私が台湾に冷たいと思っている方もおられるようだが、まったくそんなことはない。ただ、台湾の独立が彼らの切なる希望であり、それを応援することこそ台湾の人々に寄り添うことだなどと考えない方がいいと思う。
多くの日本人が、台湾の人がみんな李登輝さんのように親日家で、独立志向で、靖国問題(李登輝さんのお兄さんは日本軍人として戦死し靖国に祀られている)などで日本の保守派に理解を示していると思っているのは怖い。日本統治時代について正当に是々非々の評価はしてくれているが、手放しで絶賛しているわけではない。
ほとんどの台湾の人は華人としての誇りももっているし、中国の成功を喜んでいるし、ウクライナの人たちのように欧米に煽てられて中国軍と戦いたくなどないし、中国本土を同胞として有利な立場にあるチャンスだとも見ている。
併合はどうかといえば、少なくとも現在のところ今より良くなることは何もないから歓迎する人は極小だ。ただ、1990年に中国の一人あたりGDPは日本の70分の1、台湾の25分の1だったが、いまでは日本と台湾はほぼ同じで中国の2.5倍。しかも沿岸部ではあまり差がない。この状況相応に嫌さ加減は減少していることにも留意せざるを得ない。
また、ウクライナの人の多くがロシアに保険をかけているのと同様に、台湾の人も企業も大陸に保険をかけている。上に政策あれば下に対策ありというのが中国だ。
私は台湾の人の幸福に対して日本人は道義的責任があると思う。それはかつて日本国民だった人とその子孫としてのものだ。ただ、それが保守派的な打算に裏打ちされると、かえって台湾の人にとって迷惑なことになるわけで、アンチ北京であるべきではない。
それから、台湾有事のときに難民として何十万人も日本に来たらどうなるのか。これはよほどよく頭の体操をしておいたほうがよいテーマだ。

2025年5月1日頼清徳総統と会談した高市氏 高市首相Xより
*私は通産省で中国台湾担当課長をしていたが、台湾は局長クラスが行きにくかったので台湾の閣僚クラスとも話ができたし、その後もそれなりの交流はしている。また、沖縄に2年いたので、沖縄と台湾、沖縄と中国とのセンシティブな関係について、それなりの土地勘はある。
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