高市政権の「責任ある積極財政」が長期の日本国債の金利上昇を招いています。指標となる新発10年物国債の利回りは本日一時1.775%まで上昇しました。これは約17年ぶりの水準です。

財政赤字の拡大懸念が国債の需給に影響している訳ですが、どれだけ財政赤字残高が拡大しても日本国債はデフォルト(債務不履行)になる可能性は極めて低いと市場は判断しています。
それはCDS(Credit Default Swap、クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる企業や国などの信用リスクを売買する金融派生商品(デリバティブ)の取引状況が示しています。
ネット上で検索した日本の5年国債のCDSのチャート(図表)を見ると直近では20ベーシス(0.2%)程度で低位安定しています。これは5年以内に日本国債がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性はわずか0.2%しかないことを示しています。
財政赤字拡大懸念があるのに国債のデフォルトリスクがほとんどないのはナゼなのでしょうか?
それは、そもそも自国通貨建ての国債は形式的にはデフォルト(債務不履行)する可能性は極めて低くなるからです。なぜなら政府が自国の中央銀行を通じて自国通貨を無限に発行できるため、紙幣を刷ることで国債を償還できるからです。
しかし、財政赤字を解消するために自国通貨を発行すれば通貨価値の下落を招きます。つまりインフレです。
それが加速すればハイパーインフレーションのリスクも出てきます。通貨に対する信認が低下すれば、為替レートも下落することになります。
つまり、市場はインフレによって日本の財政赤字問題が解決すると見なしているのではないでしょうか?
日本はまだ切羽詰まった状況になっているとは思いませんが、財政赤字拡大懸念による長期国債金利の上昇とCDSの低位安定に整合性のある説明ができるのはインフレによる通貨価値の下落しか考えられません。
その時のインフレは現在のようなマイルドなインフレでは済まないはずです。難しいのはいつかインフレになると考えたとしても、それがいつどの位のものになるのかは誰にも予想できないことです。
日本国債がデフォルトしないのと同じように日本の年金制度も破たんすることは無さそうです。インフレになれば年金の支払い金額は実質的に小さくなるからです。物価スライドによる支払い増加もありますが、インフレ率よりも低ければそのインパクトは限定的です。
日本国債はデフォルトしないし、公的年金制度は破たんしない。でも、それが国民の多くを経済的に重大な危機に陥れる。何とも恐ろしい未来です。
と、ここまで私なりの考え方を書いてみましたが、私はCDSの専門家ではありません。もし専門家としての知見をお持ちの方がいれば拝聴させてください。

Chartchai Sansaneeyashewin/iStock
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。






