S&P 500のゴキブリショック(不発)


S&P 500は大幅下落があった後と思えないほど静かな一週間となった。週明け早速TACOで月曜は大幅高で寄り付いた。月曜10/13は2%下げがあった日の翌日に当たるため、小十字を想定しつつ機械の売りを警戒するのを本ブログは定石としていたが、金曜10/10に既に売り始めたのか、機械の売りはチャートに現れなかった。もっとも高寄りしたところから続伸もせず、小さな日足にはなっている。

火曜10/14は一転してリスクオフとなり、そこから恐らく個人投資家の押し目買いでフラット近辺まで買い勧められたが、引け近辺にトランプの「中国との食用油取引を打ち切る」発言で垂れてしまい、この日に限っては引け近辺での機械の売りを警戒するくらいがちょうどいい展開ととなった。

水曜10/15は一転してASMLや銀行の好決算を手掛かりに大幅反発となった。木曜10/16は更に一転して金融機関の信用不安が蒸し返され、金融セクターが急落した。もっとも今一つ具体性に欠ける危機だったのでこの話が世界を一周したところで概ね終了し、金曜10/17は慎重な買戻しが優勢となった。

先週の記事では「2%下げの後なので火曜10/14まで売り圧力、水曜10/15はヘッジ過剰、ネガティブガンマ域なら金曜10/17のOp Exで反転」としており、実際のフローやニュースフローは想定していたのと全く異なったが、日々の強さ弱さを予想するのにテクニカルはかなり有用だった。

10/10の唐突なショックはそれまでのリアライズドvol対比でかなり大きな衝撃であり、もっとポジション解消のきっかけになってもよかったように思える。もっとも「1日2%の下落がその後のパフォーマンスを定める」パターンは地獄の2022年、2023年特有の現象かもしれず、2024年と2025年は押し目買いの圧が勝っている

例のクラッシュの機械勢への影響がようやく明瞭に観測できるようになった。GS CTAは10月後半にわたり売りに転ずると予想される。

DBのポジショニングでも同じ観測がなされている。興味深いことに裁量投資家もなぜか雰囲気に釣られて投げている。10/10の2%下げを受けたVolコントロールの売りは理論的にはかなりの規模になったはずだが、いま一つ値動きには現れなかった。

急落があった10/6の週のBofAの顧客別フローではHFが売り、1ヶ月ほど何もしなかった機関投資家が大幅に買い、個人投資家も買いとなっている。もっともこれらの買いが暴落があった10/10に行われたとは限らない。

BofAのポジティブガンマの高原は毎週100ポイント弱のペースで上方に遷移してきた。金曜10/10の急落はネガティブガンマ転落寸前まで突っ込んでいたが、その後反発したことでネガティブガンマ転落は回避された。ただ金曜引けの時間切れでそこで止まったようにしか見えなかったのだが、下落が6550で止まったことはテクニカル的に極めて重要だったということである。

10/17にOp Exはもしネガティブガンマ域で迎えたなら下落からの反転日になり得ると先週の記事では想定したが、ポジティブガンマで迎えたため特に意味がなかった。今後は6500割れでネガティブガンマに転落するだろう。

決算はマグニフィセント7の一角が始まる。ジェイミー・ダイモンが決算説明会で「ゴキブリを1匹見たら恐らく他にもいる」と表現したことでゴキブリがすっかりバズワードになっているが、今のところ「高いから色々と豪快に売るきっかけにしやすい」だけでシステミックリスクとやらに発展する気配はない。月曜10/20に地銀決算が集中しており、このあたりでゴキブリが出て来る可能性もあるが、出て来なければショートカバーのきっかけになるだろう。

政府閉鎖により10/15に予定されていたCPIが10/24に変更されたため、10/24の直前にはヘッジが入りやすいのではないか。ただ年内利下げはCPIにもはや依存していない(CPIのデータ次第ではない)ため、アンチ・ゴルディロックスな動きはあっても限定的だろう。

テクニカル。週足は上下にヒゲを伸ばした、辛うじて下ヒゲの方が長い下ヒゲ陽線となる。6550が引続き週足サポートとして健在である。

週足レジスタンスは6765が残っている。更に何かが蒸し返されて6550が下にブレイクされた場合は調整が長期化しやすいと思われ、また「天井圏からの大陰線の後はその範囲内でしばらく保ち合いが続くが、その後に下落が再開」パターンも過去にままあるため、大陰線の範囲内では基本的に6550をブレイクしないのを前提としつつも、6550ブレイク程度で困るほどの重いポジションを置きたくないものである。

ナスダックは22100がブレイクされると綺麗なヘッドアンドショルダーになり得るが、S&P 500の6550と同様、ブレイクしていない時点からショートで自分が想像したチャートを狙うのは得策ではない。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年10月20日の記事を転載させていただきました。