出口里佐です。
六本木駅から徒歩8分。賑やかな大通りを離れ、静かな住宅街を歩いた先に、ひっそりと灯る一軒家レストラン「Ji-Cube(ジーキューブ)」をご紹介します。四川料理をベースにした創作中華が評判で、味わいも空間もどこか知的で、静かな緊張感が漂います。

Ji-Cube外観
このお店を初めて訪れたのは8月。美味しいものを知り尽くした友人に誘われて以来、その魅力にすっかり虜になりました。9月、10月と夫とともに通い、10月のディナーでは、コースの途中で次回11月の予約をお願いしてしまったほど。料理は2カ月ごとに新しくなり、奇数月が新メニュー。偶数月はその余韻をもう一度楽しむ月。
香りが導く、多彩な一皿一皿
このときのメニュー(カウンター、16,500円税込)は、こちら。
- 鶏肉の和えもの
- サンマの生姜ソース
- ラムのクミン風味
- 松茸の蒸しスープ
- イカの塩味炒め
- カニ玉(蟹・蟹の卵・鶏油・フカヒレ)
- 茄子のガーリックソース
- 太刀魚の春巻き
- エビのチリソース
- Ji-Cube牛丼
- ザージャン麺
- 愛玉ゼリー
四川と聞いて想像する“激辛”とはまるで異なり、辛さよりも香りと質感のグラデーションで食欲を誘います。前菜の鶏肉は穏やかで、なんと冬虫夏草がトッピング。サンマのカリッとした衣に生姜ソースが香り立ち、ラムの串焼きクミン風味では遊牧民の風景が浮かびます。松茸の白湯スープでは一転して、日本の澄んだ秋の香気が広がります。

鶏肉の和えもの。ハーブでマリネした鶏肉と紫蘇。冬虫夏草(サナギ茸)をトッピング。タイ料理の様なエスニックな香りと爽やかな味わい。

サンマの生姜ソース

ラムのクミン風味

松茸の蒸しスープ

イカの塩味炒め。繊細なカットを入れた真っ白なイカに鮮やか
特筆すべきは、カニ玉。蟹、蟹の卵、フカヒレ、そして鶏卵の白身のみで仕上げた贅沢な一皿で、淡い光沢のなかに深い旨味が潜む、思わず笑みがこぼれる味。

卵白で作った蟹玉。黄色いのは、鶏油、蟹の卵。フカヒレも入ってます。こんな贅沢な蟹玉は見たことはありません。

茄子のガーリックソース。ソースは、中国の醤油とお砂糖を3時間煮詰めた奥深い味わい。
茄子の薄切り豚肉巻きにかけるガーリックソースは、中国醤油と砂糖を3時間煮詰めて作るという。甘みとコクのバランスが絶妙。

ハルマキ、サルサソース添え。太刀魚を春巻きの皮で包んでいます。パルミジャーノチーズの中に、栗を削ったのが隠れていました。
太刀魚の春巻きには、パルミジャーノの香りと、塩気を和らげるために削った栗が隠し味。
エビチリには堂々たるロブスター。辛味の奥に旨味が重なり、花巻でソースをぬぐう楽しみまで計算されています。

エビのチリソース。大きなロブスターの旨味に四川料理の辛さがガツン。花巻でソースを食べます。

Ji-Cube牛丼。上質な薄切り牛肉はオイスターソース味。トリュフがトッピング

四川ザージャン麺。辛味の中にしっかりと旨味。
Ji-Cube牛丼は、和牛にオイスターソースと黒トリュフを重ねた香りの饗宴。〆のザージャン麺は甘辛い挽肉ソースで、記憶に残る余韻を残します。

アイギョクゼリー。冷たい中国茶の中にカラフルなフルーツ、上にはココナッツアイス
デザートの愛玉ゼリーは、中国茶の中に色とりどりの果実とぷるんとしたゼリー、そこにココナッツアイスが溶け込む。最後の一口まで美しい。
飲み物は、私は中国茶アイスティーの東方美人を2杯、凍頂烏龍を1杯。夫は青島ビール。東方美人には金木犀がブレンドされており、スッキリした品のあるなかにも、
店名に込められた物語
「Ji-Cube」という名前の由来も印象的です。かつてこのあたりは「笄(こうがい)」という地名で、それに“Ji”の点を加えたそう。Cubeは建物が立方体の様な形だから。佐々シェフに何度か尋ねてしまったほど、店名にも物語があります。

笄(こうがい)の字に点をつけて、Ji-Cubeの店名。これは、なかなか読めませんね。
1階はカウンターで創作コース、10席、18時一斉スタート、2階は個室で、8席、4席、4席(17時半から19時半までの30分毎のスタート)、定番中華を楽しめるそうです。入り口が二つあり、どちらからでも入れるという遊び心が楽しいです。
六本木の真ん中にありながら、帰り道は驚くほど静か。ふと顔を上げれば、夜の闇に六本木ヒルズがそびえているのが見えます。「Ji-Cube」で新しい料理をいただくたびに、自分の感覚まで更新されていくような感覚があります。ぜひ味わってみてください。
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