JR東海は29日、リニア中央新幹線(品川―名古屋間)の総工費が約11兆円に膨らむ見通しを発表した。従来想定の約7兆円から約4兆円増加する大幅な上振れで、開業時期も「申し上げることはできない」として見通しが立っていない。物価高と金利上昇で、採算性に根本的な疑問が生じている。
- JR東海は、リニア中央新幹線の総工費を約11兆円と発表。従来より約4兆円増加。
- 建設資材の高騰や難工事の増加が主な要因で、コスト膨張が止まらない。
- 丹羽俊介社長は「開業時期はまだ申し上げられない」と述べ、再延期の可能性を示唆。
- 当初想定の金利0.4%は現在2.6%に上昇し、年間の金利負担だけで約2兆円に達することもも予想される。
- 財投頼みの構造では、金利上昇で事業が赤字化するリスクが高まる。
- インフレや少子化、需要減少など、前提条件がすでに崩れつつある。
- 技術的にもトンネル掘削など困難な工事が続き、工期短縮は難しい。
- 葛西敬之元社長の負の遺産であるリニア事業について、現経営陣はリスクを再評価し、撤退も含めて判断すべき局面にある。
今回の発表は、リニア中央新幹線が抱えてきた「工費膨張+需給見通しの不透明性+金利負担増」という三重のリスクが明らかになった点で極めて重大である。経営視点から言えば、もはや従来の「夢の超特急」「高速鉄道で未来創造」という文脈だけでは済まされず、コスト・リスク・収益の現実的な再精査が必須となっている。現時点で開業時期が明示できないという発言は、むしろリスクを制御できていない証左とも読み取れる。今後、JR東海および国・自治体は、このプロジェクトの是非とコスト負担のあり方を改めて問い直す必要がある。

リニアモーターカー(中央新幹線)計画 JR東海HPより






