度となっています。

たしかに就職氷河期世代は、年金制度や退職金の優遇税制が見直される中で、最も不利なタイミングに直面しているように感じられます。

退職一時金は、労働者が会社に留まり続けることを促し、転職を阻害する「退出障壁」の代表的な要因であると考えられますが、社会保険料の会社負担と同じで源泉徴収のサラリーマンの関心は低いままなのでしょうか。

現在の制度は長期勤続者を優遇する仕組みですが、人材の流動性を高め、多様な働き方を可能にするためには見直しが必要です。