FXでデイトレードをやってはいけない理由

FX(為替証拠金取引)を使って短期の売買を繰り返すデイトレードをやっている個人投資家がいます。今年の運用成績は好調のようで運用資産は2025年10月まで6カ月連続で増加しているそうです。「資産が増加したFX口座の割合は6割と過去最多」とイキった見出しが付いています。

しかし、日本経済新聞電子版に掲載されていた金融先物取引業協会がまとめた「顧客区分管理必要額」(証拠金、評価損益、金利差収入の合計)の推移のグラフを良く見ると(いや良く見なくても)、過去の年間の資産の増加口座と減少口座の比率はほとんどの年で減少口座の方が多いことがわかります(図表も同紙から)。

これは少し考えてみれば当たり前のことです。

為替取引で155円で買って156円で売って1円の利益を出す投資家がいれば、その裏には155円で売って156円で買って1円の損失を出す投資家がいるはずです。

これは短期の為替取引とは通貨の交換に過ぎず、新しい価値が生まれない「ゼロサムゲーム」(参加者の利益の合計がゼロになる取引)だからです。

いや、もっと正確に言えば取引にかかるコスト(為替の売値と買値のスプレッド)も投資家が負担していますから、ゼロサムではなく「マイナスサムゲーム」です。

グラフを見ると資産の増加口座が減少口座を上回った年はほとんどありません。つまりFXのデイトレードは期待値がマイナスになる取引です。取引期間が長くなればなるほど大数の法則によって本来の確率に収れんしていきますから負ける可能性が高くなります。

ごく一部の例外的な投資家は為替取引によって莫大な利益をあげています。しかし、その利益は他の投資家の損失によって実現されているのです。

FXのデイトレードのデメリットはそれだけではありません。常にマーケットの動きをウォッチしておく必要があり精神的に大きな負担がかかり、ストレスのかかる状態が長期に継続することになります。

利益が出て調子が良い時はストレスはかかるものの落ち込むことは無いかもしれませんが、一旦うまくいかなくなるとメンタルダメージは大きくなります。

そもそも短期のFX取引は上がるか下がるかを当てにいっているだけです。マーケットに流動性を供給してはいるものの、株式投資のような企業の成長をサポートするといった社会的意義を見出すことも難しい取引です。損が膨らめば、何のために時間を使っているのかわからなくなります。

私はFXのデイトレードのような値動きの激しい金融資産でキャピタルゲイン(値上がり益)を狙うよりも、不動産や債券のような安定したインカムゲインを生み出す資産を保有してお金に稼いでもらう仕組みを作る方が、クオリティ・オブ・ライフを高められると思っています。

実際、デイトレードのような投機的な取引は行わず、お金がお金を生み出す仕組み作りをせっせと進めています。これなら一日中お金のことばかり考えている必要もありませんし、土日もお金が勝手に稼いでくれます。

2026年も相場の動きが大きくなりそうですが、その中でどのような投資をしていくべきか。1月26日に無料の投資セミナーを開催します。

2025年に株式やFXの短期売買で思うような成果が上げられなかった個人投資家の皆さまのリベンジ参加をお待ちしています。

Eetum/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。