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「募集を出しても人が来ない」。
最近、このような声を耳にする機会が増えています。給与や休日などの条件が、極端に悪いわけではない。それでも応募が集まらないのです。
採用難は一部の業界だけの問題ではなく、多くの企業にとって当たり前の課題になりつつあります。
募集に人が集まらなくなった理由
この現象を、人手不足や若者の価値観の変化だけで説明してしまうのは簡単です。しかし、それでは本質を見誤ってしまいます。
かつては条件を提示すれば人が集まりました。いま同じやり方が通用しないのは、採用市場の前提そのものが変わったからです。この変化は、採用だけに起きているわけではありません。
商品もまた、「つくれば売れる」時代から、「選ばれなければ売れない」時代へと移行してきました。ここで初めて、採用はマーケティングが重要だということが見えてきます。
マーケティングはSNSや広告じゃない
マーケティングというと、SNSや広告を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、本来のマーケティングの出発点はそこではありません。重要なのは、顧客・競合・自社をどう捉えるかという視点です。その起点になるのが、顧客理解です。
商品を売るときには、誰が顧客なのか、その人は何を求めているのか、どんな課題や不安を抱えているのかを考えます。最初に向き合うべきは顧客です。ここが定まらなければ、その後の戦略は成り立ちません。
ところが採用になると、この顧客理解が抜け落ちてしまいます。求職者が何を求めているのか、どんな未来を描いているのか、どんな気持ちで仕事を探しているのか。
そこを深く考えないまま、「給与」「休日」「安定」といった企業側が伝えたい条件だけを並べてしまうケースが少なくありません。
なぜ企業の言葉が響かないのか
いまの求職者は、「どんな会社か」以上に、「そこで働くことで自分がどうなれるのか」を見ています。成長したいのか、安心したいのか、地域と関わりたいのか。そうした想いや価値観を理解せずに発信しても、メッセージは届きません。
現在の採用における最大の問題は、資金の不足や手法の選択ではありません。求職者がどんな前提で悩み、どんな未来を思い描いて行動しているのかを、理解しきれていないことです。
求人の方法を少し変えれば済む話ではありません。採用をマーケティングとして捉え直すことは、変化し続ける人々のニーズを理解し続ける姿勢を持てるかどうかを企業に問いかけるものです。
採用は企業の姿勢を映し出す鏡
商品が時代とともに進化してきたように、人が働く理由や期待も変わり続けています。成長を求める人もいれば、安心を重視する人もいる。働き方や価値観が多様化するなかで、企業側だけが変わらずにいられるはずがありません。
採用とは、人を集めるための活動ではなく、「自分たちは、いま人々からどう見られているのか」「これから、どう変わろうとしているのか」を映し出す行為でもあります。採用を通じて問われているのは、テクニックではなく、企業そのものの変化への向き合い方なのです。
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