議員定数削減? ああ、またかに付き合わされる国民

kanzilyou/iStock

87.6ポイント。石破内閣の「青木率」だそうだ。内閣支持率と自民党支持率を足した数字。亡くなった青木幹雄が言い出したから青木の法則。50切ったら危ない、高ければ解散できる——永田町の人間はこういう数字遊びが本当に好きだ。

岸田は108.5から始まって最後は見るも無残。安倍は88.7でスタートして長期政権。結局、数字なんて後付けの理屈でしかない。

でも今回の自民・維新連立、この数字以前の問題がある。選挙協力なし、政策の一致なし。あるのは「議員定数削減」という、聞き飽きた看板だけ。

昨日、行きつけの定食屋で隣に座ったサラリーマンが言ってた。「また議員減らすとか言ってるけど、俺らの暮らし、何か変わるんすかね」。

変わるわけない。知ってるくせに。

吉村代表、カメラの前では威勢がいい。「議員定数削減が改革のセンターピン!」「秋の国会で必ずやり遂げる!」

ちょっと待て。2012年、野田と安倍も同じこと言ってなかったか? 「定数削減します」「約束します」——で、どうなった? 何も変わってない。むしろ増えてるじゃないか、参院は。

立憲のベテラン議員が居酒屋で笑ってた(名前は言えない、まあ察してくれ)。「自民が飲むはずないでしょ。維新はまた騙される。スピード離婚、3ヶ月もたない」

その通りだと思う。というか、維新だって分かってるはずだ。できないこと承知で言ってる。これ、プロレスでしょ?

維新案の中身がまた、ひどい。

比例176から50削る。小選挙区には手をつけない。つまり何か? 自民と維新みたいな、地盤がある政党だけが生き残れる制度にしたいわけだ。

新興政党の安野代表(チームみらい、知らない人が多いだろうが)が面白いこと言ってた。「身を切るなら歳費削れよ。なんで議席なんだ」。

正論すぎて笑った。でも維新は絶対にやらない。なぜか? 簡単だ。歳費削っても選挙で勝てないから。「議員定数削減しました!」の方が、有権者ウケがいい。

昔、大学の政治学の教授が言ってた(もう20年前か…)。「民主主義のコストを削る国は、民主主義を失う」。当時はピンとこなかったが、今なら分かる。

維新の連中、大阪では25%も府議定数を削った、と自慢する。118から88へ。すごいじゃん、と思うだろ?

違う。

結果どうなったか。維新が88議席中50以上を独占。完全な一党支配。これが「改革」? 笑わせる。ただの権力集中じゃないか。

友人の大阪在住の記者が嘆いてた。「もう批判する議員がいない。議会が形骸化してる」。これを国政でやろうってんだから、恐ろしい。

自民・維新、衆院で2議席、参院で5議席足りない少数与党。で、定数削減の法案通すには、削減に反対してる野党の協力が必要。

青木率87.6? 知らんがな。

もういいよ、本当に。

あ、でも選挙は行けよ。文句言うなら投票してから言え。これだけは譲れない。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)