年金流用法案は、参議院で13日に採決することを前提に審議が始まったが、相変わらず立民党がでたらめな話を垂れ流している。泉健太氏のnoteは間違いだらけで総攻撃を浴びたが、訂正後も相変わらずナンセンスである。
先日のnoteの内容に誤りがあり、再編集いたしました。ご指摘をいただいた皆様、有難うございました。感謝申し上げます。https://t.co/vlpRg6nz8x
立憲案は、現役世代の厚生年金カットを防ぎ、年金を増やす!|泉健太— 泉健太立憲民主党 (@izmkenta) June 5, 2025
特に問題なのは、次の部分だ。
就職氷河期世代とそれより若い世代は、非正規雇用者の割合が従来より高く、現在、年齢が40歳の場合、88.3%の人が国民年金と厚生年金の両方に加入経験を持っています。厚生年金に一度も入っていない人も5.6%存在します。
本当の目的は「底上げ」ではない
これが長妻氏の「国民年金5%」の根拠らしいが、これは「厚生年金に一度も入っていない」人数で、国民年金に入っている人数ではない。国民年金の被保険者は基礎年金の30%であり、その給付が3割減るという理由で、残りの70%の厚生年金受給者から流用するのが今度の法案である。

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実はこの底上げは、当初の厚労省案には入っていなかった。問題は基礎年金の目減りで厚生年金の所得代替率50%を切ることなので、年金局は基礎年金の納付期間を64歳まで延長する加入45年化を提案し、年金部会の委員の多くも賛成だった(図1)。

図1 加入45年化のイメージ(読売新聞)
ところがこれに対して野党が強く反対し、当初は賛成していた立民党も反対に回ったため、昨年7月に年金局は45年化を断念し、厚生年金積立金の流用という「禁じ手」に手を出したのだ。そのとき出てきたのが「氷河期世代がカワイソウ」というお涙頂戴である。
氷河期世代の年金は高度成長期より多い
しかし氷河期世代は、本当に「底上げ」が必要なほど貧しいのか。確かに1990年代以降に入社した世代には非正社員が多いが、その多くは社会保険料を払っている。
国民年金だけで支給額が月額10万円以下の人は、図のように氷河期世代の1974年生まれで39%で、高度成長期より減った。女性就業率の上昇で、氷河期世代以降の年金は多くなるのだ。

図2(時事通信)
底上げの本当の理由は「100年安心」のはずの公的年金が20年で破綻し、所得代替率50%という年金官僚の大事な一線を切ってしまうことである。この所得代替率は、分母が1人なのに分子は2人(夫と妻)で、おまけに分母は手取りだから増税すると上がる無意味な数字である。
生産年齢人口の減少で増税の負担は重くなる
もう一つ泉氏のいう「年金財政に投入されている国庫負担の総額は現在、年13.5兆円ですが、この額は今後のピーク時(2040年)でも13.7兆円で、現在と今後もほぼ変わらない」というのも長妻氏と同じだ。
しかし2040年の生産年齢人口は6000万人まで減少する。これは今の7300万人から2割も少ない。つまり税の総額が同じでも、現役世代ひとり当たりの負担は2割増えるのだ。今のままなら年金支給額の減少とともに国庫負担も減るので、現役世代の機会損失はこれより大きい。
泉氏の話も長妻氏の話も、年金官僚の詐欺的なレトリックの受け売りである。特に重要なのは「底上げで氷河期世代を救う」という話が嘘だということである。本当のねらいは「100年安心」という制度設計が崩れた体面を取りつくろうために、サラリーマンの積立金を横取りすることだ。
昨年の出生数は史上初めて70万人を切り、少子高齢化は加速して現役世代や子供の負担はますます重くなる(図4)。年金官僚の体面のために国民年金という破綻したネズミ講を延命すると、現役世代の負担はどんどん重くなる。

図4
それを防ぐには保険という擬制をやめ、最低所得保障の制度設計を考え直す必要がある。破綻を糊塗するために厚生年金を流用する今回の法案は、現役世代の税負担を増やすだけである。附則になっている年金流用の開始は2029年なので、今国会で急いで成立させる必要もない。臨時国会で仕切り直し、45年化も含めて検討すべきだ。






