国際線に何十年も定期的に乗っていて気づいていたのが近年、乗客がアルコールを飲まなくなったこと。日系の航空会社ですと飲む人はまだいます。しかし、非日系航空会社だと飲む人はまばら。イスラム系の人が飲まないし、白人もあまり飲みません。日本人と韓国人は根っから好きですね。ここバンクーバーではローカルパブが閑散としてきており、先日、スポーツバーで野球のワールドシリーズを見た時も店には客が半分も入っていませんでした。ブルームバーグによると世界のアルコール株指数はコロナ期に最高となりその後、急落、今は2012年来の安値水準と低迷、アルコール会社は酔いたくても酔えない状態です。社会の変化なのでしょうね。
では今週のつぶやきをお送りいたします。
何処に行く株価
日本の株価形成は壊れているとしか言いようがありません。常軌を逸しているとも言えます。明白なのは日経平均採用銘柄のごく一部が値を飛ばしており、売買が一部銘柄に集中し、指数がそれに鋭く反応している点です。日経平均が1000円上昇するのに計算上、上位3銘柄程度で達成した日もあります。以前にも申し上げたように東証グロース指数は8月の高値から9%下げた水準だし、東証スタンダード指数はいびつながらもチャート的にW天井をつけ、下落の開始なのか判断の瀬戸際に見えます。
アメリカについても波を打ちながらも高値更新が続いており、今週はメタ社以外のハイテク主要株は好決算で湧きあがりました。メタ社株の下落は利益の大幅減のみならず、AI投資競争でライバルに追いつかなくなる可能性が出てきています。先日来、指摘しているAIとその関連投資バブルにおいて早く諦め、戦略変更をするか、AIバブルの最後までお付き合いするかの判断どころにあるとみています。北米株式市場の現時点での負け組は飲食業界で、腹を満たすだけのファーストフードか高級化の二極化で中間的なファストカジュアルと称するジャンルが苦戦となっています。
個人的には全般的に引き時にあると考えており、順番に売却を進めていく感じで今年、売却予定の銘柄は早めに処分するつもりです。つまりこの宴は来年までは持ち越さないと予想しています。ハローウィーンを過ぎるといよいよ消費者が浮かれる感謝祭とクリスマスで株価も浮つきやすいかもしれません。政治日程も今回のアジアでの一連の会議で重たいところは終わったと思います。よって株価はもしかすると最後のヒルクライムもあるかもしれません。私が年末の日経平均を44000円と見たのは完全に外していますが、今の52000円台を予想した人もいないはずで未知の世界で希望を手繰り寄せる感じに見えるのは私だけでしょうか?
外交ウィーク、勝者は誰?
アジア諸国が中心だったとはいえ様々な外交が繰り広げられ、個々を分析するのはたやすくないかもしれません。まず高市外交ですが、明白な印象付けをしたのが「米国追随外交」。トランプ氏と腕を組むのはやり過ぎ、横須賀に停泊中の空母の上の様子ははしゃぎ過ぎ。私感としては頂けませんでした。ちなみに世界の評価は「上手なデビューだけど手腕はこれから」という感じで日本国内の異様な高支持率とは一線を画しています。今回の外交は顔見せ的なところもあったのですが、具体的成果にどうつなげるか、様子を見たいところです。

日米首脳会談でのトランプ大統領と高市首相 首相官邸HPより
トランプ氏ですが、帰国時に自己採点を120点とし「何兆ドルも稼いだ」と豪語していました。やはり彼は商魂たくましいビジネスマンであり政治家ではないのです。確かに目先の損得勘定だけを見れば得たものは大きかったと思います。今回のアジア歴訪は政権の最高幹部を全員引き連れての「国別団体戦」をしたわけです。米中首脳会談でも習近平氏の隣にいた王毅外相が小さく見えてしまったほどです。ましてや韓国の対応は儒教の教えそのものでトランプ氏は「敬うべく大先生」扱いでありました。日本は上げ膳据え膳の最高のおもてなしでもちろん文句はないでしょう。
中国ですが、個人的には今回の一連の外交で一番成果をもたらしたと思います。トランプ氏とのディールは基本的に譲歩合戦でもう1年、時間を買うというものでした。ただ1年後はトランプ氏は中間選挙の頃合いであり、どうなっているか読みにくいわけです。とすれば政権の安定感がある習近平氏としては時間を買う戦略は妥当であり、中国にメリットがあるとみています。ところで目立たなかったですが、不仲だったカナダと中国の関係改善が図られたのはカナダにとって大きな成果でしょう。トルドー前首相と習近平氏は酷い不仲でしたが、カーニー氏に顔を変えたことで大人の取引をしました。これは逆にカナダとアメリカの冷却期間がさらに延びるともいえ、良いことかどうかはもう少し様子を見る必要がありそうです。
サービス価格上昇がもたらすインフレ
マクドナルドのメニューにあるスマイル0円は1980年代に大阪の店舗のスタッフのアイディアから生まれたものです。それはともかく、日本は長年、サービスに対する付加価値の考え方が極めて低かったと言えます。「そんなのサービスでしょう」「サービスしてよ」という日常的会話は労働奉仕は無料だという思想が背景にあったと思います。人口密度が高く、人材が豊富にいた名残だったとも言えるし、日本人がかつて価値を見出したのは物理的な製品であり、サービスへの価値観を理解するにはまだ何世代か巡らないといけないのかもしれません。
例えば床屋のバジェットカット(10分とか15分で終わる床屋)。床屋は当然ながらサービス業なのですが、そこで付加価値を取れないから一人当たりの散髪を極端に効率化させ、作業を物的なものに代替する発想があると思います。実はサービス価値が分からないのは中国も同じ。ここバンクーバーには日本と同じようなバジェットカットの散髪屋がたくさんあるのですが、場所によっては週末は黒山の人だかり。中ではスタッフがバリカンと髪の毛を吸い取る掃除機を巧みに使い分けながらあっという間に「一丁あがり!」という具合です。
ようやくインフレが当たり前になりつつある日本ですが、その要因はサービス価格の上昇がその原因となっているケースも多く、一般的には人件費の上昇と理解されています。その中で、サービス価値を価格転嫁し、値上げする場合と物質的満足度を究極まで追求する手法の両方を見て取っています。例えば最近かなり増えたホテルのビュッフェは価格が1万円前後するも最大の物質的満足を提供すべくフードコストを引き上げ、サービスコストを引き下げる努力をしているともいえます。究極的には人がいないとサービスできない業種の値上がりは継続するものと思われ、公的サービス、介護、建設などの価格上昇はまだまだ続くのでしょう。
後記
カナダ連邦政府が所有するカナダ開発銀行(BDC)から電話があり新しい融資プログラム出るのだが資金の需要はないかと。はじめ怪しい電話かと思ったのですが、どうやら本物でオタワからわざわざかけてくれました。背景は経済全般が沈滞しており活性化のために政府が民間企業の借入金の支援をするというわけです。金利が十分に下がっても建設不動産業界は最悪の環境。つまり私にとっては絶好の環境になったわけで次の開発プロジェクトの試算を開始しました。ところが昨年工事で世話になった建設業者から「来年、会社をたたむ」と。市場のシリアスさを感じています。こういう時こそ現金を持っていると強いともいえます。高校のクラスメートは私を山師と呼びましたが、賭ける時は大きく張り、リスクをヘッジすることこそビジネスの基本形、いや、山師の基本形ともいえます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月1日の記事より転載させていただきました。






