黒坂岳央です。
仰々しいタイトルをつけてしまったが、「貧乏になる」という部分を「後退する」や「チャンスを失う」に変えても通じる「間違った常識」が世の中にはある。
自分自身が20代までずっと貧しい生活を送っていた経験も踏まえ、筆者の独断と偏見で「これは不利になるのでは?」と感じる常識を取り上げたい。

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確実性と安定性しか考えない
20代前半の頃、筆者は5年間ほど派遣会社で働いていた。今考えるとかなりの薄給で、一緒に働いていた仲間も同じような収入だった。そして彼らの特徴は「確実性、安定性ばかり考える」ということである。
「世の中、結局学歴がすべて。学歴があれば一生安泰」
「この難関資格が取れれば食いっぱぐれない」
「とにかくたくさん貯金をしよう」
飲み会などにいって先輩から言われるセリフはほとんど、こうした「いかに人生を安定させられるか?」という持論だった。
会話の中でちょっとでもリスクテイクの話がでると「でも、失敗したらどうするの!?」みたいに厳しく反論された。たとえ1円でもマイナスが出ることは絶対に許されない!という感覚を持っていると感じた。
だが、上京して東証プライム上場企業でハイキャリアで働くワーカーや、独立して経営者、投資家としてものすごく稼ぐ人たちは総じて「チャンスはリスクの中にしかない」ということで口を揃える。こうした人たちから「安定するには~」という話を一度も聞いたことがない。
自分自身、人生が上向いたのは独学して大学進学、上京して就活を経て転職を繰り返してキャリアアップ、そして脱サラして独立などそこにはすべてリスクテイクがあったと記憶している。安定そのものは「リスクテイクの結果」でしかないのだ。
もちろん、やみくもにギャンブルしろと言っているわけではなく、必要なのは「制御可能なリスク管理」であることは言うまでもない。
稼ぐより節約を優先
筆者は田舎の山奥に住んでいるので、正直周囲の所得は「非常に高い」とは言えない人が多い。そうした家庭との会話で非常に盛り上がる話題がある。それが「節約術」だ。
「激安のお菓子でコスパよく腹を満たす」「エアコンを使わずに暖を取る技」みたいな話題が出るとみんなワイワイ楽しそうに持ちネタを出し合う。
昨今、YouTubeなどでも節約術に関する動画は非常に人気であり、誰でもコストゼロですぐ取り組めるので節約の話題で盛り上がる理由はよく分かる。そして負担なく節約できるものは積極的にするべきだろう。
しかし、問題はストレスとのトレードオフになるような節約だ。水道光熱費をケチるとダイレクトに生活に影響するし、栄養をケチると健康を害してトータルで損をする。
爪の先に火を灯す勢いでケチケチしてストレスを貯めるくらいなら、いっそ稼ぐ方が圧倒的にいい。月に1万円を節約するのはかなり難しいが、月に1万円余分に稼ぐのは誰でもできる。極論、月に1-2回だけ日雇いバイトをすれば稼げてしまう。
筆者は節約より稼ぐ方がいいと思っている。仕事を頑張ればスキルも経験も実績もついてくるし、取引先から感謝されれば自己肯定感も得られる。ケチってストレスを貯めるより、稼ぐ方が健全で手っ取り早いと感じてしまうのだ。
幸福はお金で買うものと考える
最後に幸福はお金で買えると考えてしまう、ということだ。これは自分自身もそう思っていた時期があったので、あまりえらそうなことはいえない。
「幸福そのものをお金で買うことはできない」を証明するのは非常に簡単である。「あなたに100億円あげるから残りの人生を一生無人島で過ごしなさい」と言われてどう感じるかだ。高級ホテル、高級料理で酒池肉林の生活を孤独で生きて、はたしてそんな人生は幸せだろうか?答えは明らかである。
そして筆者自身、別に資産100億円超の大富豪というわけではないが、独立して会社員の頃より所得が増えたことで経済的に困ることはなくなった。だが、ある程度欲しいものを買い揃えると、もうあれこれ欲しいとは思わなくなる。
それよりも仕事でお客さんに喜んでもらえる結果が出せるか?家族間に愛情があるか?体力や健康を維持できるか?こういった要素の方が圧倒的に今の自分の幸福度を決めてしまうと感じるのだ。
たとえ資産運用などでお金が増えても、仕事でお客さんに喜んでもらえなければ「なんとかして満足してもらいたい」という脳内願望の占有率が高くなる。
家計のお金が増えていても、子供が学校で友達付き合いがうまくいかないという話を聞くと、「友達とうまくいってほしい。自分は何か子どもたちの力になれることはないか?」という気持ちが圧倒的になる。
体力や健康を害したら、「お金が減ってもいいかとにかく今すぐ健康になりたい」ということしか考えられなくなる。
筆者は、お金で不幸をある程度軽減できることを否定しない。実際、貧しかった頃に感じいた不幸を追い払う事ができた。
だが、幸福は非常に多面的で複合的パラメータで算出される値であるため、お金で買うことはできないのは明らかだ。しかし、「自分の人生が不幸なのはお金がないなら。お金さえあれば確実に幸福になる」とそればかり考えてしまうと、どうしても努力の方向性がズレてしまうだろう。
◇
常識の恐ろしいところは一度そうだと信じると、もう疑うことがなくなるということだ。歴史認識や科学など、かつて間違ってアップデートされた情報もあるにもかかわらず、未だに古い常識を信じて改善された常識を信じない人も少なくない。時には自分の常識を疑うことも重要だろう。
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