株式投資をしている人は毎日が不安でしょう。株価を見るたびに「オーマイゴッド」では話になりません。しかしどれだけ経済環境や投資環境が悪化しても底がない株価というのはありません。どんな底なし沼でもいつかは沈まないところで止まります。ここはしっかり戦略を立てたいと思います。
今、株価が不安定な理由についてはあえて言う必要もないでしょう。トランプ氏の経済手腕、特に関税措置について市場が疑問視し不安になっている為です。トランプ氏は関税導入時には一時的衝撃があるが苦しみを抜けた時バラ色の世界がある、という趣旨の説明を繰り返しています。つまり今は過渡期(Transitional Period)というわけです。ではトランプ政権は過渡期の向こうがどうやって形成されるのか合理的説明をしたでしょうか?何をもってバラ色の世界がやってくると考えているのでしょうか?
私は少なくともその解を聞いていません。解がないのにとりあえず、苦しみだけを提供し始めたのです。トランプ氏の思惑は重い関税⇒需給の国内還流⇒供給増対応で国内投資増⇒景気回復⇒株価回復ではないかと思います。しかし、問題は企業がアメリカ国内に多大なる投資をし、生産拠点を作り、人を採用し、製造ラインを廻すという一連のプロセスを要す時間軸です。企業からすれば投資を決定するプロセスは「今日の明日」というわけにはいきません。数か月から1年ぐらいかけて判断します。その上で工場建設を決定したとしても完成まで2-4年かかるのが普通です。単純計算で今日から3-5年後にようやく国内供給網が出来上がるわけでその間苦しみに耐えよという風に聞こえるのです。

トランプ大統領とマスク氏 ホワイトハウスXより
トランプ氏は関税をかけることを誰のメリットだと考えているのでしょうか?諸外国を苦しめるつもりだと意図したはずですが、実は自国民も思いっきり傷つけている、それが今の関税政策の仕組みに見えるのです。
とすれば経済界をはじめ各方面から「大統領閣下、このまま突き進めば経済は崩壊いたしまするぞ」と口上を述べ続けるしかないでしょう。トランプ氏は国民をハッピーにしなくてはならないので株価が溶けてしまうのは不本意であり、連日無節操な下げに大きな体から威勢良く聞こえるあの強気トーンの内情は本当に揺らいでいないのでしょうか?
鉄鋼アルミ関税をカナダ向けだけ50%に引き上げると突然発表し、それを数時間でひっこめました。これは前日にカナダのオンタリオ州がアメリカ向け輸出電力に25%の輸出税(一種のサーチャージ)付加を行う発表を受けトランプ氏が25%ではなく50%の追加をするという子供だましの往復ビンタ合戦となり場当たり的なけんかとなるもカナダが引っ込めたことでかろうじて収まっている感じです。ではこの関税戦争をウクライナとロシアの戦争のように持久戦に持ち込む可能性はあるのでしょうか?本日の「溶ける株価、底はどこ?」の解はここにあります。
私の見立てはトランプ氏の関税政策はいずれ崩壊するとみています。つまり撤廃状態になるとみています。そのタイミングはさほど遠くない時期、多分、1-2か月程度で形成が変わるとみています。それもある日突然というより徐々にトーンダウンしていく形でトランプ政策を市場が否定し続けることで株式市場で徐々に安心感が広がり、Firmな足場を築くとみています。
株価チャート的にはダウもナスダックもW天井後の下落局面にあり、私の見立てる次の下値のめどはかなり下でダウは38700㌦、ナスダックは16200㌦程度になります。日経平均は目先の底は35700円程度でそこを抜けてしまうと30000円ぐらいまで節目が無くなります。特に日本株は「業績先行き不安」で日本人特有のセロトニン効果でボラティリティがより大きくなるかもしれません。
私も待機資金はあり、特定銘柄に着目していますが、今は全く踏み込めないところにあります。打診買いすらできる状況になく、ただひたすら春が来るのを待つ、そんな状態です。企業はまともな業績がある限り株価が溶け続けることはありません。
今は株価に盛り込まれた過剰な期待値が剥がれているところです。過剰な期待値とバブルは違います。バブルは無節操で狂乱を伴いますが、過剰な期待値とは一種のGoodwillであって、あると信ずるに十分たる価値であったものが剥がれ落ちているというのが私なりの説明です。今はそれが剥がれていく過程ですので堅実な企業の株価はさほど崩れにくいとも言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月12日の記事より転載させていただきました。