
八甲田の紅葉
smoke/iStock
出口里佐です。

初雪が降った八甲田山ろく。
シャトルバスから撮影
先週、紅葉がちょうど見頃を迎えた青森を訪れました。今回は夫と一緒に、初雪が静かに積もった八甲田の山へ——。青森市内からシャトルバスに揺られ、約1時間でたどり着く八甲田ホテルは、いつ訪れても心がゆるむ、特別な場所です。

八甲田ホテル正面玄関
館内に足を踏み入れると、青森ヒバのやさしい香りがふわりと包み込み、まるで森の中にいるような気持ちになります。母と何度も泊まった思い出があるせいか、ここに来ると自然と肩の力が抜けていきます。
11月27日からは、シャトルバスの発着が青森駅近くから新青森駅東口へ変わるとのことで、新幹線利用の方にはさらに便利になりそうです。
大浴場で味わう、雪景色とお湯のぬくもり

お部屋のウエルカムお菓子のアーモンドセシとお茶セット。
持ち帰りできるお土産のお菓子も奥に。
15時前にホテルへ到着し、客室でいただいたウエルカムのお茶とお菓子でひと息ついたら、そのまま大浴場へ向かいました。

大浴場
八甲田ホテルHPより
八甲田ホテルの大浴場は広々としていて、窓からは雪が降りたばかりの風景が望めます。湯船の縁にもたれ、白く霞む森を眺めていると、自分の中の時間がゆっくりとほどけていくようで、とても好きな瞬間です。
タオル類や基礎化粧品もすべてそろっているので手ぶらで大丈夫。浴衣と館内着で移動でき、気取らず過ごせるのも嬉しいところです(夕食が洋食の場合だけ、お着替えが必要です)。
夜は、青森の恵みを映したフレンチコース
夕食は、和食と洋食のどちらかを選べるのですが、この日はフレンチをいただくことにしました。青森の食材を丁寧にとり入れた、季節感のあるコースです。
- 陸奥湾産帆立の炙りとジャガイモのブリニ アブルーガ添え
- フォアグラのムース 白カブのブラマンジェ
- 嶽きみのスープ モッツァレラのエスプーマ
- 外ヶ浜沖ヒラメのパヴェ トランペット茸ソース
- 七戸町産牛フィレ肉の低温真空調理 赤ワインソース
- 洋梨のタルトとゴルゴンゾーラのアイス
- コーヒーまたはハーブティー
どのお皿も美しく、ひと口食べるごとに秋の香りがふわっと広がりました。

陸奥湾産ホタテの炙りとじゃがいものブリニ、アブルーガ添え。
アブルーガは、ニシンの卵にイカ墨で着色したもの。キャヴィアより美味しいと思いました。

フォアグラのムース、白カブのブラマンジェ。
美しい盛り付けなので、しばらく眺めていました。

嶽きみのスープ モッツァレラのエスプーマ。
嶽きみは甘みのあるとうもろこしです。とうもろこしを津軽では『きみ』と言います。

平目のパヴェ、トランペット茸ソース、キノコ添え。

低温真空調理されて、極上に柔らかい牛フィレ肉。
赤ワインソースも香り高かったです。
とくに七戸町の牛フィレ肉は、低温でじっくり火を通した後にミディアムレアで仕上げられていて、とろけるように柔らかく、心まで満たされる味わいでした。

洋梨のタルトとゴルゴンゾーラのアイス添え。
ゴルゴンゾーラチーズの塩気がタルトの甘味と合っていました!
夫はビール、私はノンアルコールワインを。今回は一休からの予約だったので、一杯目が特典で無料になったのも少し嬉しいポイントでした。
朝食は、湯気までやさしい青森の郷土料理

長芋のすりおろし、リンゴの蜜煮など、津軽の食材を使った和朝食。
翌朝は和食をお願いしました。
席につくと、青森の郷土料理「帆立貝焼き卵味噌」の小さなコンロがすでに準備されていて、味噌の出汁が温まってくる香りだけで幸せな気分になります。

帆立貝焼き卵味噌。湯気が上がっているのを目の前で見られるのは、とても贅沢。津軽の郷土料理です。
出汁がふつふつしてきたら卵を落とし、好みの固さになったところをご飯にのせていただくと、朝から心がほどけるような美味しさでした。

朝食と洋食ディナー会場のレストラン、メドー。
ログハウス的な壁とシャンデリアも素敵です。
鮭の塩焼きや長芋のすりおろし、りんごの蜜煮など、どれもやさしい味わいで、身体の中からゆっくりと温まっていく感じがします。
メゾネットの客室と、静かなデジタルデトックス
今回のお部屋はメゾネットタイプ。
1階にソファとデスク、2階にベッドルームがある造りで、まるで小さな山小屋に滞在しているような気分です。加湿器も備えられていたので、乾燥が気になる季節でも安心でした。

メゾネットタイプの部屋。
右側の階段を上がると寝室で、ベッドとクローゼットがあります。
唯一の難点は、Wifiの電波が弱かったこと。以前は大丈夫だったので、たまたまなのでしょう。でも、たまにはネットから離れて静かに過ごすのも悪くありません。最終的にはスマホのテザリングで不便なく過ごせました。
帰り道まで続く、森の余韻
帰りのシャトルバス(12:25発)までの時間は、売店を見たり、ロビーでゆったりと過ごしたり。
暖かい季節なら、地獄沼のエメラルド色を眺めたり、「まんじゅうふかし」の温かいベンチで寝転んだりするのも楽しいのですが、今回は寒さで断念。

『まんじゅうふかし』は「95°Cの高温のお湯が流れる木の箱型のベンチの上に座ってお尻を温める東屋」と近くのトレイルマップに説明がありました。
目の前に小川が流れていて、ここに座ってぼんやりするのが好きです。
2022年10月3日撮影。
次回の楽しみにとっておきます。

ホテルの廊下にも、さりげなく棟方志功の作品が。
大浴場の帰りに巨匠の版画が見られる贅沢!!

レストラン入口近くの棟方志功の作品。
ホテル館内には棟方志功の大型作品をはじめ、青森ゆかりの絵画がいくつも飾られていて、ふと足を止めて眺めているだけで心が豊かになります。
新青森駅から1時間足らずで、こんなに静かで深呼吸のできる場所。何度訪れても、また帰ってきたくなる、そんなやさしい宿でした。
■






