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言っておくが、私もやらかした。
去年の夏、ChatGPTに「今買うべき銘柄を教えて」と聞いた。で、答えが返ってきた。もっともらしい理由付きで、3銘柄。株価チャートも分析して、「上昇トレンドが確認できます」とか何とか。ふむふむ、と思って。買った。

「生成AI投資の教科書」(ジョン・シュウギョウ著)ソーテック社
結果? 2週間で10万円溶けた。
いや、AIが悪いわけじゃない。悪いのは私だ。完全に。でもな、あの時の「これで勝てる」っていう万能感、今思い出しても恥ずかしい。要するに、魔法の杖を手に入れたつもりになってたんだ。バカだった。
(そういえば)
「AI使えば投資なんて簡単でしょ?」って言ってくる人、最近多い。若い子にも、同世代にも。で、私は必ず聞く。「運転免許、持ってる?」って。変な質問だと思われるが、続けて聞く。「じゃあ、免許取るのに必要なのは運転技術だけ? 交通ルールとか安全確認とか、いらないの?」
当然、みんな首を振る。
それと同じだ。AIが運転技術。でもルールを知らないで路上に出たら? 事故る。確実に。なのに投資になると、なぜかみんな「AIに任せれば大丈夫」って思う。不思議だよな。
ああ、もう一つ言っておく。
「昔は○○証券のあのアナリストのレポート、神だったよね」——こういう会話、覚えてる人いる? 2000年代前半、IT銘柄が熱かった頃。で、そのアナリスト、今どうなった? 予想、全部当たってたら、今頃みんな億万長者だ。でも違う。人間のプロでも外す。AIも同じ。いや、AIの方がマシな時もあるかもしれないが、100%はない。絶対に。
天気予報。降水確率80%。でも降らないことあるよね? 逆に、10%なのに土砂降りとか。結局、傘を持つかどうか決めるのは自分。AIの分析も同じ。材料をくれるだけ。判断するのは、こっちだ。
(話を戻すと)
一番ダメなのは、質問力がない人。
「この株どう?」ってAIに聞いて、何が返ってくると思う? 当たり障りのない、ふわっとした答え。そりゃそうだ。質問が雑なんだから。「過去5年の利益率、業界平均と比較して教えて。あと、直近の四半期で何か変化あった?」——こう聞けば、使える答えが返ってくる。
でも、これ、基礎知識がないとできない。「利益率って何?」「四半期って?」レベルだと、もう話にならない。AIが賢くなったからって、自分が勉強しなくていい理由にはならない。むしろ逆。AIを使いこなすには、もっと勉強が必要なんだ。皮肉な話だが、これが現実。
パーソナライズの罠、これも言っておかないと。
AIって、使えば使うほど自分好みになる。便利だ。でも、気づかないうちに視野が狭くなる。自分の考えを肯定してくれる答えばかり返ってくるから、反対意見を見なくなる。これ、ヤバい。だから時々、わざと「この分析、間違ってる可能性ある? 反論してみて」って聞く。めんどくさいけど、必要だ。
倫理とか、リスク管理とか。
正直、これ書いてて眠くなってきた(読者も、だろうけど)。でも大事だから言う。AIが「この銘柄最高!」って言ったからって、全財産突っ込むな。当たり前だろ? でもやる奴いるんだ、これが。あと、AIの学習データに偏りがあったら? 例えば上場企業の過去データばかり学習してたら、女性経営者とかベンチャーとか、不当に低評価するかもしれない。気づかないまま使ってたら、機会損失だ。
インサイダー情報。これマジで怖い。AIがSNS解析してて、未公開情報を拾っちゃうケース。ありえる。で、それ基に投資したら? アウト。逮捕。シャレにならない。だから、ちゃんと規制守ってるツール選べ。安いからって怪しいの使うな。
いや、冷静になろう。
要するに何が言いたいか。AIは優秀だ。本当に。私も今、めちゃくちゃ使ってる。でも、最後に決めるのは自分。責任も自分。この原則、忘れちゃダメだ。魔法の杖なんてない。あるのは、ちょっと賢い参謀だけ。それを理解して、地道に使いこなす。
それだけの話。10万円、痛かったけどな。
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
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